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第71話

 文字数は安定の不安定さ加減(?)

 今日を乗り切れば休み(`・ω・´)!

 皆さんファイチョ~(・ω・)ノ

 

 ちょっと今話は一味違うかもです。

 それでは、どうじょ(/・ω・)/




 「おい、第三小隊の人数確認まだか!」

 「荷駄隊準備完了しました!」

 「武器と防具の確認はしっかりしとけ!」


 朝っぱらからとても騒がしい。

 それも酔っ払いどもの陽気な騒がしさではなくて、全体の雰囲気が何処となく硬い。 

 そしてそんな男たちの家族がそれを離れた場所から見守っている。

 

 「ふむ、辛いか、坊?」


 「何がだい、ダンジョウ?」


 そんな領民たちの様子を窺っているとダンジョウが寄って来た。

 相変わらず良くも悪くもタイミングが見事だ。

 何ともない様な顔で返事をする。


 「・・・ギリギリ合格、いやまだまだじゃのう」


 「ダンジョウはちょっと厳しすぎると思う」


 「そう言えるということは坊自身も分かっておるのだろう?」


 あい。

 正直、キツイ。魔物の前に初めて立った時、盗賊に襲われた時の何れとも異なる緊張感。

 前世の学生時代のテスト前とも就活の面接時とは比べ物にならない程の圧迫感。

 これが戦いなんだと今更ながら分かってしまった。


 「正直、舐めてたよ。戦争もだし貴族の務めってやつもさ」


 「まぁ、そうじゃろうのう。人の命を背負って戦いの場に立つというのは、ただの魔物狩りや盗賊狩りとは全く違うものじゃ。ましてや此度は守るべき民の命を使うのじゃ。もし、坊がそのことに何の呵責も感じぬようなら儂は今頃坊を切り捨てておったぞ?」


 苦笑いしか出て来ない。

 ”切り捨てる”が見捨てることなのか、将又字面通りの意味なのかは分からない。

 でも、それだけこの痛みをしっかりと感じることが大事であるということは伝わって来た。


 「ダンジョウ、戦いって何なんだろうな」


 ふと、そんな言葉を口に出してしまう。

 そんな俺にダンジョウは一言。


 「分からぬのう、儂にも未だ分からぬ」


 伸びきった口調だったが、そこには長年生きて来た彼の全てが現れていた。


 「ダンジョウでも分からないか」


 「儂をなんじゃと思うておる。ただの隠居爺じゃぞ?」


 「ただの隠居爺が音もなく密室に入り込める訳ないだろ!」


 「ふぉっふぉっふぉ」


 そしてこうやって重苦しくなりそうな空気を一言二言で変えてしまう。

 全く喰えない爺さんだ。


 「アシュラード様、出立の準備整いまして御座います」


 カゲゾウが準備完了の報告に来た。

 何時の間にかダンジョウは消えていた。

 相変わらずの神出鬼没。


 「分かった。編成について詳しく頼むよ」


 「はっ!男爵領兵104名、領民210名で御座います」


 改めて聞くとその重さに心臓が苦しくなる感覚を覚える。

 この中の大半の者達には愛する異性や家族が居る。

 そして戦いとなればまず間違いなくこの中から死者が出るのだ。

 ほとんどが見たことのある顔だ。それが更に見えない重しとなって両肩に圧し掛かって来る。


 (主、大丈夫?)


 ラルフが心配して尋ねてきた。

 いかん、いかんぞ、アシュラード。

 仮にも一軍の将なのだ。気弱な所を下の者に悟らせてはならない。


 「大丈夫だよ、ありがとうラルフ」


 お礼を言ってモフらせてもらう。

 かなり気は紛れて来た。やはりもふもふは偉大である。


 プルプル!

 ぷるぷる!


 モッチーにクロまで励ましてくれている。

 ありがとうお前たち。モチモチもちもち、ああ、癒されるんじゃあ

 おっと、飛んじゃう所だったぜ。


 カゲゾウに更に近寄り小声で耳打ちする。


 「空忍の方は別だよね」

 

 「はい、軍内に数名、アシュラード様のお傍に数名、他は現地に向かって既に発っております」


 「了解」


 空忍は出来るだけ表に出ないように頑張ってもらっている。

 空忍の存在を態々他の貴族たちに知らせるのも馬鹿らしいし、当然リッデル側に知られて警戒されるのもお間抜けさんだからね。まぁ、空忍の存在に気付いてる人は幾らかいると思うけど馬鹿正直にそれを教える必要もないと思うし。


