思考錯誤する話1
イメージ払拭作戦の準備は二週間かけて行った。
その間は全ての営業を休止し、改装や限定メニューの開発に力を注いだ。
内装は、マクロとナノが張り切り、壁紙から一新した。
ガネの町よりの内装だったのが、今回はブルータに寄ったものになった。
ブルータは織物産業が豊富で、お洒落な人が多い町だ。
ブルータの生地を使って半個室を作り出した。
今までは、客と客との交流を深められるよう、開放的な内装にしていたが、今回は個々のプライベートを意識したものになっている。
「思い切ったな」
「お客さんから周りの人たちが気になるとか意見があったの。今回はそれを意識してみたの」
「そうか」
そういう客もいたんだな。
ナノは客の意見を取り入れたというわけか。
「リベ、アンネさんはいつ来る?」
「そろそろだな」
今日は開発したメニューを試食してもらう日だ。
俺たちもネズミの料理を食べるが、客に近い意見も欲しいということでアンネが選ばれた。
アンネは家事を終えたら行くと言った。
「おまたせ」
「アンネ師匠! お久しぶりです」
マクロがアンネに駆け寄った。こいつ、完全にアンネに懐いているぞ。
俺はアンネをカウンター席に案内した。
カウンターの上にはアンネに食べてもらいたいメニューが並んでいる。
「あら、食べきれるかしら」
料理の数を見て、アンネは全て食べきれるか心配していた。
大丈夫だ、アンネは小柄だが大食いだ。俺が身体の何処に入っているのか不思議に思うくらい食べる。
用意したものも、口ではああいってるが、一人で食べるだろう。
「じゃあ、食べていくわね」
アンネはスプーンで料理を一口で納まるのかと思うほどの量をすくい、食べて行った。
「すごいですね……」
「びっくりなの」
アンネの食べっぷりにナノとマクロが圧倒されていた。
コースメニューをご馳走になった時は、上品に食べていたからな。
「これは……、作り甲斐がある」
ネズミだけはアンネの食べっぷりに感嘆していた。
「うん、うん……」
一皿平らげ、また一皿――。
カウンターに置かれていた料理は全てアンネの胃袋の中に納まった。
「ごちそうさまでした」
「おそまつさまです……」
完食の挨拶にネズミは深々と頭を下げた。
そして、料理の感想を聞く。
「食べたことのない料理だったんだけど、美味しかったわ。多分、他の国の料理よね」
「うむ。アンネ殿、ガネの町の味覚に合うよう、我が改良した」
「そうね……、ネズミさん。お代わりをくれるかしら」
「お代わり!? ……あい分かった」
「あ、でも本場の料理が食べたいな」
「うむ。そうなると品数が減るがいいか?」
「もちろん。これとこれをお願い」
アンネのオーダーを受け、ネズミが料理へ向かった。
常に無表情であるネズミが、目を見開いて驚いていた。
試作品を全て平らげて、お代わりを要求してくるは普通思わないよな。
「……どうおもう?」
「リニューアルとしていい案だと思うわ。異国の料理を私たちの舌に合うようにアレンジしてくれてるから人気が出ると思う」
「じゃあ、これで――」
「でもね、私は異国の料理をそのまま食べたいな」
「え?」
俺はアンネの発言に耳を疑った。
次話は明日投稿します。
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