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第83話

ちょいとくどいかもしれませぬがよろしゅう頼みます(=゜ω゜)ノ

 それでは、どうじょ(/・ω・)/



 「どう?」


 「血の匂いが風に乗って漂って来てる。剣戟も微かに聞こえて来た。あと少し行きゃかち合う」


 キルトの聴覚、嗅覚は鋭い。

 戦場からは結構離れているとは思うんだけども、やはり獣人の身体能力は人とは比にならんですな。


 「カゲゾウ、工程はどう?」


 「今の所、問題は出ておりません」


 順調にこっそりひっそり来ているらしい。

 卑怯だと思うかね、諸君?

 私はそうは思はない。

 だって死にたくはないからね。


 我々アドバンス男爵軍は静かにそして着実に進軍していた。

 狙うは敵の横っ腹を穿って、すぐさま引き下がること、これ即ち嫌がらせである。


 「マックス」


 「ええ、兵にも領民にもバッチリ伝えてまさぁ、一当てしたらすぐさま流れに乗って行けって」


 うん、ヒット&アウェイは足を動かすことが大事だ。

 僕らの場合敵を攪乱できれば十分な訳だから、足を動かし続けることを周知させておかねばならない。


 「敵を害そうとするんじゃなく、敵の動きを阻み、士気を下げるように。諄いようだけどこれを徹底させてくれ」


 「了解でさぁ」


 世間知らずの坊ちゃんに出来るのは、ここまでか。

 あとは、部下たちに任せるっきゃないか~

 あ~、この感覚気持ち悪いな~

 スッキリしない、この感じ。


 「それにしても、アシュラード様は疲れを見せませんね」


 ふと、ブランドさんが話し掛けて来た。

 

 「そう?」


 「はい、とても良いことかと」


 そりゃあ、若者ですし。

 領民のおっちゃん達よりは体力あるとこ見せないとねぇ、面子もありますし。


 「辛い状況、苦しい状況、絶望的な状況、それぞれ差は有れど、どんな時でも御旗がしっかりと立っていたならば、皆気を張れるものです」


 そういうものなのだろうか。

 けど、どうしようもない状況で縋れるものがあるというのは大きいものなのかもしれない。

 私自身はそのような状況に出会った事がないので分からないが、もし、彼らがどうしようもなくなった時、私が皆に見上げられるような大きな旗であれたら良いなと少し思った。


 「ふふっ、そこまで重く受け止めなくても良いのです。ただ、どうしようもなく厳しい状況で今、自分が述べたことを思い出してさえいただければそれで構いません」


 「が、がんばります」


 まぁ、死ぬ気でやれば人間、何とかなるっしょ!

 きっと、多分、恐らく。


 

 っと、ぽつぽつだけど喧騒が聞こえてきたな。

 そろそろ目的地かな?


 「では、私は戻ります」


 軽く一礼して領民達の方へ戻って行くブラントさん。

 イケメンが過ぎるとどうでもよくなる不思議。

 鼻につかないというのは彼が歳を経て得たものから来るのではないかと思ってしまう。

 ならば、前世40年生きて来て魅力の欠片もない拙者は終わってないかと思わなくもない。


 「おい、主行くのか?」


 キルト君や戦闘民族の血でも流れているのかい?

 目が爛々としてて怖いよ?


 「もうちょっと、進もうか」


 そうやって進んで行くと次第に喧騒も大きくなってきた。

 場所も、


 「ビンゴ!」


 丁度味方と敵が争っているのが見える。

 無論、向こう方はこちらに気付いていない。


 「びんご?」


 「大当たりってこと、よし、ここから一気に行くからね、皆準備して!」


 各隊の隊長がしっかりとそれぞれの隊に確認を行う。

 うむ、優秀な部下って素晴らしい。


 「坊ちゃん」

 「アシュラード様」


 マックスとブランドさん、それぞれ兵士と領民のまとめ役が準備完了を伝えてくれる。

 一先ず、深呼吸ぅ~。吸ってぇぇ~吐いてぇぇぇぇ~

 うし、行くか。



 「では、総員目標は敵軍の横っ腹!感覚としてはどついて逃げる感じで頼む!」


 其処彼処から笑いが起こる。

 皆、落ち着いてるなと思うと共に頼もしい限りだ。

 

