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美女先輩と神隠し  作者: ロジカル和菓子
2章 ベートーベン
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一番怖いもの①

 オカルト研究部は機械部とは逆の端の方にポツンと佇んでいた。機械部とは違い、おどろおどろしい字体のオカ研という文字が書かれた紙がドアの上に貼られていた。


「ここか。ほなら入るで」と竜五は早速僕たちが心構えをする前にさっさとノックをして中に入り出した。


 中は予想通り、よく分からないオカルティックなUMA情報誌や不気味な置物などでごった返していた。まさにオカルト研究部のイメージ通りだ。


 中にいた部員は一人で、ポツンと真ん中の机に一人で座っていた。その机の周りには魔法陣が描かれていたのだが。それは無視して竜五は早速その女の子に話しかけた。


「こんにちわ~。初めまして。わいは雉田竜五って言います。よろしゅう!」


 その竜五の言葉に女の子は全く反応を示さなかった。


「聞こえてないんか~。よろしゅう~」


 竜五は女の子の目の前まで行ってそう話しかけるが相変わらず返事は帰ってこない。それを見かねた里実が竜五の代わりに話を聞きに行った。


「あの。私、藤原里実って言います。2年の。今、私たち、学校の七不思議について調べてるんだけど、何か知らないかな?」


 里実が七不思議という言葉を発して初めてその女の子はピクリと反応した。


「あなたたち。哀を探してくれるの?」


 僕たちはその言葉の意味がわからずに一瞬の間が空いた。


「哀。どこへ行ったの。連絡一つよこさないで。オカルト研究部は私たち二人しかいないのに」


 その女の子はそう叫ぶと呻きながら頭を抱えて机に頭を突っ伏した。


 僕たちはその壮絶な様子に口を開けたままになってしまった。


「哀っていうのは、もう一人の部員さん?三間坂さんっていう子のことなの?」


 里実が優しく話しかけると、その女の子はバッと顔を上げた。


「あなた、哀を知っているの?そうなのね?私は西木戸真依。オカルト研究部の部長よ」


 ようやくまともに返事をしたのだが、顔があまりにも里実に近かったので、里実は驚いて大きく身をのけぞらせた。


「そ、そう。それで、七不思議について知ってるの?」

 里実が聞くと、西木戸は今度は静かに返す。


「あなたたちが探しているのは、七不思議の謎?それとも神隠しの謎?」


 それは核心をついている言葉だった。


「神隠しかな。僕たちは行方不明になってる坂巻莉音っていう女の子を探してる」


 僕は話に割って入った。これは僕がした方がいい話に思えたからだ。


「あなたは?」


「僕は鷺森悠」


「ふぅん。まぁいいわ。私ももう一人の部員、三間坂哀を探してるの。ちょうどよかったわ。私が調べたことを教えてあげる」


 西木戸はそういうと怪しげなツボの中から一枚のノートを取り出した。


「これは七不思議に関して調べた情報。①トイレの雅子さん。②イケニエ伝説。③ベートベンの目。④動く人体模型。⑤ひとりでに減る食料。⑥望みを叶える鏡」


「7つ目は?」


 僕がそうたずねると西木戸さんは僕を静かに見返した。


「学校に潜む幽霊。ただあまりにも情報が少ないから7つ目に関しては気にしない方がいいわよ」


「そっか。……それで?三間坂さんはどれを調べている途中にいなくなったの?」


 僕はどれかが神隠しに関係するものだと思ってそう聞いたのだが、帰ってきたのは意外な答えだった。


「③ベートーベンの目。よ」


「え?」


 僕はびっくりして目を見開いた。


「何をそんなに驚いているの?何かおかしなことがあって?」


「いや、実は。僕たち、ベートーベンの目についてはもう解き明かしたんだよ」


「なんですってぇ!?」


 西木戸さんはらしくない大きな声をあげた。


「トイレの雅子さんについても」


「はぁ!?」


 西木戸さんは再び大声をあげた。


「だから、他の七不思議に問題があるのかと思っていたんだけど・・・」


「そんな……じゃあ、哀は一体どうして神隠しに・・・?」


「わからない。でも、とりあえず他の七不思議についても教えてくれる?何かヒントになるかもしれない」


「わ、わかったわ」


 西木戸さんはそう言うと一旦落ち着いてから、僕たちがトイレの雅子さんとベートーベンの目についての話をする代わりに、トイレの雅子さんとベートーベンの目以外の説明をしてくれた。


「②イケニエ伝説。

 釘塚高校が新校舎になる前、今から10年ほど前まであったとされる制度で、2年4組に降りかかる災いを避けるためには廃神社への礼拝をしなければいけないというものがあった。2年4組の生徒は毎月4日に廃神社に一番大切なものを備えにいき、次の月の3日にそれを取りに行く、といったものだったらしい。

 その礼拝自体は大したことのないように思えるが、それを怠ると毎月一人、2年4組の生徒が死ぬという噂があった。実際に20年前に女生徒が礼拝を怠ったせいで当時の2年4組の生徒は多数の死者が出た・・・らしい。

 校舎が新しくなってからはその制度は打ち止めになっていたらしいのだが、最近物好きの生徒によって復活させられた--らしい」


「その制度って今もあるってこと?」


 僕は自分が2年4組だったので気になって尋ねた。


「らしいわよ」


 僕は里実と竜五を見た。竜五は知らんでといった顔をしていたが、里実はハッとした顔をした。


「そういえば、なんか最初に誰かが言ってたよね。係の人が近くの神社に礼拝しに行きますって」


「係り?」


「そう。今聞いたのとはちょっと違うみたいだけど、毎月違う人が行くんじゃなくて、係りの人が行くことになってたの」


「そうなのか?」


 僕は係り決めの際全然話を聞いていなかったので、初耳だった。竜五の方を見ても同様のようだった。


「で?その係りってのは誰だったんだよ」


 僕が尋ねると、里実は言いにくそうな顔をしたが、少し躊躇してから言った。


「莉音ちゃんだよ」


「そうなのか。じゃあ今は誰も礼拝に行ってないのか」


「ま、そこは今は問題じゃないでしょうけどね」


 僕たちはその問題については軽く考えていたし、目下最優先の時効は神隠しの件だった。


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