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エンゲルローゼ嬢
あのね!ムートとお話ししたいこと、たくさんあるんだよ。
でもいつも皆のことを守ってて遊べないから少し寂しいかな。
澄んだライトグリーンの御目は、黄金の繊細な睫毛に隠れてしまった。
「身に余るお言葉でございます。」
(ローゼ嬢‥遊びたいお年頃であろうに)
「私でございましたらお呼び頂いたらすぐ駆けつけます故、どうか御心を曇らせないで下さいませ。」
ローゼ嬢のお話し相手も大事なお世話の内だ。
つい時が経つのを忘れてしまう。誠に勝手ではあるが、この瞬間が何よも心安らぐ至福だと感じる。
国を守ることも、忠義を忘れたことも唯の一度たりとも無いが、何よりもこの御方の側に仕えたいと思ってしまう。
お話が弾み、嬢の興味深い空想やまだ見ぬ異境・魔物の話を聴きながら
(いつか私の世界を見てみたい!)
そう幼子のような純粋無垢な衝動がほとばしった。
「次の任務があります故、私はこの辺りで失礼致します。」
右中指を掬い、鈍い光沢を持つワインレッドのダイヤに恭しく口付けをした。
ほんの一瞬、指先が赤らびたような気がした。