第73話
それでは、どうじょ(/・ω・)/
どうも、アシュラード君です。
リュレイオール平原の手前までやって来ました。
他の貴族たちの一団も続々と到着してます。
で、よくよく観察してみると、ウチのように代表者が若者の家がそれなりに多いです。
大雑把な内訳ですが、ニ、三十代ぐらいの人が過半数ぐらいで、残りはそれより上の世代のお歴々、と言った様相を呈しています。
アシュラード君の同世代位の子も居はしますが、大抵は平の兵士です。
いくら若い名代でも精々二十代くらいですね。
アッシュ君どうやら戦地でもボッチのようです。
まぁ、十代の子を家の代表にってよくよく考えるとおかしな話ですもんね。
いや、気にしたら負けですな。うん、ポジティヴに行こう、ポジティヴに。
そして、その若者たちですが、大半が如何にも気合い入れて奮発しましたって感じの鎧を誇らしげに着ているのです。武器もぜってぇ新品に違いないようなピッカピカなものを意味もなく鞘から抜いてアピールしてる人もいます。国家の危機に際してなにマウンティングしてんだよって思わなくもないですが、職業病なので勘弁してやって下さい。
「こりゃあ、逃げる準備しといた方が良いんじゃないすかね?」
マックス君、思っても言うな。それは黙ってこっそりとやるべきだ。
決してふざけて言っているのではなく、これは実際危ないと思う。
こんな如何にもな彼らを率いて他国からの侵略に対抗できるだろうか。
不安になる我々の気持ちも分かるでしょう?
それに、補佐役の方々が有能とも限りませんしね。
個人的にはこの感じ、無理ゲーな気がしなくもない。というかプンプン臭う。
どれぐらい臭うかというと、DVDをビデオデッキにに差し込んで観賞しようとするぐらい無理臭い。
まぁ、うちもアッシュ君を名代にしてる時点で他家のこと言えんのだけども。
「なるべく後方に陣取れるように頑張るよ」
冗談っぽく、とりあえず今はそんな返ししかできませぬ。
あー緊張で吐きそう。つか、吐く。マジで吐くまで5秒前。
「おい主、周りの視線が鬱陶しいぞ。どうにかしろよ」
キルト君、一応、俺は君の主だからね?最低限の敬意とか、言葉遣いとかをさぁ、はぁぁ。
「視線については諦めてくれ。どうやったって集まる」
そう、周りからの視線、そのほとんどがラルフに向けられている。
なんてったって精霊狼である。注目されるのもしょうがない。
この視線は精神的に来るものがあるが、それ以上に鬱陶しく近寄って来られることがなく大変助かっている。
ラルフ、ありがとう。 もふもふ
「久し振りだな、アシュラード殿」
振り向けば伯父さん。
ゲイン子爵が居ました。
やっぱりこの人も爺ちゃん婆ちゃんの血を継いでいる、ナイスミドルだ。イケメンは滅びろ!!
「ん、何やら嫌な気配が」
おっと、自重自重。
「子爵様、お久し振りです」
こういう人の目がある場所では気を遣いませんとな。
あー、めんでぃー
「それにしても、その精霊狼は目立つな」
ラルフ君、GRRR言わないの、この人は敵じゃないよ。
(分かった)
よしよし、ああ、なんというもふもふ具合。
至高なり。
「こうして見ると、本当に懐いているな」
「はい、この子もうちの家族の一員ですからね」
伯父さんは興味深げだ。
まぁ、他人から見れば精霊の文字がついても立派な獣なんだよな。
こんなにもふもふなのになー
それからミン兄のことなど色々と話していた所に新たな訪問者が現れた。
「これはゲイン子爵、お久し振りです」
「・・・アインバースト子爵、しばらくですな」
伯父さんの顔が何故か硬い。
そして、なんか凄いばーすとな家名が聞えたのだが、気のせいだろうか。
尚、このあいんばーすと(?)子爵も綺麗な顔をしている。マジでイケメン比率高すぎるだろ、おい。
そして、この方は絶対に若い頃ブイブイ言わせてた(死語)であろう甘いマスクの面影が残っている。
はっきり言おう。気に入らない。
「そちらはもしや?」
「甥のアシュラード殿です。アシュラード殿、ご挨拶を」
伯父さんナイスアシスト。
