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第91話

 こにゃにゃちわ。

 んでは、どうじょ (/・ω・)/




 「おお、おお、あの若僧、中々じゃねえか」


 ガダルハーンが言っているのはアインバースト子爵を見事降したキルトのことであった。

 何処か他人事のような物言いで、しかも、カゲゾウと剣を結び合っているとは思えないほどの落ち着きと余裕であった。


 「しかし、まぁ、技だけでよくここまで凌げるもんだな」


 それもまた当然の態度だったのかもしれない。

 ガダルハーンにはそれらしい傷もなく、疲労した様子も見受けられない。

 一方、カゲゾウの息は上がっていた。と言っても、肩で息をするほどではない。

 それでも、この二者のどちらが優勢なのかは、それなりの目利きであればすぐに分かるほどには明瞭なものであった。


 「・・・・・・」


 尚もカゲゾウは無言で役目を果たしていた。

 敵国の将軍。そして恐らく、敵国最強の存在。

 そんな脅威を前に怯えることなく、粛々と相対する。


 「チッ、お喋りは嫌いってか?そんなんじゃ、女が寄って来ねえだろ?」


 露骨な挑発だが、当然カゲゾウはそんなものに乗ることはない。

 しかし、ガダルハーンもそんなことは分かり切っていた。

 では、何故そのような言葉を吐くのか。

 その目的は揺さぶりなどではなく、確かめるため。


 「テメェ、時間稼ぎ狙ってんのか」


 ガダルハーンはそれを断言した。

 激突当初は、互いが互いの隙を狙っての、厳しいものだった。

 しかし、現在のカゲゾウはガダルハーンの鋭く重い攻撃を往なすことに重きを置いている。

 この変化は百戦錬磨の男からすれば、容易に窺い知れた。


 「だったらどうする」


 これに対する男は一言だけ返した。

 その声には焦りや恐れは一切なく、ただ淡々としていた。


 「そんなの決まってんだろうが」


 ガダルハーンの声が大きくなる。


 「お前のその余裕を奪うまでのことだ!」


 その時カゲゾウの眼はガダルハーンに起こった変化に直面していた。

 その変化は僅かなものだった。

 体の周りを薄い靄が、それも赤黒く、まるで血のような色をしたそれが、ガダルハーンの体表をまるで締め付ける鎖のように蠢いているのを。

 そして、その瞬間より、敵の瞳が何かに歪んだことも。


 カゲゾウは瞬時に守り、それもカウンターなど一切考えないものに構えを取った。

 その選択は正しかった。


 バキィィン!

 

 「クッ!」


 何かが砕けるような音が鳴り、次いで小さなうめき声がする。

 膝をついたのはカゲゾウであった。


 「いやはや、お前は大した奴だよ。ああ、これは世辞でも嫌みでも何でもないからな?あれを受けきった奴は初めてだ。まぁ、タダでとは流石に行かなかったみたいだが」


 カゲゾウの手から零れ落ちた双剣は無慈悲に砕け、彼の胸には一文字の切り傷が確りと刻まれていた。

 それは宛ら呪印のようでもあった。


 「本当に惜しいな。お前、俺の下につけ。そうするならお前の今の主を今回は見逃そう。何なら、お前と一緒に引き取っても良いぞ」


 ここで、地位や金や女をふらつかせない辺りにガダルハーンのカゲゾウへの理解、そして確かな賞賛が垣間見えた。

 悔しいが、カゲゾウはこの強き男に確かな魅力を感じた。

 しかし、


 「敵にそこまで言われるとは。そんな言葉を貰ったのは、これで二回目(・・・)だ」


 寡黙だった男が自分から言葉を口にした。


 「ん?」


 「私はその一回の言葉に救われたのだ。暗く、冷たかったものが明るく、温かい輝きを、意味を持ったのだ。だから」


 その言葉には不思議と力があった。

 傷付き、血を流しながらも戦意は全く衰えていない。


 「私は折れない」


 カゲゾウは立ち上がる。

 必殺の一撃を受けながらも、その心までは断ち切られることはなかった。

 それを見たガダルハーンは笑みを深める。


 「あのチンチクリンにそこまで尽くすか・・・惜しいが仕方ない」


 ガダルハーンは溜息をつく。

 この目の前の男が来れば、恐らく腹心のリストと共に左右の腕となって自身を支えられるだろうに、と後ろ髪を引かれる思いがあった。

 しかし、主人と認めない馬は一利もないなく、この男の場合は放っておくとその技能から見ても厄介だ。

 となれば、取られる選択肢は一つしかない。


 「確実に息の根を止める」


 実に正しい判断だった。

 手負いの相手に油断する様子はない。

 そして、今にも斬りかかろうと、命を断とうとした瞬間だった。


 

