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エンゲルローゼ嬢
この時間帯ならお部屋に居られるだろう。
朝方出向いたときには半分程スクランブルエッグを残されていた。
8歳程度のお嬢様にはあれでも量が多かったのだろう。
8歳程度というのは正確な年齢を聞かされていない為だ。
国王直々の任務だ。明かせないことも多く詮索するのは野暮というものだろう。
元から華奢なのにこれ以上食が細くなったら健康を害される。
当人はいたって健康そのものだが、万が一の事があったらと城中の者は気が気でない。
姿勢を正し、厳重でシンプルなホワイトの扉をノックする。
「エンゲル・ローゼ嬢、エーデル騎士団小隊長ムート・エーデルにございます。」
「ムート!」
扉が開き、勢いよく飛び出してきた。
その衝撃で艶やかなブロンドヘアが幾本か、ハラハラと絨毯に舞い降りた。
懐かれるのは嬉しく、優越感に浸ってしまいそうになるが、任務であることを肝に銘じる。
部屋を見渡すときちんと整頓されており、思いっきり褒めて差上げたくなったが、そんな幼稚な事をと口を尖らせてしまわれるので、グッと堪えた。