 「そいじゃあ、行くぞ!総員駆けよ!」


 こっちも死にたくない。

 だから、悪いけどそちらに痛い目見てもらうよ、リッデルさん。




 □■□■




 シルフェウス左軍とリッデル右軍の戦いは中々趨勢が読めないでいた。

 ジェイン・アインバースト子爵の活躍により、シルフェウス左軍が一気に優勢になるかと思いきや、リッデル右軍もなんとか持ち堪えた。

 これはリッデル王国所属ガダルハーン将軍からの「もたせろ」という単純で明快な指示のおかげであったと言えよう。

 これにより現場の将たちはなんとか折れることなく、傾きかけた天秤を元の位置に戻せたに違いあるまい。

 ただ、それでも現状旗色が悪いのはリッデル右軍であることは明白であった。



 「将軍様、右翼に置いたグルッカスが討たれたとの報告が上がって来ました!」


 その報せに周囲は騒めく。

 ”岩斬り”とまで呼ばれた大物犯罪者、今回の戦いの為だけに一時的に軍の預かりとしていた手駒の早くもの喪失に皆が浮足立つのも当然であった。

 驚く者、内心安堵する者、役立たずがと罵る者、様々な輩がいる中、将軍ガダルハーンは考え込む仕草を崩さず、微動だにしない。


 「右翼はなんとか持ち堪えていますが、その勢いがどちらにあるかは明らかです!将軍、何卒ご決断を!」


 若い部下が声を上げると今度は壮年の兵がそれに噛み付く。


 「馬鹿者が!将軍の御身を軽々しく動かそうなどと、貴様は戦の何たるかを考えているのかっ!」


 そして、再びああでもない、こうでもないと議論が白熱してく。

 

 「リスト、如何思う」


 言い争う部下たちを眺めながらふと将軍は自らの右腕に問うた。


 「熟れ時ではないかと。しかし、熟れ時は気を付けねばなりません。我々がそれで腹を下しては何の意味もないでしょう」


 「尤もだ」と男は席を立つ。

 すると、それに周りが気付く。


 「さて、貴君らに問おう。今右翼の戦場は拮抗している、そうだな?」


 不気味なほどの静寂に包まれる一帯。


 「いや、流れを見るならば押されている、そうだな?」


 誰も何も言わない。

 それは目の前の語り部が答えることを求めていないと理解しているからだ。

 しかし、中には例外もいた。


 「将軍様がお招きになったこの状況、如何なさる御積りで?」


 そう声を上げたのは若い男。

 毒蛇が如き目でじっとりと見つめて来る。

 その口元は何故か楽し気に歪んでいた。


 「ヴィーゲル!キサマァァ!」


 その目に余る態度に、かねてより不満と怒りを堪えていた男が声を荒らげる。

 

 「いい、気にするな。当然の問いだ」


 ガダルハーンと言えばそんな若き兵士の無礼にも全く動じる素振りを見せないでいた。


 「我が部下が失礼したな。まぁ、お互い様だ、そうだろう?」


 暗に「貴様の無礼が招いた事だよな?」と目で手打ちを押し付ける。

 その目は暗くそして静かな目をしていた。その目に多くの部下達が心を凍らせた。

 慇懃無礼なヴィーゲルと言う男もまた、その言外の迫力に内心冷や汗をかかざるを得ない。


 「え、ええ、こちらも大変に失礼を。何分初めての戦場に緊張しておりまして。何卒お許しください」


 これっぽっちも謝意の籠っていない謝罪。

 しかし、これを将軍は難なく受け入れて一悶着は終わった。


 「ああ、では話の続きだったな。はっきり言ってこのままでは右翼が押し込まれる。そうすれば、中央の戦場にまでその影がちらついて、一気に崩れかねん。ならば、どうすればいい?」


