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第77話

 一応、説明入れときます。 

 □■□■のあとは場面が変わりますので、ご注意を。


 そいじゃあ、どうじょ(/・ω・)/




 「報告します。死者はなし。軽傷17名、何れも継続して戦闘可能。重傷者11名、この者たちは戦闘続行不能と見なし、一旦下げます」


 退却後、カゲゾウから戦闘による被害報告を受けているが、幸運なことに死者は出なかった。

 しかし、11人もの離脱者を出してしまった。


 「重傷者の人たちの名はちゃんと記録しておいて。帰郷後に生活に支障が出るようだったら補償出すから」


 「御意」


 それにしても一度の奇襲でこれか。

 このまま繰り返すと、すぐにうちの軍は動けなってしまうだろう。

 となると、何かを変える必要がある。


 「このままじゃ、だめだね。ただでさえウチは数が少ないんだ。被害を出来る限り小さくする方法って何かないかな?」


 「遊撃という役割な以上はどうしても局面の打開を目的とした行動が多くなりますので」


 カゲゾウでも良いアイディアは浮かばないらしい。

 ふと「どんな仕事であろうと楽なものはない」という前世の会社の上司の言葉を思い出します。


 「坊ちゃん、顔に皺寄せてどうしたんです?」

 「アシュラード様、確認の方終わりました」


 マックスとブランドさんがやって来た。

 士気についてちょっと尋ねてみる。


 「ご苦労様。皆の士気は落ちてない?」


 「兵士たちの方は特に問題ないですぜ」


 「こちらは怖がっている者が少ないながら見られましたが、逃げ出した者はいませんでした」


 正規の兵は問題無し、と。

 やっぱり一般人の中には厳しい人もいるか。


 「ブランドさん、大変だろうけどまとめ役よろしく頼むね」


 「了解です」


 とは言っても元AA級の冒険者のカリスマでも無理な戦いを続けていれば、何れは限界が来る。

 かと言って少ない正規兵を全面に押し出して消耗するなんてのは下策も下策だし。

 あーーーー、クソッ。手詰まり感半端じゃないって。


 プルプル!


 「モッチーおかえり。ありがとうね」


 負傷者の治療に駆り出していたモッチーも戻って来た。

 戦場においてこの子の存在はとても大きい。

 えらいぞえらいぞ~。


 プルプル~



 「やっぱり、坊ちゃん落ち着かせるにはモッチーたちだなぁ」

 「そうじゃのう、いざという時にそういう者が傍におることは心強いのう」


 むむむ、マックスと何時の間にか現れたダンジョウがヒソヒソ話しているジャマイカ!

 何をヒソヒソ話しているのかね、チミたち?

 いつもの如く悪巧みかね?

 ん?


 「坊ちゃん、そりゃ言い掛かりですぜ?」

 「そうじゃ、心外甚だしいぞ」


 ダマらっしゃい!

 あんたらの信用のなさを信用してるほどなんだよ、こっちは!

 さぁ、吐け。素直に吐くんだ。


 「おい、この横暴どう思うよ、ダンジョウの爺さん」

 「臣下の者を信じられぬとは嘆かわしい」


 下手な小芝居始めおってからに。

 ええい、こうなれば。


 「クロ、おいで」


 影から「ぽよん!」とクロが飛び出して来て頭の上に着地した。

 うん、この演出は来るものがあるな。

 

 「クロ、あそこのダメ男とイタズラ爺は変な事企んでない?」


 クロは生来臆病な性格もあってか、悪意に敏感だ。

 日頃からスキルを超越したシックセンス的な超常の勘の良さを持ち、日々荒くれ者や余所の工作員などから男爵領の平和を守っている影のヒーローでもある。


 ぷ~~~る、ふるふる


 「なるほど、特に害意はないんだね?」


 ぷる!


 ならばよし!

 ありがとね~


 ぷるぷる!


 「坊ちゃん、不当に疑ったんだ。謝罪を要求するぜ」

 「そうじゃそうじゃ」


 だあぁらっしゃい!

 日頃の行いがアレだから疑われるんでしょうが。

 これを機にあんたらちっとは善性な人物になりなさいな。



 


 「あ「カゲゾウ殿、今しばらくはこのままにしておこう」・・・ブランド殿」


 ブランドが視線を向けた方に目をやると、主と部下達の下らないやり取りを少し離れた場所から笑って見ている兵士や領民達の姿が見られた。


 「時には気を休めることも大事なのですね」


 「まぁ、アレは幾分かやり過ぎと思えなくもないがね」


 そう言って二人の男たちは笑った。




 □■□■




 「右軍が押し返されただと?」


 ファウスト・ガダルハーンは報告して来た部下に聞き返していた。


 「はっ、はい、申し訳ありません」


 どうやら目付きが鋭く、声色もドスの効いたものとなっていたらしく関係のない部下をビクつかせてしまったようであった。

 咳払いをした後、将軍は謝意を述べてから再度尋ねる。


 「いや、お前が悪い訳ではない。こちらこそ済まなかった。で、具体的にはどのようにだ?」


 「はっ!一部始終を見ていた兵士によると、当初は間違いなく我が軍が押していたようです。ですが、突如現れた敵寡兵の突撃に乱され、仕切り直しを余儀なくされたとのことです」


