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第75話

 それでは、どうじょ(/・ω・)/




 シルフェウス王国とリッデル王国の緩衝地帯リュレイオール平原。


 ここに二つの国の姿が現れる。


 万単位の人が詰め込まれた平原を上空から見ることが出来たなら、その者は「宛ら遊戯盤のようだ」と答えたか、或いは「虫が蠢いているようだ」と評しただろうか。


 しかし、この場において鳥のように空を飛ぶことが出来る者などいない。


 当然その様なことを考える者はいない。


 その筈だった(・・・・・・)




 「えー、やっぱりダメかな?」


 「当り前です。何故態々危険にその身を晒すようなことを」


 とってもナイスなアイディアを思いついたのでカゲゾウに提案してみたんだけど、物の見事に却下されました。良いと思うんだけどな、空間魔法で足場作って空から偵察。モッチーの光魔法迷彩と組み合わせれば大丈夫だと思うんだけども、やはりカゲゾウからすれば馬鹿な真似を!って感じなんだろうか。


 「ダンジョ~ウ」


 「部下を自分で説得出来ぬような者の援護など儂はせんよ」


 いや、説得できないからヘルプしてんだっつの。

 チクショ~薄情者め~

 それにしても、最近目に見えて僕ちゃんの男爵家カーストが下降の一途を辿っている件について。

 え、尤もだって?マックス、丁度、広範囲攻撃魔法を思いついたから実験台にしてあげよう。

 謙遜するなって。ちょっとだけ、先っぽだけだから安心しなって。

 

 「おふざけもこれぐらいにしましょうや。で、我々はどう動きますんで?」


 チッ、マックスめ、強引に話題を変えやがった。

 覚えていろ、貴様のカルマは未だ増え続けているってことをな!

 

 「アシュラード様」


 はい、何も御座いません。

 最近、カゲゾウがオカン化してる気がするんだよな。

 

 「ダセェ」


 キルト君、温厚なアッシュ君でもそろそろプッツンしちゃうよ?

 嘘じゃないよ?


 あ、ブランドさんが苦笑してるぞ。

 大変お見苦しい所をお見せしました。

 緊急案件、やはりアシュラード君の威厳メーターが廃棄され掛けている件について。

 

 いかん、本題に戻ろう。


 「とりあえずは遊撃で動いて欲しいってさ」


 ラスカルからの指示は「遊撃として戦場を駆け回れ」ただ一つ。

 他領との繋がりが皆無に等しく、兵数が少ないうちの軍にはピッタリな役回りと言えた。

 まぁ、他の貴族の肉壁にされるのを庇ってくれたんだと素直に思いたい。


 「アシュラード様、指揮系統はしっかりとしておくよう、今一度兵たちに徹底させましょう」


 素早い動きが重要であるため、カゲゾウの指摘は正しい。

 もちろんゴーサインを出す。


 「坊ちゃん、方針としてはどんな感じで?」


 「そりゃ、当然、基本は一撃入れて即離脱だよ」


 何を当然のことを。


 「それじゃあ、大した功は得られませんし、他の貴族様方がうるさいですぜ?」


 そう言いながらお前も笑ってんじゃねえか。


 「それこそ知ったことじゃないでしょ。あくまでも僕たちの役目は遊撃。主戦じゃないんだから」


 あくまでも遊撃ってのは補助であって主力ではない。

 遊撃が主力を差し置いて活躍とか、あっては困る類のことだと私考えるのですよ。


 「ウチは今回の戦においては嫌がらせを頑張ろう!」


 幾人かズッコケたが気にしない。

 

 「カゲゾウ、敵について何かある?」


 どんどん進めて行こう。 


 現在、幾人かの空忍達がリッデル側に潜っており、そこから伝えられた情報を基に敵軍の配置などを予想を踏まえながら組み立てている。

 言い換えればその者達からの情報のみが頼みの綱ということなので、頑張ってもらっている彼らには悪いが、正直心許なさは拭いきれない。

 だからこそ、空からの偵察という、浪漫と実益を兼ねた一石二鳥な提案なのだが、理解は得られない。

 これは、日頃の信用がないからなのだろうかと、チョット凹んでいると、ダンジョウがゆったりとした口調で問い掛けて来た。


 「坊よ、確かに情報収集も大事じゃが、何か忘れてはおらんかのう?」


 ん?忘れてる?何を?

 よくダンジョウはこういう目的語や主語を抜いた婉曲な話し方をする。

 要は考えろって事らしいが、地頭が良くはない私からする面倒なことこの上ない。


 「ん~・・・・あっ、こっちの陣営にも”耳”が忍び込んでいるってことか」


 「確かに、うちらがやってて敵さんがそれをやれねえ道理はないってことっすか」


 マックスも納得のご様子。

 そうだよな、敵だってそれぐらい考えるよな、普通。


 「それは放っておいていいんじゃないの?」


 なんとなく思ったことを口にすると皆がこちらを見る。

 

 「敵の間者全て排除するとか当然無理だし、そんな労力うちには今ないでしょ?とりあえずはウチの軍内にそういう輩が入って来れない様にするしかないと思うんだけど」


 空忍の人達にはかなり無理を強いている現状、シルフェウス全軍に紛れ込んでいる間者の排除など荒唐無稽にも程がある。

 

 「じゃが、既に潜り込んでいる場合はどうするのじゃ?」


 ダンジョウが意地の悪い笑みを浮かべて問い掛けて来る。

 真にコヤツは意地が悪い!


