10/12
10.脂ギッシュ
今朝の桜子視点です。
パパったら、本当信じられない。
朝食はパンよりご飯派の私は、朝から大好物の塩鯖を食卓で発見し、テンションが上がっていた。
まずは何もかけずにそのままいただく。
うん、美味しい。
サラサラとした脂が舌の上で広がり、次の一口を反射的に求める。
本能に少し逆らい箸を置き、私は大根おろしに醤油をかけ、レモンを絞る。
確か、大根おろしと魚だけだと食い合わせが悪くなるのを、レモンが中和するんだよね。
パパが言ってたんだっけ。
準備完了、さあ、次の一口⋯⋯と思ったところで、パパが唐突に言った。
「皮脂の多い生涯を送って来ました。自分には、乾燥肌というものが見当つかないのです」
⋯⋯たぶん私が、最近太宰を読んでいると聞いて、そんな事を言ったのだろう。
最悪のタイミングだ。
さっきまで美味しそうに見えた塩鯖の脂が、夜仕事が終って帰ってきた時の、テカテカとしたパパの顔の脂とリンクした。
私はそれ以上塩鯖を食べる気にはなれず、『彼』にLINEを送った。




