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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

VR(?)短編集

妹メイドは戦いたい!

作者: 天爛

 ルスト地方にある古ぼけたとある洋館に1人の男と2人の少女がいました。

 と言ってもそのうち1人はボクのことですけど。


「お姉ちゃん退いて! そいつ倒せない!!」


 武器を手にした小さな少女(ボク)は叫びますが、それを邪魔する形で長身の少女(おねえちゃん)彼女(ボク)と男の間を遮ります。


「ダメっ! いくらあなたの頼みでも退けない!!」

「お願いっ! 早くしないとあいつ死んじゃう!!」

「大丈夫。彼を信じて彼に任せたら大丈夫だから」


 そうしている間も、お姉ちゃんの背後では1人の男がとある化け物と死闘を繰り広げています。

 いえ、死闘というのは言い過ぎですね。パーティで挑むなら適正レベルを優に越え、ソロでも油断さえしなければ十分に勝てる。そんなレベルの戦いなのですから。


「でも今がチャンスなんだよ!? 積年の恨みを晴らすチャンス。お姉ちゃんを汚した罪、絶対に許せない!」

「その言葉は嬉しいわ。でもあんな奴のためにあなたの手を汚させるわけにいかないの」

「ううん。あいつを倒せるなら、どんなに汚れたってぜんぜん気にならないもん」

「いい加減にしなさい! あなたが気にしなくでも私たちが気になるの! だから、だからお願いだから自分から汚れようとしないで」

「でもっ」


 そうボクが言い淀んだその時に、ボクが戦いを望んだ相手は光となって消えてしまいました。


「むぅ。間に合わなかった……」

「よかった。間に合った……」


 全く逆の意味の言葉を二つの口が紡ぎ出します。

 言うまでもなく、前者がボクで後者がお姉ちゃんです。


「待たせたな。……ん? どうした妹ちゃん。随分と機嫌が悪そうだが」


 声を掛けて来たのは第三の人物。ボクの獲物を横取りした張本人である(バカ)です。


「むぅ。誰のせいだと思ってやがるんですか。このバカは」

「おいおい。バカはひどくないか?」

「次はボクが倒す番って約束だったのにそれを破るバカはバカで充分です」

「ぐぬ」

「んで、なんで約束を破ったんですか。理由如何によってはお仕置きを軽くして上げます」

「お仕置き自体はあるのね……」


 もちろんお姉ちゃんのその呟きも聞き逃すつもりは毛頭ないですよ。


「言っとくけど、お姉ちゃんも同罪だからね?」

「うぐ」


 お姉ちゃんが邪魔しなかったら、ボクが戦えてたんがから当然ですよね。


「でなんで?」

「その、なんていうか、あいつとだけは闘わせたらダメだと思ったというか」

「ダメって、奴はボクの天て……というと語弊がありますね。……宿敵。そう、奴はボクが倒すべき運命なんです」

「運命って……」


 ボクの宣言に絶句するバカ。


「誰もそんな運命望んでいないよ……」


 外野(お姉ちゃん)がなんか言った気もしますが、そんなのは無視してぽいです。

 て言うか、ボク達の種族的に十二分にあり得る設定ですよね?

 つまり、お姉ちゃんのロールは甘い! です。


「だ、だとしてもだ。せめてそれで戦うのだけはやめとけ」

「えぇ、なんでですか。今までいろんな獲物を捌いてきたボクの相棒ですよ? もしかしてナメてます?」


 もしそうだとしたら絶対に許せません。


「いや、ナメてるとかじゃなく。妹ちゃんがいう「捌く」って言うのは料理的な意味だろ。俺はやつ《黒光りするもの(ブラックフィアー)》を切った包丁で作った料理は食いたくないって言っているんだ」

「なら食べなければいいじゃないですか」

「えっ」


 そもそもこれはゲームですよ?

