終わりの話
営業が終わり、店の後片付けも終わった。
マクロとセンチが二階へ上がったところを見届けてから、俺はナノと向かい合った。
「話って……?」
「それはなー―」
この時のために俺は頑張った。
子育ての合間に、準備と手続きを一人で済ませた。
それは嘘だな。ちょっとネズミの力を借りた。
俺はバクバク鳴る鼓動を深呼吸で落ち着けた後、ナノに告げた。
「ナノ、結婚しよう」
「え、ええ!?」
俺の告白にナノは面食らった。
「アンネがいるのに何言ってるの!?」
「俺は本気だ」
「アンネと……、別れるの?」
「いいや、別れない」
ナノは俺の言葉に混乱していた。
ナノは結婚する、ということはアンネと離婚すると思っている。
前の俺もそう思っていた。
だが、俺はアンネとナノを幸せにする方法を見つけた。
それは―ー。
「俺はアンネもナノも幸せにしたい」
「……出来るの?」
「ああ。そのために、俺とアンネは重婚できるブルータへ引っ越す」
俺は子育ての他に、ブルータへ引っ越す準備をしていた。
『ライン』で働きながら、移動に二か月かかる異国で移住の手続きをするのは普通であれば難しい。だが、そこはネズミの”移動の秘術”を使って乗り切った。
「新居、移住の手続き、荷造りも終わって、明日、引っ越すんだ」
「そこにナノも住んでいいの?」
「部屋も用意してある。お前が受け入れてくれるなら……、一緒に住まないか」
ナノに告白した。事情も話した。
後はナノの答えを待つだけだ。
「……」
返事がなかなか帰ってこない。
ナノは涙を流していた。泣いていた。
重婚を提案する男だと嫌われたのだろうか。
「嫌ならいいんだ」
嫌われたのならそれでいい。ナノが嫌だというのなら、この話は無かったことにする。
俺は、ナノに振られたのだと思った。
ナノは俺に抱きついた。俺はそれを受け入れ、ぎゅっと抱きしめる。
「ううん、嬉しいの」
「そうなのか……」
「うん! ナノ、リベとアンネと一緒に住むの!」
「な、なら―ー」
「ナノ、リベと結婚するの!」
ナノが俺のプロポーズにこたえてくれた。
しかしプロポーズにこたえた直後、はっとした表情を浮かべた。
「で、でもパパは―ー」
「ネズミにも認めてもらっている。引っ越しが落ち着いたところで、改めて挨拶に行こう」
「うん!」
ネズミには話してある。父親が反対すれば、俺はブルータへ引っ越すことも辞めていた。
計画を秘密裏に続けるにはネズミの協力が不可欠だからな。協力が得られなければ諦めてた。
ネズミは「娘を頼む」と了承を得ている。
俺とネズミの間での話だから、新生活が落ち着いたら二人で挨拶に行こうと思っている。
「リベ」
「ん?」
「ナノ、もう我慢せずにリベに甘えていいの」
「……ああ」
俺とナノは互いに見つめ合った。
出会った時から、俺はナノが好きだったのかもしれない。
けれど、既婚者だからと自分に枷をはめていたと思う。
それも、今日で終わり。
俺はナノに顔を近づけ、唇を重ねた。
口づけが終わり、互いに顔が離れた後、俺とナノは手を繋いだ。
「家に帰ろう」
「うん!」
「明日の引っ越しだが……」
「ナノが”移動の秘術”を使うの! そうすれば楽ちんなの」
「アリガトウ。これから、よろしくな」
「うん! リベ、だーいすき」
「……俺も、愛してるよ」
互いの気持ちを告げた後、俺とナノは我が家へと帰った。
☆
その後、俺とナノはブルータで結婚した。
結婚した後も、夫婦で『ライン』の店長、給仕としてそれぞれ働いた。
そして、結婚して二年後、俺は二児の父親になった。
これで完結です。
最期まで読んでいただきありがとうございました。
次回作でまたお会いしましょう!
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