 その言葉に将軍は顔を顰める。

 奇襲というのは戦においてありふれた手段である。

 それを常に警戒しろというのは難しい話ではあるが、寡兵の奇襲など受けた後にきちんと対応が取れれば、何ら問題はない筈であった。


 「何故、そうなった」


 「はっ!どうやらその敵軍に巨大な魔物がいたとのこと、それに恐怖して動きが鈍ったと」


 ファウストは話を聞いている間忙しなく指を動かす。

 これは思考する際の彼の癖なのだが、その癖を部下達や貴族たちが気味悪がったり、怖がっていることに当の本人は気付いていないのであった。


 「魔物、か。従魔士でもいたか、いや、そんな話はなかったな」


 「将軍、それについて心当たりが」


 将軍が思考の海に浸かろうとした時、声を上げたのは一人の部下であった。


 「そうか、ならば話してみろ」


 「はっ!数年前、シルフェウスでとある貴族がエレメンタルウルフを従えたとの噂が流れましたが、もしやするとそれではないかと」


 「馬鹿な!精霊狼は意思を持つ魔物だぞ!簡単に従えられるとは到底思えん!」


 「成長すれば竜種と渡り合うとも言われているのだぞ!」


 「もし、それが確かなら何故シルフェウスはそれを全面に押し出さない?」


 次々に兵たちから否定、疑問の声が上がる。

 ファウストは黙ってそれを聴いていた。

 しかし、ファウストの副官がそんな兵士たちを一喝する。


 「精霊狼かどうかなどどうでも良いだろうが!!問題は敵に強い魔物を持つ者がいて、戦況を均衡にされたということだ!」


 その怒声に兵たちの熱が落ち着く。

 そして、それを待っていたかのようにファウストは口を開く。


 「リストの言う通りだな。その魔物を連れた隊について他に何かないのか?」


 エレメンタルウルフの報告をして来た兵が再度手を上げたので、顎をしゃくって続きを促す。


 「はっ!その精霊狼の主らしき者と相対した者がいるようで」


 その情報にこの場に居る者達の期待が高まる。


 「それを近くで見ていた者によると、「成人しているかいないか程度の若者だった」とのことです」


 「待て、何故相対した者ではなく、周りの者から聴取したものなのだ」


 ファウストの疑問は当然のものだった。


 「はい、それが、その若兵に良い様にしてやられたらしく、あることないことを申しておりまして、それよりも周囲で見ていた者たちの証言の方がまとまっていて信用できたのでそちらの方をお伝えした次第で」


 その報せに陣内にいた者たちの顔は険しいものになる。

 戦場で情報を改ざん、隠蔽することは国に背く行為であるからだ。

 

 「まぁ、その様な輩でも使いようはある。で、他にもあるのだろう?」


 しかし、将軍はそんな小者はどうでも良いと話の続きを催促する。


 「はっ!その若兵は剣を持ったその兵を素手で殴り飛ばした、と」


 「ほぅ」


 ファウストの口から漏れ出た喜色の溜息。

 脅威である敵の情報を聴きながら笑みを浮かべる彼は正に”戦鬼”に相応しいと言えた。


 「そして、名前については聞き慣れないものだったということではっきりと覚えている者はいませんでしたが、去り際に様付けで呼ばれていた、と」


 「貴族か」


 「将軍、それだけの情報があれば見つけ出すのもそう難しくはありません」


 副官リストがそう進言する。

 ファウストもそれに頷きで返す。

 

 「よし、リスト、捕虜からその貴族らしきものの情報を集めろ」


 「承知しました」


 「向こうの隠し札が割れたのだ。案ずるな、いざとなればこの俺が出る」


 その言葉に周囲の瞳が輝く。

 周囲を魅了する彼のカリスマはやはり大したものであった。



 「まぁ、そんな機会ないとは思うがな。それに─」


 最後の言葉は誰に聞こえることもなかった。

 しかし、彼は不敵に笑みを浮かべていた。




 □■□■




 「ひゃ~、あれはないっすわ、精霊狼っすよ、精霊狼!初めて見ましたよ!」


 「・・・」


 丘から二国が争う景色を眺めて優男は言う。

 エレメンタルウルフという普通に生きていれば、まず生涯で目にする機会はないであろう高ランクの魔物の出現に優男だけでなく他の人員も大なり小なり衝撃を受けていた。

 しかし、彼らのまとめ役である”団長”は黙ったままそれを見ていた。


 「団長、恐らくあれはシルフェウスの需要な駒ですが、射かけないで良いのですか?」


 そんな部下の一人からの質問に”団長”は一言


 「尚早」


 とだけ告げる。

 しかし、そこは”団長”に絶対の信頼を置き、その意図を理解する者達。

 すぐに、自分たちの頭が時が来るのを待っていることを理解する。


 「まぁ、我々は差し詰め”盤上遊戯の台返し”ですしね、出番を急ぐこともないのも分かっちゃいるんですがね」


 そこで一拍置いて優男は尋ねる。


 「あれは放っておいていいもんかっつうと、そうでもないっすよね?」


 ”団長”はしばし沈黙を続けた後、短く一言


 「過剰」


 とだけ口にした。


 「役目の範疇を超えてるってことですか?」


 すぐに副官の優男は上司の意図を汲み取る。

 仮にも副官ではないのである。


 「肯定、しかし」


 一度頷いてから”団長”は言葉を紡ぐ。


 「障害、撃抜くのみ」



 部下たちは思った。




 団長、単語だけで喋るの限界だったんだな




 しかし、彼らがどんなに気の抜けたやり取りをしていようと、シルフェウス王国にとって、延いてはアッシュにとって脅威であることに違いはない。

 ”団長”という人物が地味なイメージの根強さをどうにかしようとして、独特な喋り方を試みているとしても、である。



 

  

 独特な口調ってキャラ作りにもってこいですが、使いこなすのは大変難しいと現在痛感しています。


 次話は速くても一週間後、延びる場合はもっと開くこともあり得るかと思います。

 ちょっと書く時間が取れなさそうなので、すみませぬ~(´・ω・`)

 

 


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