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「すごい、すごいよシノア」
「えぇ、リオラ」
「「5分55秒!」」
タイムが縮まっただけでなくゾロ目だ
「やっぱり、誰かと一緒にって楽しいし
新記録出やすいのね」
「まだ3年もあるんだから、これからもっと
記録を更新していこう」
お互い無言で握手して、解散した
あ、明日何時にギルド集合するか決めてない
そもそも一緒に登校……するな
私がする気満々だから
きっと向こうも同じはず
「ただいまぁ」
「お帰りリオラ」
「おかえりぃー!」
「お帰りなさい」
「おかえり!」
姉弟達が次々に出迎えてくれる
「あら、お帰りなさい、リオラ。」
「お母さん、今日は体調大丈夫なの?」
痩せているけれど、綺麗な母親リデアナ=エマ
倒れたあとも、少しでも体調が良いときは
内職して家族を支えてくれている
尊敬出来る、安心できる大好きな母親
「ええ、とても。学園はどうだった?楽しかった?」
「すっごく!友達、いや!親友が出来ちゃった!」
出会って1日目で何いってんだって話だよね
でも、私たち絶対親友になる。何か分かる
ゲームでは学園に平民はヒロイン1人だけだったから
貴重な存在だよね
出会えて本当に良かった
それもローザリア様のお陰か
転生者でもそうじゃなくても
善い人だということは分かった
「リオラが楽しそうで嬉しいわ。さ、今日は
皆で御馳走を作ったのよ。皆にも楽しい話を
分けてちょうだい」
「わあ、美味しそう!皆ありがとう。何から話そうかなぁ…」
美味しいご飯を食べて、なれない環境に疲れが溜まっていたのか
その日の夜は、布団に入るやいなや
すぐに眠りについた
「あ、おはようリオラ」
「おはよー!待った!?」
「全然、私も今着いた」
やっぱり、学園が始まる20分前
私たちはギルドに集まっていた
「やっぱり。来てくれると思ってた」
そう言って楽しげに微笑むシノア
自然と自分の頬も緩むのを感じる
「こっちの台詞!行こうか!」
「うん」
「朝ごはんなに食べた~」
何て優雅に会話しながら
朝の王都を横切って、6分後には学園に着いた
新記録はでなかった、ちょっと悔しい
教室に入ると昨日のように視線を感じる
2日目じゃ、まだ注目されるのか
唯一の救いは見られるだけで害が無いことかな
何て思っていたら女子が色めき出した
何だ?と思って振り返ると
例の攻略対象3人組
なるほどね
ん?何かこっちに向かってくる?
と気づいたときには目の前にいた。なぜ??
「おはよう。君たちが噂の実力で合格した平民だね
何かあったら力になろう。よろしく」
そう口を開いたのは第1王子レオナルド=アルドノア
ちょっと待ってよ
めちゃくちゃ注目されちゃったよ
恐らく1番高い身分の自分が最初に話しかけることで
他の貴族に対等な立場だと示したんだろうけどさ
そういやゲームでも、人望あるキャラだったな
シノアがいてくれて本当に良かった
一人だったら耐えられない
「お心遣い感謝申し上げます、アルドノア様」
急いで立ち上がって
入学前にユノスさんに教えてもらったカーテシーをする
シノアも続いて最上級の礼をする
完璧だ
可もなく不可もなく完璧な返しだ
ほら、3人組も満足そうに席についている
シノアと目を合わせ、満面の笑みを浮かべた
お昼休み
私達は食堂に来ていた
実はここ、全部、どんだけ食べても
無料なのだ
私は唐揚げ定食
シノアはラーメン定食を頼む
「ん~おいしぃぃ」
「ほんと、一流の人が調理してるのに
ただで食べられるなんて。家族にも食べさせてあげたい」
「私も同じこと考えてた!」
美味しいけど、家族のことを考えると
申し訳ない気持ちになってしまう
「タッパ持ってきて、空間魔法で持って帰っちゃダメかな…」
ボソッと溢すと、シノアが食いついた
「それだ」
「え?」
いくらただでも、持って帰るのはさすがに…
「校則、私ちゃんと読んだんだけど。どこにも書いてないよ
持ち帰っちゃいけないなんて」
「じゃあ、なに言われてもセーフだね!」
早速明日タッパを持ってくることを頭に叩き込んで
もうひとつ唐揚げを頬張った瞬間
食堂がざわざわしだした
「なに?」
「ヴェルハルト様と、その他大勢の美形の方々の集団」
入り口付近を見ると、ローザリア様と攻略対象達が
仲良さそうに入ってきているところだった
「見て、ローザリア様よ、今日もお綺麗だわ」
「レオナルド様、麗しいわ」
「オルガナ様、アーノルド様、ベルエダ様、ノアハーツ様も
ご一緒だわ。」
えーーっと、これは
転生者臭いな
まず、攻略対象者達がこんなに勢揃いしてるなんて
卒業パーティーでの婚約破棄の場くらいじゃ
なかったっけ
しかも全員ローザリア様と距離が近い
楽しげに会話してるし
これは100%転生者だな
あ、やばっ
ローザリア様と目があった
ここで目をそらすのも不自然?
