4.興奮してきたな
どうやら、笹本君は私の回答がお気に召さなかったらしい。
正解がわからない。
いや、正解はあるのだろうか。
とりあえず笹本君に聞いてみた。
「家業ってことだけど⋯⋯代々継ぐ感じの物なのか?」
「はい。ウチでは一応、嘉永二年からやってます」
いや、歴史に詳しくないから「それって西暦何年だよね!?」みたいなツッコミも覚束ないが。
「⋯⋯んじゃ君の家、先祖代々、『オッサンみたいなオバサンを、オッサンなのかオバサンなのか鑑定してる、ってこと?」
「いや、それは全然違う、と先ほど申し上げました」
何なのもう!
よくわからないから、話を変えて、違うアプローチをしてみる。
「うーん、いや、もちろん職業選択の自由ってものがあるから、退職自体はどうこう言えないんだけど⋯⋯」
「はい、部長にはご家族共々お世話になってますので、大変心苦しいのですが」
「うん、そう、そうだよ! ウチの桜子なんて君が来るのが楽しみすぎて夜しか寝れないって言ってるんだ」
「普通ですね」
「ははは、そうだな。どうだい? ウチの桜子と付き合ってみたり、なんて」
「いや、ダメでしょう?」
「ウチの桜子のどこがダメだって言うんだ! 言ってみろ!」
「いえ、未成年ですし、家族である部長の御理解が得られるとはとても思えません」
「プラトニックなら構わんだろうが!」
「部長、話が脱線してます」
「そもそもこんな話に、本線があるか!」
桜子がダメと言われて少し興奮してしまった。
落ち着け落ち着け、と自分に言い聞かせてると、笹本君が提案してきた。
「たぶん見てもらった方が早いと思います」
「見る?」
「はい。部長、今日の夜空いてますか?」