 今度は本当の問い。

 誰かしらの声を求めている。


 「現状では耐えるしか・・・」

 「いや、負けている訳ではない!ここは反撃を試みるべき!」

 「何を。数はほぼ同数。士気も向こうに勢いがある。そんな中で反攻は愚策が過ぎる!」

 「そうだ!それに精霊狼を伴った部隊の消息が途絶えている。更なる奇襲も警戒しなければならないのだぞ!」

 「ならば、如何様にこの現状を覆そうというのだ!」


 又しても、議論が紛糾し始める始末。

 将軍はそれを可笑しそうに笑い、副官ハンズはそんな上司とこのどうにもならない集団に対し酷く頭を痛めていた。

 ガダルハーンは何かと部下達に問いを提示する。

 そして、活発に議論が行われるのを眺める。

 自分の意が既に決まっている(・・・・・・・・)にもかかわらず、だ。


 部下であるハンズからすれば、場を荒らす悪い癖でしかないのだが、この争いの後は何故か隊の統制が取れるという不思議な前例があるので上司を諫めることもしにくい。


 「簡単なことだ」


 全員が再び視線を将軍に向ける。


 「我々が敵の左翼をぶち抜いてそのまま敵将を獲れば良い」


 最初は、誰であったか。

 サッ、と臣下の構えとなった。

 そこから先は海の波が如くであった。

 気付けば、誰しもが彼に臣下の構えを取っていた。

 あの、噛み付いた若きヴィーゲルでさえもそれは例外ではなかった。


 それほどにファウスト・ガダルハーンという男は勇ましかった。

 どうしようもないほどに輝いて見えた。

 たとえ彼に心服していようと、内心疎んでいようと、恐れていようと、何も思っていなくとも、

 彼らの心は全て捻じ伏せられた。


 それは彼の鍛え抜かれた体から滲み出ていたのか。

 その深く大きい声が与える安心感から来るものだったのか。

 誰に負けることも考えていない自信に溢れ更に挑戦的なその瞳を見たからなのか。


 「精霊狼がどうのこうのなど関係ない。敵の胸元を突けばそれで事足りるのだ」


 さも当然のように彼は言った。


 「では、将軍、残る方は誰に指揮を」


 「そうだな・・・・・・ヴィーゲル、任せる。他の者の力を借り上手くまとめてみるが良い」


 「は、はっ!」


 まさかの大役に若き俊英も動揺を隠せないでいる。

 ガダルハーンはそれを楽しそうに笑う。


 「なに、大きく構えて踏ん反り返っていればいい。もし、俺が失敗したなら切り捨てれば良いだけだ。まぁ、万に一つもそんなことはないだろうがな。他の者もコイツに力を貸してやってくれ。頼む」


 そして将軍は頭を下げた。

 一斉に驚愕が広がる。

 「頭を上げて下さい!」と其処彼処から声が上がる。

 しかし、ガダルハーンは頭を上げない。何かを待っている。

 すると、一人の老人が声を上げた。


 「分かった、私はこの若造に力を貸そう」


 誰にも窺い知ることは出来なかったが、この時ガダルハーンは確かに笑った。

 まるで悪戯が成功した時の悪童のような、そんな会心の笑みだった。

 それを皮切りに次々と声が上がる。


 そして、最早ヴィーゲルに疑いの感情などなく、あるのは絶対なる使命感のみであった。


 副官のリストと勘の良い者だけが、将軍の意図に気付いていた。

 全ては自分が抜けた後の首脳部の瓦解を防ぐため。

 皆に頭を下げ、自分に反抗的であった者を用いることで、この場を纏めてみせたのだ。


 しかし、そのような手を用いらなければならないほどに状況は悪しく傾いていたとも言える。

 けれども、彼はそんなことおくびにも出さない。


 彼は歩き始める。


 「俺の直属の部隊を全て投入する。リスト、いいな?」


 「御意」


 「さぁ、お前たち、調子に乗った隣人に本物の戦いを教えてやろうではないか」


 『応ッ!!』


 皆が声を上げて応える。

 そこにはもう、迷いなどない、怯えなどない、不安などない。


 一人の修羅が歩み始める。

 シルフェウス優勢という黄金色の幻想が”戦鬼”という怪物を動かしたとは何とも皮肉なことだろう。


 

 「簡単だ、抜けばこちらが、止めればそちらが、それだけのことだ」


 「ククク」と可笑しそうに笑う男の目には狂気の炎が灯っていた。







 

 将軍は出オチキャラじゃないよ!ホントだよ!

 作者は戦術、戦略、ナニソレ美味しいの?な頭ですので、こんなのありえねーと思ってもそっと心に仕舞って感想欄で爆発して頂けると誘爆します(意味不明

 あと誤字、脱字、より好ましい表現方法など、見つけたら気軽に感想とかで教えて下さると、助かります(∩´∀`)∩


 戦記物スイスイ書ける方ってどんな脳してるのか解剖したくなる不思議(狂科学者感

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