 「そんなのダンジョウが許す筈ないでしょ?」


 意趣返しに意地のわる~いスマイルを無料プレゼント!


 「もし、儂やカゲゾウが見抜けておらぬだけだとしたら?」


 あちらもニッコリしながら更に質問返ししてきた。


 「そしたら、諦めるしかないって。けど、そんな凄腕ウチに忍び込ませるほど敵さんは余裕ないと思うけどなー」


 この二人を騙せるほどの間者を態々ウチの様な男爵家に忍び込ませるとは到底思えない。

 ここ数年アドバンス男爵家の名はフロンテルムの発展でそれなりに売れたけど、それはあくまで内政での話であって軍事ではない。軍事って程の戦力もないし。

 まぁ、幾らか武力チートっぽいのとか隠密チートっぽいのはいるけれども。



 そう、武力チートと言えば、その筆頭ライゼンですが彼は自宅待機です。

 別に、謹慎中とかじゃありませんからね?

 こういう場で最も活躍出来そうな人材ではあるけど、多くの兵力が領地から抜ける分、彼には家族の護衛として残ってもらった訳です。

 本人も「それが良かろう」と納得してたっぽいし、問題無し!

 いや、我が儘を言えば彼の存在は欲しかったけども、こればかりはしょうがない。

 あと、マリウスも留守番です。アイツも戦えない訳ではないけど、うちの文官として大事な人材なのでね。


 「警戒を怠らぬよう、言い含めておきます」


 カゲゾウは真面目だなぁ~

 俺が緩いだけか。


 「ブランドさん、仕事増やして悪いけど、それとなく気を配っといてもらえる?」


 「戦いにおいては強き敵よりも味方の裏切りが何より怖いですからね。任せて下さい」


 ブランドさんもヘレーヌとくっついてからどっしりしたよな。

 太ったとかじゃなくて、言いようがない安心感が増して、口調も丁寧だから更に大人の落ち着き、それに貫禄もヤヴァイわ。


 「それで、偵察についてだけど」


 「アシュラード様はここでお待ちを」


 カゲゾウの仕事は速く、そして正確だった。

 解せぬ。




 結局、空から戦場を見る者が現れることはなかった。

 だから誰も気付かなかった。

 いや、どちらにしても気付けなかったかもしれない。


 シルフェウスでもなく、リッデルでもない第三者(・・・)が戦いが起きようとしている場を覗きながら、その時が来るのを密かに待っていることを。

 



 □■□■




 リュレイオール平原から少し距離を置いた丘にその一団は居た。

 と言ってもその数は十名ほどで然程大した数ではない。

 しかし、その一人一人の持つ雰囲気は、彼らが並々ならぬ戦士であることを窺わせた。

 その中の一人がある人物に話し掛ける。

 

 「団長、ここまで来といてアレですけど、本気でやるんすか?」


 見た目は優男だが、口調から判断するに軽い性格の人物のようである。

 一方、それに答えるのは背中に大きな弓を背負った人物。


 「役目」


 一言だけであった。


 「ですけどね、何で団長がこんな汚れ役みてぇなことをしなきゃ」


 優男は現状に不満を持っているらしく、言葉に棘がある。

 仲間の大半も同じ思いのようで無言で頷いている。


 「否」


 「何が違うんです?」


 「重要」


 この役目が重要であると”団長”は説くが、優男には納得がいかない。


 「こんな雑魚同士の戦いに茶々入れることがですか?」


 「肯定」


 それでも”団長”という人物は揺るがなかった。


 「故、我々、尽力」


 尊敬し信頼する彼の人物からの言葉に優男以下部下たちは全ての不満を抑え込む。

 決して納得はしていない。この偉大な人物がこの様な役をこなすことを。

 それでも、彼が決めたのならやるだけである。

 そして、彼らの感情の揺らぎが消える。


 「分かりましたよ、それでも、ないとは思いますけど、万が一に団長に危険が及んだら、即時撤退ですからね?」


 優男の言葉に”団長”が頷く。


 こうして謎の一団がシルフェウス、リッデル両国の戦いに介入することが確定した。




 □■□■




 「将軍、準備整いまして御座います」


 この度のシルフェウス侵略におけるリッデル王国のトップにその報せが届く。


 「そうか」


 男が立ち上がるとガシャンと鎧の擦れる音が鳴る。

 ファウスト・ガダルハーンは息を大きく吸い込む。そして


 「全軍前進せよ!」


 その掛け声に兵士たちの応える奇声が続く。

 万単位の軍勢の足音はまるで地響きのように周囲に伝播していく。

 男の瞳は愉悦に濡れていた。



 □■□■



 「来たか」


 攻められるシルフェウス王国の王子は悠然としていた。

 それは窮地に立たされている国の王子には決して見えなかった。


 「全軍に告ぐ!祖より受け継ぎし故郷を侵略者たちに荒らさせるな!」


 その声は不思議と響いた。

 その声を聞いた者は置いて来た家族や愛する人を思い出す。

 そして次の瞬間には立派な戦士の目をしている彼らが居た。


 『おおおおおおおおおおお!!!』


 それを見つめる王子の目には悲しみと怒りがあった。


 「どれほどの血が流れるのか、我に目を逸らすことは許されまい。兵どもよ、頼むぞ」




 これより戦いの幕が上がる。

 


 

 

 次話から頑張って戦いに入ろうかと思います。

 戦闘描写に定評のない作者なので優しくお願いしますね|д゜)?


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