007、愛の言葉
いつからだろう。
言葉が伝わらなくなったのは。
いつからだろう。
姿を見てもらえなくなったのは。
はじめは、確かに共にあったのだ。どこにでもいて、どこにもいないこちらは、たしかに見づらいものだった。それでも、ファレクも、ミーシャも、トゥルナンドも、いつも話しかけてくれた。こちらの言葉に答えてくれていたのだ。
だから力を与えた。小規模では事象を改編し、大規模では概念すら変革せしめる。
わかってくれたから。
そのうち彼らには、見えなくなってしまった。
そばにいるのに、気付いてもらえなくなってしまった。あんなに耳元で叫んだのに、わからなくなってしまったのだ。
ファレクの子の、その孫の、そのひ孫は、見えることはなかった。
ミーシャの子の、その孫の、そのひ孫は、聞こえることはなかった。
トゥルナンドの子の、その孫の、そのひ孫は、ちがうものを見はじめた。
言葉がとどかなくても、力を貸した。君たちの言葉は聞こえていたから。
時には憎みあい、戦い合う。潰し合い、破滅させ合う。それでも力を貸した。
だって、君たちの言葉は聞こえていたから。
君たちの言葉に、意味がないことなど知っている。
君たちの言葉に、心がないことも知っている。
でも、力を貸そう。
君たちを愛しているから。
あれから ながいあいだ きみたちを みてきた。
かしてきた ちからも あと どれほどか。
だけど ことばが きこえる かぎり ちからを かそう。
ああ、きこえる。
世界にむけた 呪文詠唱が。




