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第8話

 お読みいただきありがとうございます。

 もうお気づきだと思いますが、この物語はとてもスローテンポです。

 亀の歩みの如くではありますがこれからもよろしくお願いします。(`・ω・´)ゞ



 王都から帰って来て半年が経ちました。

 季節は秋の中頃ってとこですかね。大分涼しいです。

 あと1、2か月もしないうちに冬がやって来ます。

 因みにオリシスでは1年は12か月で1月=30日と地球と大差ない感じです。

 それにしてもフロンテルムの街も俺が生まれた時よりかなり人が増えて栄えてます。それでも、王都には負けるけどね。けど、この調子で上手く回って行って欲しいなぁ。



 王都から連れて来た新人たちも一生懸命頑張っているようで、

 アリサ、ヘレーヌはメイドの訓練を頑張っている。ミッシェルさんが鞭、エリーが飴という形でうまくやってるようだ。

 ラムトは新しく出来た学校に通っている。友達もできて楽しそうだ。そして俺をにーちゃと呼んでくれる可愛い弟分だ。

 マリウスは内政官見習いとして毎日書類と格闘している。頑張ってくれよ?未来の右腕君。

 キルトはこの半年マックスたち従士や狩人のおっちゃんにブランドさんといろんな人たちにかなり扱かれていた。そのおかげでとても鍛えられたようだが、何より野郎どもにとても可愛がられたようでうちに来た当初の荒んだ雰囲気は大分薄まっていた。口は悪いけど。



 そして、屋敷に戻り一息ついていると母上の陣痛が始まった。

 あっという間に母上は別室へ連れて行かれ俺はあわあわする父上とその部屋の前で待つしかなく、男ってこの時ばかりは役に立たないなと実感せざるを得なかった。


 「アッシュ。僕は何をすれば良いのかな?ここはやっぱり応援かな?よし!大きな声でエールを送ろう。それしかない!!」


 おい、父上。若干壊れておかしな方に行ってますよ。

 そもそもあなた立ち会い2回目でしょうが。少しはしっかりしなさいって。

 

 「父上。何かして欲しいことがあれば向こうから頼まれる筈です。それまではどっしり座って待っていましょう」


 「そ、そうだね。よし、じゃあ椅子を持って来て待ってようか」


 それから1時間後。


 「ああ、大丈夫かなぁ。心配だなぁ」

 父上がまたソワソワしだした。

 どうやって抑えようかと考えると、エリーが1組の男女を連れて来た。


 「ご領主様、坊ちゃま。マーチス様、メリーヌ様をお連れしました」

 エリーがちゃんとしてる・・・だと!?

 とりあえず、それはおいといて挨拶しないと。

 

 「御爺様、御婆様お久し振りです」

 「あっ、義父殿、義母様ようこそおいで下さいました!」

 父上テンパってるなぁ。

 ま、母上のご両親だからしゃーないっちゃしゃーないか。

 見た目ダンディーだが娘、孫にだだ甘なのが玉に瑕なマーチス御爺様。

 歳を重ねながらも凛とした貴婦人としての美しさを今なお失わないメリーヌ御婆様。

 この2人は今は亡き父上のご両親と親交が深く、若くして両親を失った父上を何かと気に掛けて下さったらしい。因みにマーチス御爺様は元子爵で今は長男に爵位を譲り御婆様と2人でこのフロンテルムの別荘にて隠居生活を楽しんでいる。

 実家は良いのだろうかと疑問に思うが、御爺ちゃんは「ワシは引退したから知らん」とか言うし。まぁ、幸いなことに2つの領地はそこまで距離もないので何かあれば直ぐに戻れるから大丈夫ということらしい。ゲイン家現当主の伯父さん可哀想に。労いの贈り物でもなんか贈っとこう。

 

 


 「アッシュよ久し振りだな。それにしてもお前は何時まで経っても頼りないな。ラクトル」


 「あなたも連絡が来たら随分慌てて準備していたじゃありませんか?アッシュ、ラクトルさんお久し振りですね」

 

 「ぐっ。ま、まぁ良い。ところでマリアンヌはどうなのだ?」


 こっちのお父さんも焦ってますね。やっぱり出産の時の男は弱いね。

 俺はこうならない様気を付けよう。

 え?その前に結婚できるのかって?