やっぱいい人だよ伯父さん。イケメンだけど許そう。
「初めまして、この度は父の名代として参りました。アシュラード・アドバンスです」
軽く礼をする。
「そうか、君がか・・・おっと、初めまして。私はジェイン・アインバーストだ、よろしく」
すぐに
そう言って手を差し出してくる。
なのでこちらも手を出して握手を交わした。
その後、三人でとりとめのない話をしていざ別れようとした時に閣下は爆弾を落として行った。
「ああ、そうだ、マリーによろしく伝えておいてくれたまえ」
「マリー?」
「君の御母上のことさ。顔馴染みでね、よろしく頼むよ?」
「は、はぁ」
何で人妻を愛称で呼ぶねん。
めっさ鳥肌立ったやんけ。
あの「マリー」って声色、ガチですやん。
アインバーストな子爵が去って行くと伯父さんが申し訳なさそうな顔して謝って来ました。
「すまん、アシュラード殿」
「ゲイン子爵、あの方は一体」
「その前に少し場所を移そうか」
◇
「ここなら大丈夫だろう」
そう言ってゲイン子爵の陣にトコトコやって参りました。
ゲルっぽい仮設テントの入口をくぐって中に入ります。
そして用意された座布団に座ります。早速話が始まるようです。
「そうだな、まず最初に言っておこう。マリーは、君の母上はあの者のことを好いてなどいないし、決してあの者とその様な関係になったことはない。これは断言しておく」
はい、そこはあまり心配してないです。
母上何だかんだいって父上にゾッコンですし。父上も同じくですし。ケッ
「それについては全く疑ってません。それであの方は何故あのようなことを仰ったのでしょう」
なんとな~く予想はつくが、勘違いかもしれないので聞いておこう。
「うむ、薄々分かっているとは思うが、彼奴は若い頃マリーに好意を抱いておった」
やっぱりそうですか。
それにしてもあの様子は
「かなり拗らせてませんか?」
暗に「何かあったのですか?」と訊いたのだが、俺の問いに伯父さんは苦虫を噛み潰したような顔をして黙ってしまった。
それから少しの間沈黙が続いた。
踏ん切りを無理矢理付けたのか、伯父さんは絞り出すように言った。
「これはあくまでも人を使って集めた情報からの推測だ。それでも良いかな?」
「はい、構いません」
判断するのは自分だからさして問題ではないと思い頷く。
「マリーの学生時代のことだ。妹は身内の贔屓目を抜いても美しかった。当然、そんな妹に恋愛感情を抱く若者たちがいた。アインバースト子爵もその中の一人だったらしい」
うん、容易く想像がつくな。
今でも子ども三人産んであの美貌にプロポーションですもんね。
年齢のことは言いませんよ?死にたくありませんから。
「そして、彼奴はそれまで女性に困ることはないような人物だったらしい」
あー
「そして文武共に優れていたと聞く」
やめてー
「そんな自信に満ちた一人の青年が妹に告白し、妹はそれを断った」
ぎゃーーーー
「青年にとって人生初めての失敗だったのではないか、と私は考えている」
顔が良く、勉強できて、武芸にも自信がある。
うん、人生イージーモードで何でも思い通りになると思ってたんだろうな、予想でしかないけど。
伯父さんの考えはかなり事実に近いと思う。
「その後も、妹は彼奴から交際を求められた。妹も勘違いなどされても困るのでどの返答もはっきりと断っていた。これは本人から聞いているので間違いない」
うん、母上こうと決めたら貫くからね。
けど、父上には結構弱いのよね、これまた。ケッ
「最初は放っておいても特に問題はなかったらしい。だが、何時まで経っても自分に靡かないとなると、あの糞野郎は執拗に妹に迫ったそうだ」
あー、伯父さん話しながら当時のこと思い出したのかな?
口調に一部乱れががが
「マリーの学友を伝にその報せを聞いた父と私はマリーをすぐ手元に戻そうとした。しかし、そこで義弟殿の御両親が止めて下さったのだ」
ここで父上のおじいおばあが?
「自分の息子を護衛に、と申し出て下さってな。義弟殿はそれ以前から顔見知りであったし、マリーが態々学校を辞める必要はないと仰って下さったのだ」
へー、あれ?