 カゲゾウが下がると、父上がこっちにやって来た。

 ざわめきが徐々に小さくなっていく。

 俺の横に立つと父上が声を上げた。


 「諸君、私はラクトル・アドバンスだ!この地を治めている、と言っても皆既に知っているか」


 おどけた物言いでのちょっとしたジョークに笑いの声が上がる。

 マイクも使っていないのに父上の声はよく通る。


 「今回の戦いだが、私の息子アシュラードを名代として我が男爵領軍は参戦する!」


 少しのざわめきが生じる。

 恐らく知らなかった者達が動揺したのだろう。


 「私よりもその本人に話してもらった方が良いだろう!」


 そう言ってこっちを見る。

 こんな大勢の前で話すなんて何時以来だろう。

 とりあえず、数歩前に出て手を後ろに組む。

 鼻から空気を大きく吸い込む。

 そしてそれを言葉と同時に吐き出す。


 「父上から紹介に与ったアシュラード・アドバンスだ!爵位はまだない!」


 一際大きな笑い声の後にドッと周囲がつられて笑いの波が伝わって行く。

 よし、何とか掴みは行けた。あと、マックスはあとで〆る。

 これは教育的指導だ。決して彼の笑い声にイラッとしたからではない。


 「皆、今回の戦いについてどう思っているだろうか!」


 少し溜める。


 「私は正直恐ろしく思っている!」


 誰も何も言わない。


 「これから我々が向かう場所では人が簡単に死ぬ!」


 「剣で切られ、槍で突かれ、矢で撃たれ、石で殴られ、或いは魔法の餌食となって」


 「疲労すれば体の動きは鈍り、血を流せば目が霞み、終いには立つ気力さえ失うだろう!」


 怒涛のネガティブキャンペーン。

 中には顔を青くする者もちらほら見られる。

 主に若い人達に多い気がする。

 怖いし恐ろしいのだろう。

 だからこそ俺は最低な事を言う。


 「しかし、我々には守るべき家がある」


 周囲を見渡す。


 「土地がある」


 遠くを見る。そして


 「人がいる」


 兵たちの家族を見やる。


 「我々はそれらを命を懸けて守り抜かなければならない!」


 「しかし、それは死んでいては出来ないのだ!」


 「だから、私は皆に無理を言う!」


 「死ぬな!決して生きることを諦めるな!どんな傷を負おうと、どんな痛みを覚えようと」


 「立ち上がれ!そして前を見ろ!君たちの後ろには愛する者達がいることを忘れるな!」


 この者たちの家族を免罪符にして、本当に最低だ。

 後ろで組んだ手に入る力は嫌でも強くなる。


 「とんだ無茶を言うと思っただろう。しかし、私は本気だ!」


 「隣の者が倒れそうなら肩を貸し、隣の者が切られそうになればそれを庇い、勝てない相手だと思ったならば命を惜しんで素直に引け!」


 「そうやって自らの、そして隣の者の、仲間の命を守って欲しい!」


 綺麗事だ。

 そんなことが出来るなら戦場で死者など何時まで経っても生まれない筈だ。


 「一人は仲間のために!仲間は一人のために!」


 「心には愛する故郷を、そして愛する家族を!」


 みんなを見る。

 その目はどれも覚悟の炎が燃えていた。

 ありがとう、こんなちゃらんぽらんの言葉を真面に受け止めてくれて。


 「目指すはリュレイオール平原!総員、これより出立する!行くぞ!」


 『おおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』


 行きましょうか

 

 物騒なお隣さんを黙らせに


 そして笑って帰って来よう、この場所に




 □■□■




 これはアドバンス領に召集令が届いた頃のこと。




 「国王様、セルラーヴ殿下を御大将に!」

 「然り然り、国の顔となる人物が兵を率いらねば!」

 

 謁見の間では複数の貴族たちが集められていた。

 とは言いながらも、国内の全ての貴族が集まっている訳ではない。

 国王からの急な呼び出しに応えられた者だけがこの場に集まっていた。

 