 仮にも食の都と呼ばれるようになった領地の次期当主ですからね。

 ただ、そのおかげでいらんハイエナ共にロックオンされそうで怖いのです。


 「あなた。気を急いても変わりませんよ。ここは時が来るのをゆっくり待ちましょう」

 さすがメリーヌ御婆様。ナイス気遣い。

 この人こそ現代で言うファーストレディに相応しいな。

 その夫は婿と同じくあわあわしています。情けない。


 「母上がお腹の痛みを訴え始めてから1時間ほど経っています。なのでまだ時間が掛かるかと思われます。」

 テンパっている父上の代わりに俺が答える。


 「う、うむ。そうか(ソワソワ)」

 めっちゃソワソワしてるんですけど。

 多分オジサマ好きの女性なら垂涎ものなんだろうけど生憎こっちは(よんじゅう)よん歳の男の子ですからね。


 「御爺様、大丈夫です。傍には回復魔法の使い手が控えていますし、なによりヨネばぁも付いております」


 「まぁ。ヨネ様が?」

 「それなら大丈夫だな」


 一瞬にして御爺ちゃんを落ち着かせたヨネばぁとは、御年70を数えながら未だ現場に立ち続ける凄腕の助産師だ。取り上げて来た子は奴隷から貴族まで万に届くとまで言われている。

 彼女の逸話はそれだけではなく、出産中の妻に「早く産め」などと暴言を吐いた貴族に対し、


 「嫁は旦那の道具じゃないよ!そんな奴には子を抱く資格なんてある訳ないよ。あんたは親である前に人として欠陥品さね」と真っ向から言い放ったらしい。


 夫は当然激怒したが、その時は周りが何とか抑え込んだらしい。そして奥さんは無事子を産んだ。その後、話が奥さんの父母に伝わったこと、そして元々その夫は入り婿だったこともあって離縁したという。

 そんな彼女だから貴賤問わず女性からは絶大な支持を誇る。もし、ヨネばぁに悪態をつくような輩がいようものならそいつはこの国の女性達から総スカンを喰らうだろう。


 そして俺を取り上げたのも何を隠そうヨネばぁだ。彼女は各地を回って赤子を取り上げていて偶々フロンテルムにいたので俺を取り上げたとのこと。その後も何故か我が領地にお弟子さんと共に残ってくれている。

 本人曰く、

 「もう歳だからねぇ。ここらで落ち着かせてもらうよ」とのことだ。

 これもユニークスキル「良縁」のおかげなのだろうか?

 ありがたや~。

 


 そして爺ちゃん、婆ちゃんが来てから凡そ2時間後。


 「お。おぎゃああ!おぎゃああああ!!」


 『!!!!』

 4人が一斉に反応する。

 そして部屋からお弟子さんが出て来ると

 「マリアンヌ様、ご息女様ご両人共にお体に問題ありません!おめでとうございます!」

 と報告する。


 「そ、そうか。良かった・・・」

 そう言うと父上はストンと椅子に腰を下ろした。ホッとして気が抜けたんだろう。


 「ご息女ということは孫娘か。それは良いな」

 おい、爺ちゃん。嬉しいのは分かるが顔がにやけてるぞ。しっかりしなさいってば。


 「まぁ。早速ドレスを用意しなきゃね」

 婆ちゃん。気が早いって。


 「報告ありがとう。それと、出産を手伝ってくれた人たちにご飯用意してあるから余裕が出来たら使用人に声を掛けてくれれば大丈夫だからね」

 ったく、ちゃんと労ってあげないと駄目でしょうに。


 「は、はい。有難うございます。あと、今日の所はマリアンヌ様への面会をお控えしていただきたく。皆様には申し訳ないのですがご負担を考えますと致し方無く」

 

 「分かった。母上をよろしくね?・・・・ということだから父上、僕たちもご飯にしよう。御爺様、御婆も今日は泊まって行って下さい」

 

 「分かったよ。それじゃあご飯にしようか」

 父上は良くも悪くも緩いので息子がこのように勝手に指示を出しても全く気にしない。これ領主として良いんだろうか?まぁ、うちは上手くいってるし大丈夫かな。



 この後、俺を除く3人は妹の名前決めで盛り上がってました。

 母上にも聞いてあげないと駄目でしょうに。これ後でばれたら母上絶対怒るよ。

 え?止めないのかって?何で火中の栗を拾わなきゃならんのですか。

 三十六計逃げるに如かずでっせ。




 次の日、とある貴族の館では2人の男性が正座をさせられ説教を受けていたという。






 

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