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僕と私とあなたの話  作者: 佐藤チアキ
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私とかくれんぼ

 私はドキドキしていた。


 理由は二つある。


 一つは明日がクリスマスだからだ。小学四年生になってから友達の間で流行っているゲームがあり、私もそれが欲しくてサンタさんへの手紙を書いた。

 去年はまたも友達の間で流行っていたキャラクターの印刷がされたシールを貰い、その前の年も友達の影響でサンタさんからのプレゼントを決めた。


 普段はあまり物を両親に買ってもらえない分、私はサンタさんが大好きだった。

 去年なんかサンタさんに直接お礼を言うためベッドの中で必死に眠気と闘っていたほどだ。


 そして、私が今ドキドキしている理由の二つ目。


 それはまさに今お母さんとかくれんぼをしているからだ。専業主婦で毎日家事をしている母はたまに時間ができると私のしたい遊びに快く付き合ってくれる。


 おままごとはもちろんの事、トランプやお絵かき、最近では家の中で鬼ごっこもした。


 二人で鬼ごっこなんか友達とは絶対にやらないけどお母さんと狭い空間でやってみたら案外楽しい。

 家中を駆け回るのはまるで本物の鬼から逃げるようなスリリングを味わえ、一時期マイブームになっていた。


 そして、今のマイブームがかくれんぼという訳だ。


 お母さんに見つかれば食べられちゃうという自然とできた設定でこれも鬼ごっこと同じくスリリングが味わえる。


 今まで隠れたのは押入れの中、お風呂の湯船、冷蔵庫と壁の隙間、カーテンの中、逆にお母さんの後ろに最初からくっついてみた時だってあった。

 そんなありとあらゆる場所を隠れ尽くしたとしても私にはまだとっておきの隠れ場所がある。


 両親の寝室にある机の下に小さなダンボールがある。まだ試した事は無かったが、そのダンボールは私の体の大きさだとギリギリ入り切る事ができるはずなのだ。

 まさかそんな所に身を隠しているなんてお母さんは思うまいと今私は寝室に忍び込もうとしている。


 音が鳴らないようにゆっくりとドアを開けて、机の下のダンボール…………ない!


 思いもよらぬアクシデントだ。昨日ちゃんと下見をしにきたのにそこにはダンボールが置かれていなかった。


 それからゆっくりとドアを閉めて両肩を上げて爪先立ちで机へと近づく。


 机の陰になって見えていないだけかと辺りも綿密に探すがやはり無いようだ。

 私はこのドキドキが少しずつ鳴り止んでいくのを感じた。


 ダンボールに隠れるのを楽しみにしていた分ショックだった。


 すると、一回目のお母さんの合図が遠くから微かに聞こえてきた。


「も〜ういいか〜い」


 無論、良いはずがない。


「ま〜だだよ〜」


 あたふたと部屋中を見回してから良い隠れ場所を見つける。


 壁に取り付けてあるクローゼットの奥だ。


 ダンボールには劣るが中々の強力な隠れ場所だと私はクローゼットに走って駆け寄る。


 だが、その考えも甘かったようだ。


 クローゼットをゆっくり開けると、その中はとても入れる様子ではなかった。

 手前には収納ケースが積まれており、それを乗り越えれるような物も置いていなかった。


 こりゃだめだとまたゆっくりとクローゼットを閉める。


 そして、後ろを振り向くとそこにはベッドがあった。


 前に一度このベッドの中に隠れた事はあったがベッドの下に隠れた事はない。


 下に隠れてみようかと床スレスレまで垂れている掛け布団を捲り上げる。


 すると、そこにはあの探し求めていたダンボールが置いてあるではないか。


 私はまたも胸が激しく鼓動し出し、ここに隠れるしかないと直感的に思った。


 そこでもう一つお母さんの声がする。


「も〜ういいか〜い」


「も〜ういいよ〜」


 そう言いながら私はダンボールのフタを開けて中を覗き込んだ。


 そこには何かの書類と見覚えのある手紙がある。



『サンタさんへ……』



 という出だしで書かれた手紙は間違いなく私が今までサンタさんに書いた数々の手紙だった。


 でも、何でサンタさんへの手紙がこんな所に……。


 私は全力で頭を捻る。




 なんでだろ。




 なんでだろ。




 なんでだろ。




 なんでだろ。




 なんでだろ。




 なんでだろ。




 なんでだろ。




 なんでだろ。




「見〜つけた」




 背後から声が聞こえた。



 それ以来、私の家にサンタさんは来なくなった。

最後までお読みいただきありがとうございました。


残酷な事実って生きていれば色々と直面しますよね……。自分の好きな人が実は他の人と付き合っていたとか、実は自分はみんなに嫌われていたとか。


今回はそんな誰しもが知る事になる残酷な事実というものを面白おかしく描いてみました!


実は実話だったりして。


それでは。佐藤チアキでした。

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