 その中の宰相を中心とした一派がシルフェウス国王に対して嘆願を行っていた。

 いや、最早その非礼っぷりは要求と捉えても良いだろう。

 その内容と言えばシルフェウス防衛に際しての神輿についてだ。

 と言ってもやたらと騒いでいるのは宰相派のみで公爵派の面々は沈黙を保っている。


 「愚かな、やはり宰相一派は阿呆しかおらんな」

 「そうだな、態々リッデルからの壁となって己の力を自ら削ってくれるというのだ。ありがたいものだ」


 かと思えば、こうして公爵派の貴族たちは小声で囁くのだ。 

 国家の危機に際して尚これである。

 正に内憂外患という言葉が当て嵌まるのがシルフェウス王国の辛い現状であった。


 「国王陛下、よろしいですかな」


 その声は酷く冷たく静かで一気にその場の空気を冷ましてしまった。

 その一声が宰相たちの熱を奪い、緩みかけていた公爵派の面々の気を引き締めさせる。

 静けさの中に確かな威がそこにあった。


 「ああ、なんだ公爵?」


 公爵派首魁、パトリオット公爵その人であった。


 「私共はこの戦、王子殿下を支えましょう」


 「なっ!」

 『!?』


 まさかの発言に広間に衝撃が走る。

 それは彼の政敵である宰相たちにとっても、身内の公爵派の者達にとっても予想外過ぎるものだった。


 「ほ、ほほう、公爵殿はセルラーヴ殿下の下に着くと」


 驚きを隠せていないが、それでも早速言質を取ろうと現宰相ビトレイ侯爵が声を上げた。

 しかし、パトリオット公爵は目だけ動かし


 「私は国王陛下とお話ししているのだ」


 と、その一言のみでビトレイ侯爵を退ける。

 宰相は素っ気ない態度に若干の苛立ちを覚えるも、尚も引かない。


 「陛下、公爵が殿下のために働きたいそうですぞ。やはり殿下が次代の王に相応しいですな!」


 意趣返しとばかりに曲解した言葉で国王に迫る。

 

 「宰相殿、些か勝手が過ぎますよ」


 書記官のマーブルがそれを窘める。

 が、宰相はそれを無視する、まるでマーブルという人物などいないかのように。


 「うむ、今は公爵の話を聞きたいのだ、宰相よいな?」


 その威厳ある目は決して裏で傀儡などと呼ばれているようには見えないものであった。

 流石の宰相もこれには首を縦に振らざるを得ない。

 それを確認してから国王は公爵に先を促す。


 「では、続けさせていただきます。この度は国の一大事であることはこの場に居る者達は分かっているでしょう。そして皆が一つになるためには象徴が必要です。王家と言う名の。そこで提言させていただきます。私はこの度の戦における我が国の大将にラスカル(・・・・)殿下を推挙します」


 この日一番のどよめきが起こった。

 当然も当然だろう。シンプリー王女を旗頭にする公爵が何を思ったか、第二王子を推薦したのだ。 


 これに対して又しても宰相が何かを言おうとするが、国王の一睨みがそれを許さない。


 「公爵、その理由話してもらえるな?」


 「御意。先ず陛下が戦場に出るのは論外のこととします。次にセルラーヴ殿下ですが、ご気性猛々しく、大変ご立派ですが、甘言を好み諫言を疎む質が見られます。そして、何事も自身の考えで物を進めようとする点がこの度においては隙を生みかねないかと」


 その物言いに幾人かが声をあげそうになるが、王の視線を感じ開きかけた口を閉じる。


 「次にシンプリー王女殿下ですが、恐れながら戦いの才は皆無に等しいので、この場合は候補から外れます」


 シンプリー王女ははっきり言って政治、軍事、内政、何れの才もそれらへの執着も一切持ち合わせていない。だからこそ公爵派は彼女を神輿に選んだ。多少の我が儘に目を瞑っていれば問題ないからである。

 しかし、自分らのトップは何故か第二王子を推している。

 彼らの中にはこれも何らかの策に違いないと思う者もいれば戸惑いを隠せない者まで、多くの感情が渦巻いていた。


 「対して、ラスカル殿下は配下に優れた者多く、民にも好かれていると聞き及んでおります。武に関しても才を持つとの噂もございます。そしてグレイス王女殿下ですが、これもまたお歳から考えてありえません。と、この様にラスカル王子しか適任ではございません」

 

 長々と失礼しました、と頭を下げて、公爵は発言を終えた。

 国王は蓄えた髭を撫でながらその意見を吟味する。

 

 「公爵の考えについて何かあるか?」


 この一言で察しの良い者は気付く。

 国王が公爵の考えに乗ろうとしていることに。


 「陛下、私は反対ですぞ!」


 異を唱えたのはやはりビトレイ侯爵、宰相であった。


 「第二王子殿下は成人もしておりません。さすれば威も足りますまい。それに言いたくはありませんが、第二王子殿下は幼き頃よりの奇行が国内に知れ渡っております。やはり、ここは成人し、確かな威を持つセルラーヴ殿下を大将にすべきです」