 「土束厳緊(どそくげんきん)!」


 ガダルハーンの剣が硬い何かに阻まれる。

 それは人の肉の感触ではなかった。

 が、それでは彼の剣は受けきれなかった。

 切り上げた土塊が宙に舞う。

 しかし、守るべきものは何とか助けられた。


 「おっかないね、あいつ。いくら急ごしらえっつっても、結構な強度で作ったのに」


 その声はまだ若く、おおよそ戦場では似つかわしくないものだった。


 「自分から戻って来るとは、お前とんでもねぇ馬鹿野郎だな」


 ガダルハーンはその声の主を罵る。

 が、相変わらずその顔には笑みが浮かんでいる。


 「バカとは失礼ですね、貴方の様な脳筋さんを馬鹿と言うのですよ?」


 水色の髪は風に揺れていた。


 「カゲゾウ、無理させちゃったね。最初から全力だったらこんな傷負わなかったのに」


 その目は悲し気で少し気落ちしているようだった。

 カゲゾウはそんな若き主を励ます。


 「いえ、これは私の未熟さ故のもの、アシュラード様に何の落ち度もありません」


 親が子を諭すようなそんな、優しい空気が一瞬漂い掛ける。


 「そうだぞ、例えソイツがハナから全力だろうと俺には勝てなかっただろうよ」


 それを一気に霧散させるのはガダルハーンの声であった。

 自信に満ちながらも、そこに慢心や驕りなどは一切見られない。

 青年がそれに答えた。


 「ふーん、なら俺が貴方に勝てれば、俺より強いカゲゾウは貴方より強いと言うことになるのですね?」


 「は?」


 その顔は意表を突かれたようで。大きく呆れ返っていた。


 「今から、アンタをぶっ飛ばす、って言ってんだよ」


 その青年の眼は何時になく鋭いものであった。

 その口調も地に近いものである。


 「寝言は嫌いだ。殺すぞ、ガキ」


 ガダルハーンから一気に殺意が湧き出始める。

 目の前の青年は明らかに自分より弱い。

 そんな奴からの一丁前な言葉にガダルハーンは一つ脅しを掛けてみることにした。


 「出来るもんならやってみろ、今は若者の時代だ、ばっきゃろー」


 若者は屈さなかった。

 その返答は要領を得ないものだったが、それでも、この青年は自分と同じ土俵に立てることだけは理解した。


 「良いだろう、それならば、望み通り斬ってやろう」


 ここに過去の遺物と未来の光が激突する。




 □■□■




 (啖呵切ったはいいものの、どうしよっかなぁ)


 明らかに目の前の敵さんは尋常じゃないし、出たとこ勝負して勝てそうな相手ではないっぽい。

 んでも、やるしかない状況なので頑張りますか。


 「練気法!」


 身体強化は怠りません。

 相手も身体強化使えるから意味ないかもしれないけど。

 剣は持ちません。まだ拳の方が上手く扱えますからね。

 前世で妄想格闘術三段を習得していたからでしょうかね?


 「ほう、舐めている訳じゃなさそうだな。そっち(・・・)が行けるか」


 何やら敵さんはわっちに興味深げだ。

 私はノーマルですので、すみません。


 「なら、一興だ。付き合ってやろう」


 

 敵さんは剣を仕舞ったのです。

 これは一見舐めプのようにも見えます。


 だがしかし、これは孔明の罠なのです。

 彼の体術スキルレベルは私と同じ5なのですが、顔とか筋肉とか手足の長さとかもう色んな意味で負けまくっているのが現実です。

 加えて、武術スキルなるものを彼は有しています。

 これは以前ライゼンに聞いた事があります。

 体術スキルと武器スキルを鍛え上げると稀に発現する言わば進化系スキルなんだそうです。


 つまり、この人、ガチです。


 「いえ、結構です」


 「遠慮するな、付き合ってやるって言ってんだ」


 いいえ、大いに遠慮します。

 

 「精々楽しませろよ!」


 ああ、もう!

 話聞いてよ、これだから脳筋は!

 魔法少年(物理)は物理の王にこうして挑むのでありました。


 誰か助けに来てくれないかなぁ



 

 筆が進みませぬ、申し訳ない。

 また、気晴らしに短編書くかもです。



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