 いくら見た目がゴキに似ているからって、リアルのようにバイキンだらけって事はないでしょうし、仮にそんなモンスターが高級食材をドロップするのは変ですよね。

 それと【料理】の前にはいつも【浄化】や【お手入れ】で清潔にしてますよ? だから食中毒なんてあり得ません。


「とはいえ、心情的には分かるです。……刃物(包丁)じゃなくて鈍器(フライバン)ならOKですよね?」

「えと、できれば調理器具は勘弁してくれ」


 むぅ。わがままですねぇ。


「じゃあ長物(モップ)で」

「それなら、まだマシだけど。本当に普通のスキル、剣とか魔法とか持ってないのか?」


 当然です。


「ボクは家事妖精(キキーモラ)なメイドさんですよ? 戦闘スキルなんて邪道です」

「邪道って……」


 ちらりとお姉ちゃんに目線をやるバカ。当然のようにお姉ちゃんの腰元には立派な刀が下げられてます。


「ごめん、邪道で……」


 ほら、お姉ちゃんが落ち込んじゃったじゃないですか。


「いつも言っているけどお姉ちゃんは気にしなくてもいいよ? 帯刀メイドってすっごい格好いいもん。ホント憧れちゃうなぁ」

「ホント?」

「もちろん!」


 はっきりとした肯定を。ここは言いきるべき所です。


「そっか、憧れるかぁ。えへへ」


 よし。パーフェクトコミュニケーションです。


「じゃあ、妹ちゃんも刀スキルを……」

「分かってない! バカは分かってないです!」


 バカがバカなことを言い出しそうになったから思わず声を上げてしまいましたが、うん、大丈夫。お姉ちゃんは絶賛トリップ中で聞こえてません。


「戦闘が苦手な妹が戦闘が得意な姉に憧れてるシチュエーションがいいんです。萌えるんです。スキル取れば確かに戦えます。でもそれじゃあ萌えがない! 戦えないのに闘おうとする健気さが良いんです!」

「へ……。う、うすうす思ってたけど妹ちゃんってもしかして変態?」

「変態じゃありません。変人です」


 変態なんかと一緒にしないでほしいですね。ぷんぷん。


「と言うわけで、お姉ちゃん。ボクは今のままのお姉ちゃんが大好き。だからこれからもボクに格好いいところいっぱい見せてね」


 お姉ちゃんの前に立ち上目遣いで見上げると、お姉ちゃんの首がこくこくと上下に振られます。

 うん。チョロい。


 そしてちょうどその矢先、ボクの背後で敵がリポップしました。

 よし、次こそはボクの番。そう思ったその時には既にそいつは死んでいて……


「イモートっ! 見てて、お姉ちゃん格好いいところいっぱい見せるから♪」


 まあ、そう言うわけで。

 そこからしぱらくは敵がリポップする度に瞬殺され、ずうっとお姉ちゃんのターンでした。


「ボ、ボクの出番が……」

「まあ、自業自得だな」


 ですよねー。

 まぁ、こういう子供っぽいお姉ちゃんの事も好きだから良いんですけどね?


「で、お仕置きですけど。ボクの作る《黒光りするもの(ブラックフィアー)》フルコースと普通の食材でお姉ちゃんが作った料理どっちがいいですか?」


 そう言われてバカはボクとお姉ちゃんを交互に見比べて。


「……妹ちゃんの手料理で」


◆登場人物紹介

イモート 種族:キキーモラ(♀)

 妹ちゃん=主人公。戦闘スキルなしで戦いに挑まんとする無謀なメイド少女。

 なお、シュレティンガーの中身。つまりリアルでの性別は不詳。

 ボクっ娘なのか男の娘なのかはご想像にお任せで。


 主な二つ名:"妹メイド"、"妹ちゃん"、"守りたいこの妹"、"無謀少女"

 主なスキル:家事全般(=料理、浄化、お手入れ、生活魔法)、支援魔法


アネット 種族:キキーモラ(♀)

 お姉ちゃん。武闘派家事壊滅メイド。

 実はリアルのイモートとは赤の他人。かも知れない(少なくとも中身を知らない)

 今日も押しかけ妹メイドに振り回される日々。というかすでに篭絡されておりシスコン(過保護)が暴走することがしばしば


 主な二つ名:"姉メイド"、"姉さん"、"帯刀メイド"、"ご主人様は死ぬ"

 主なスキル:刀、家事全犯(=殺人料理、不浄化、劣化手入れ、生活魔法)


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