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黒魔導士が愚痴をこぼす話

 ナッツ野郎の騒ぎから二か月が過ぎた。

 ナノが接客に復帰すると、男性客が戻って来た。

 賑わいを取り戻した『ライン』は“アリガトウ”の量も戻ってきている。

 店の経営が良い方向へ向かっていた時に、黒魔導士はやって来た。


「いらっしゃいませ、なの!」


 ナノが元気よく対応する。

 対照的に黒魔導士は深いため息をついており、元気が無かった。


「あ、クロッカスさん。お久しぶりです」

「マクロ~、お姉さんの話、聞いてよお~」


 黒魔導士もとい、クロッカスはマクロの姿を見るなり、彼に抱き着いた。

 マクロは、慣れた様子で黒魔導士を空いた席へ誘導し、そこへ彼女を座らせた。

 黒魔導士は、液体の様にテーブルに体を預ける。

 いつも陽気な黒魔導士が落ち込んでいる姿を見るのは初めてかもしれない。


「リベ、ワインとおつまみ頂戴なの」


 ナノの要求通り、赤ワインとつまみを用意する。

 初めはナノに「ワインの注ぎ方教えるの!」と言われていたが、それはもうマスターした。


「ありがとなの。ちなみに、チーズと生ハムの配置が逆なの。リベ、覚えてなの」

「……くっ」


 品物を持っていく際にナノが苦言をもらした。

 ワインの次はイラスト通りに商品を並べることか。

 新たな、課題が生まれてしまったか。でも、店長の俺はこの課題を乗り越えてみせるぞ。

 一人、決意を新たにしたところで、ネズミの調理を手伝いつつ、黒魔導士の様子を見ていた。

 黒魔導士は、マクロに愚痴をこぼしていた。

 営業終わりに、詳細をマクロに訊いてみよう。



「ああ、クロッカスさんですか」

「リベ、あの女に興味があるの! どこに!? はっ、もしかしてすらっとした脚!? リベは脚フェチなの!?」

「……姉さん、家に帰ってください。話の邪魔です」

「ごめんマクロ。じゃあね、リベ!」


 ナノは時々可笑しなことを言う。

 俺にはアンネがいるのに、なんで黒魔導士に欲情せんといかんのだ。

 まあ、すらっとした色白の脚で、ドキッとはするけどな。ただ、それだけだ。


「姉さんの言ったことは無視してください」

「ああ。それで、黒魔導士の話だが――」

「え、クロッカスさんがリベさんと冒険していた黒魔導士さんなんですか!?」

「ああ。あいつの魔法で俺の弓矢は使い物にならなくなった」

「へえ、クロッカスさん凄い魔法使いなんだ」


 マクロが黒魔導士に感嘆している。彼の言い方だと、黒魔導士はここではただの客だったようだ。

 ナッツ野郎のように、武勇伝をナノにリサイタリングしてたわけじゃないんだな。

 マクロが黒魔導士を知っているということは、あいつはここの店に来ていたんだな。


「クロッカスさんがこの店の宣伝をしてくれたおかげで、繁盛してるんですよ」

「え!? そうなのか!?」

「はい。クロッカスさんはガネの飲食店で有名な”美食家”なんですよ」


 知らないぞ、そんなこと。

 俺はマクロの話から、黒魔導士の別の顔が見えてきた。

次話は明日更新します。


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