でも、王都の学校って確か従者とか護衛の類って御断りじゃなかったっけ。
「表立ってはそう謳っているが、実情は異なる。今も学校では多くの貴族子弟が護衛を連れていると思うぞ?」
暗黙の了解って奴ですか?
その張りぼての決まり真に受けた僕ちん馬鹿チンじゃないか!
うん?でも父上達はなんでそれを教えてくれなかったんだ?
「そんな訳で義弟殿は護衛としてマリーを卒業まで守ってくれたのだ。かなり苦労したと聞いている」
ああ、あんま良い思い出なかったから、学校行くのもそんなに強く勧めなかったのかな?
「そして、そんな若い護衛と美しい姫が恋に落ちるのは至極当然だったのだ」
伯父さんの機嫌が回復してきた。嬉しそうだ。
うんうん、ワイもハッピーやで!
「で、見事に当て馬となった男はかなり荒れたと聞いている」
うん、アインバーストさんアンタは完全なる負けパターンに陥っちゃったんだな。
同情はしてやんないけど。
「それ以降、夜会などで偶に顔を合わせる機会はあったが、特に向こうから接触して来ることはなかったのだがな。そして私の知る限り今も未婚の筈だ」
伯父さんの話を聞く限り、重症だな子爵さん。
それが今回に限って向こうから挨拶に来たと。臭う、臭うぜ~(決して私は臭くありません)
「アシュラード、彼奴には注意しておきなさい」
「お気遣いありがとうございます、伯父上」
心配してくれてありがとうございます。
アッシュ君気を付けます!
◇
「いや~、それにしても戦いに来たのに母上の過去のいざこざ話を聞くことになるとは」
ウンウン唸っているとカゲゾウがサササっと寄って来た。
「アシュラード様、アインバースト子爵の元へ手の者を送るべきです」
「やっぱりそうした方が良いか~、んじゃ、頼むよ」
「御意」
敵にだけ集中したいと言うのに、味方にも気を張らなければならないこの現状。
ん?
「ダンジョウ」
「何かの?」
音もなく現れる。呼んだの僕ちんだけどさ、毎回何処に隠れてんだよ、一体。
「アインバースト子爵は何で俺に近寄って来たんだ?」
「と言うと?」
「傍にはおじ、ゲイン子爵が居たんだ。自分が去った後に過去の経緯を話されることぐらい想像がつきそうだよね?しかもあからさまに母上の名前出してこっちの警戒引き上げたし」
「ふむ、坊はあの者に何か思惑があると言いたいのかの?」
「う~ん、はっきりしないけど、いや~な感じがするな~って」
勘違いなら笑い話で済むけど、戦場で何か見落としたりしたらヤバそうだし。
「まぁ、カゲゾウがどうにかするじゃろ、坊は考え過ぎんことじゃ。考えた通りに物事など進む方が稀じゃ。それにのう、上がいざという時固まると下の者らが割を食らうのじゃ。大きく構えておくことじゃ。何なら踏ん反り返って居眠りでもするが良い」
軽いな、おい。
でも、一概に間違いとも言い切れないかも。
うん、気を付けます。
って、なにニコニコしとんねん。
「坊の成長が嬉しいのじゃよ」
サラッと心読まないで下さい。
「それは無理な相談じゃのう」
だから読むなと。
やいのやいの言ってたら急に周囲がざわつき始めた。
皆一様に同じ方向を見ている。
「ほれ、この戦の”王”が来おったぞ」
ふぉっふぉっふぉと何が可笑しいのか楽し気に笑う爺さん。腹立つ。
そして、皆の視線の先には如何にも偉そうな赤髪の人物が中心に居た。
「あれが」
「まだまだ子どもではないか」
「いや、あの纏う雰囲気は」
内容は読み取れないが、お貴族様方が近くにいる人とヒソヒソと小声で言葉を交わしている。
ちなみに、私の傍には護衛だけです。
そして注目の的になっている人物と視線が重なった。
ソイツは音を出さずに口を動かした。
遠くてよく分からなかったのでとりあえず鼻で笑っておいた。
それが伝わったのか、凄く怒っているのだけは、はっきりと分かった。
戦場に来たのに、両親の過去のイザコザを聞く羽目になってしまうとは。
流石変態餃子作者(自画自賛