 尤もなことを言っているようだが、大変苦しい言い訳である。

 未成人と言っても、セウルラーヴもまた成人して数年しか経っていない若者である。

 そしてラスカルの奇行は確かに本人がやったことだが、それを国内に広めたのは何を隠そうこのビトレイ侯爵である。それでも、このまま異を唱えなければならなかった。


 この戦いは国の命運を左右するものである。

 その様な戦いでお飾りとは言え大将となり、リッデルからの侵略を守り抜けば、その者が王位に近付くことは容易に想像がつく。

 だからこその否定だが、それも容易く否定される。


 「国王陛下、私もよろしいですか?」


 「許す。何ならおのら二人で言い合うが良い」


 「では、お言葉に甘えて、宰相殿、ラスカル王子が成人なされていないのを理由に挙げられましたが、それこそ月を幾つか跨げばご成人なさります。それに成人せずとも立派な威を持つ者はいますよ、例えばアドバンス家のアシュラード殿のような、ね」


 公爵は静かに言葉を紡ぐ。

 一見穏やかな物言いだが、その切れ味の鋭さはこの場に居る者達全てが理解していた。


 「くっ、だが、第二王子殿下が幼き頃より奇行を繰り返されたのは変えようのない事実ではないか?その様な者に大将という重責が務まろうか、もしやすると兵たちが言うことを聞かなくなるのではないか?」


 限りなく侮辱に近い言葉に聞く者は冷や汗を流すが、国王は何も言わない。

 言葉通り公爵と宰相に任せているようだった。


 「確かにとある面から見ればそれは真と言えるでしょう。ですが、今のラスカル王子は自らを鍛え、為政の何たるかを学び、王家として相応しくあろうと精進なされております。その様な王子が適格でないとするならば一体何方が相応しいと言うのでしょう」


 「それは当然セルラーヴ殿下であろう!」


 「これは異な事を言いますな。確か以前アドバンス家が出廷した際にセルラーヴ王子は彼らと揉め事を起こし謹慎を受けたと聞き及んでおります。そして、未だその謝罪をしていないことも」


 これでも適格と言えるのか、そう目が告げていた。


 宰相は返す言葉がないようであった。

 それが歴とした事実であるからだろう。

 更にセルラーヴ王子はその件でアドバンス家のことを今も疎み嫌っていた。

 それも宰相一派の中で暗黙の了解であった。

 これ以上の反論は自身を追い込むだけとビトレイ侯爵は悟った。

 が、このままではいけないと脳をフルに働かせる。


 しかし、ゴングの鐘が突如とした終わりを告げた。


 「うむ、主らの言い分は双方よく分かった。これを参考にさせてもらうぞ?」


 「へ、陛下!」


 宰相は情けない声を上げる。

 しかし、国王は取り合わなかった。


 「ラスカルを総大将としてリッデルと事を構える。皆、よいな?」


 国王を除くその場の者全てが臣下の礼を取った。




 □■□■




 「どういうつもりだ?」


 そう言って尋ねるのはビトレイ侯爵。

 尋ねる相手は


 「何がです?」


 パトリオット公爵。

 その顔は涼しげだ。


 「何を考えているのかと言っているのだ」


 一方、上手くやり込められた宰相としては気分が悪い。


 「国の為を思ってのこと、それ以上もそれ以下のこともありません」


 そう言って去って行く公爵を恨めし気に睨む宰相がいた。



 ◇ 



 「まさか、お前が味方になるとはな」


 「私は国の事を思っただけだ。それ以外の何でもない」


 「そうか・・・・礼を言う」


 「勘違いするな、私はあの方の為に動いたまでだ。今回はそのついでだ」


 「それでも、だ」


 「勝手にしろ。それでは失礼する」


 そう言ってパトリオット公爵は国王の部屋を後にした。

 無礼も無礼な公爵の振る舞いにその幼馴染は一言


 「相変わらず不器用な奴め」


 その声は少し喜びの色が含まれていた。



 

 はい、ということで主人公の葛藤を書いてみました。

 拙いながらも、読者の方に伝わればな~と思います。

 これまで危機感ナシだった主人公がこれを機に逞しくなって欲しい作者であります。


 今回は早く書けましたが、次は・・・

 が、頑張るでごわす(;´・ω・)

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