と思って無心で見つめ返す
すると、なんということでしょう
近づいてくるではありませんか!
やめてやめてやめて
「こんにちは、ここ宜しいですか」
「はい、勿論でございます」
背中から冷や汗が一筋流れる
確かに回りを見渡すとこんなに大勢で座れそうな席は
平民だから遠巻きに見られている私たちの近く
以外には無さそうだ
ちらっとシノアを見ると
シノアも若干顔色を悪くしながら頷いていた
「リオラ=エマさんですよね」
無言で食べ終わって、席を外そうとしていたときのこと
は、話しかけられてしまったぁ
どう対応するべきか決めてないんだけど
転生者だとばらすべき?黙っとくべき?
「はい、ヴェルハルト様に私なんかの名前を
覚えて頂けてるなんて、光栄でございます」
取り敢えず無難な返事で誤魔化しとこう
「あなたは有名よ、とても頭がよく魔法もお上手だと」
「見に余るお言葉でございます」
「ところで、今私は医療について新しい
有効な治療方法やシステムについて考えているのだけど
ご相談に乗って頂けないかしら」
ひぃっ
やめて、隣のレオナルド様が私を睨んでくるから
なんで俺じゃなくこんな娘にって顔してるから
他の攻略対象たちも困惑してるから!
絶対これ、私が転生者かどうか見極めてるよね、やめて
てか普通に前世の私健康体だったから
病院とか病気についてとか全く詳しくないから
「私ごときでは、お力になれることはほとんど無いかと
思われます。申し訳ありません」
眉を下げて、本当に申し訳ないという顔を作る
ねぇレオナルド様
断ったら断ったで
なんだお前、ローザリアの誘いを断るのかって
顔して睨まないで!何なの!!
「そう、そうよね。私とは、あまり関わりたくないのね」
といって悲しそうな顔をするローザリア様
ねえ本当になんてことをするの
この場にいる攻略対象者全員にめちゃくちゃ
殺気飛ばされているんだけど
あと、関わりたくないとか一言も言ってないよ!
関わることが自分にとって良い方向に進むのなら
積極的に関わるよ!でも
今のところ悪い方向に進む気しかしないんだよね
今、ほぼほぼ逆ハーレムルートでしょ
ローザリア様の
しかもローザリア様は絶対鈍感な人
この場の殺気に気づいてないのかな
この異様なまでの好意たちに気づいてないのかな
私、鈍感な人があまり得意では無いんだよね
鈍感ゆえに面倒事を持ち込むから
「いいえ、関わりたくないのではありません
ヴェルハルト様に、頼っていただくのは
とても嬉しく光栄にございます。しかし
本当に、お力になれないのです。私は平民ですので
学園で学ぶこと以外の知識については、お恥ずかしいことに
無知でございます。本当に申し訳ありません」
「そ、そう。では、下町の様子や魔物について
お聞きしたら、お話してくださるのかしら」
「勿論でございます」
動揺を顔に出すな、ここで嫌がるそぶりを見せたら
転生者だとバレるぞ、多分
「分かったわ、今度お茶会の招待状を送るわね
お隣のご友人と共にいらっしゃって」
「はい、喜んで参加させて頂きます」
ねっ、とシノアに目線を送る
今まで傍観を決め込んで気配を消していた彼女も
私から見たら若干ひきつった笑顔でお礼をのべていた
巻き込んでごめんよ…でもありがとう