始まりの草原
ここはどこだろう…。
僕が今思い出せることは、今僕がそう考えたソレだけだった。
「えっ、…え?」
目の前に広がるのは、草。
とにかく草。
見渡す限り草。
草しかない。
いわゆる大草原。
風が草を撫でる音だけが耳に入る。
なぜ僕はこんなところに?
「えっとー…」
周りを確認するが人ひとりいない。
太陽が少しだけ傾いている。
昼前?昼過ぎ?方角がわからないから判断しかねる。
なぜ僕はこんなところに一人でいるのだろうか。
もう一度自分に問いかけてみるが何も思い出せない。
…本当に思い出せない。
次に自分自身を確認してみた。
少しボロいズボンと靴。
上の服は着ていない。
俯くと視界に髪の毛が入ってきた。
今気づいたが鎖骨くらいまで髪が伸びている。
色はグレーに近いが、もう少し汚い色をしている。
僕の髪の毛はこんな色をしているのか。
自分自身について何も思い出せない。
出身も。年齢も。そして名前も。
ふと右手を見ると短剣を持っていた。
本当に今短剣を持っていることに気づいた。
腰元をみると剣帯をしていたのでそこに収める。
どうやら持ち物はこの短剣だけのようだ。
なんの飾り気もない、感覚的に少し重いと感じる短剣。
なんの情報も得られなかった。
…とりあえずこの草しかない空間から出よう。
そう考え、僕は太陽が傾いている方に向かって歩き始めた。