第68話
本日2話目の投稿になります。
ご注意ください。
それでは、どうじょ(/・ω・)/
全く、またダンジョウの奴がやってくれましたわ。
アンジェラ嬢が起床して私の顔を見た瞬間、顔逸らすもんだから気付いちゃいましたさ。
まぁ、彼女が笑ってくれたから今回は大目に見ますけど。
次はないからな!
そして、その諸悪の根源から報告を受けましたが、またとんでもないことやってくれたようで。
伯爵の裏帳簿をかっぱらってきたとか、逆にこっちに刺客出されても文句言えませんぜ?
あ、もちろんアンジェラ嬢を自室に戻してからお話聞いてますのでご安心を。
ダンジョウの潜入から伯爵拘束の種明かしはこんな感じ。
クロの影渡りの能力でダンジョウとモッチーを連れて伯爵の私室に潜入。
クロは伯爵を影縛りの魔法で拘束、モッチーはクロのMP確保の為に支援に徹し、ダンジョウは動けない伯爵にO・HA・NA・SHIと見事な役割分担。
これ、暗殺し放題じゃね?と思ったのはここだけの秘密だ。
「それにしても、命令しといてあれだけど、ダンジョウもよくやるよね」
「ふぉっふぉっふぉ。褒め言葉として受け取っておくぞ」
柳に風ですな。
まぁ、いいや。
「で、ちゃんとこっちの意思を伝えたなら、大丈夫だよね?」
脅して言う事を聞かせるという手法、以前もウィズル伯爵にやったけどやはりいざとなると不安になるよね。それにウィズル伯爵の時は父上に厄介事押し付けたし。
「それは問題無かろう。まぁ、余程執念深いか、愚かでなければ、とやかく言うことはなかろう」
信じますよ?
お願いしますよ、ホントに。
◇◇◇
伯爵との会談が始まりました。
伯爵サマの様子ですが、心なしか顔色が悪い。
こっちを直視しようとしないし、これはホントに大丈夫かもしれない。
「伯爵様、今回の件ですが」
「こちらが悪かった。ラミノーレ家当主として正式に謝罪する。どうか、どうか」
いきなり頭下げて来た。
これもやはり貴族としては異例の対応である。
これが通例通りなら
「悪かったと思わなくもない。だからそちらも許してくれるな?」
みたいな、謝っているのか威張っているのかよく分からない感じの挨拶になるんだろうけど、この怯え具合本気だな。
ダンジョウ君、やりすぎですって。
「分かりました。謝罪を受け入れます。それでもそちらのご子息がやったことは到底許せることではありません。ですので、一致の期間、こちらで預かりますが、よろしいですね?」
黙って頷く伯爵。
従順過ぎて怖い。
「あと、昨晩のような気遣いも無用です」
ピクリと伯爵の肩が反応した。
あ、これも言っとかなきゃ。
「伯爵家の宝は私には輝きが過ぎたので、無粋に扱うことなど出来ませんでしたので、ご安心を」
勝手にお手付きされたと思われても心外ですしね。
というか、速くも会話のタネが尽きてしまった、お暇しましょうかね。
「(アシュラード様、会談を終わらせる場合、招待された側からの自発的な切り上げは主催側の面子に関わります。ここは伯爵様に促してから自然にご退席を)」
細かいねぇ~
だからこその貴族ってか
まぁ、言う通りにしときますかね。
「それでは、伯爵様、用件も済みましたので」
「あ、ああ、今更だが、我が領を楽しんで行ってくれ給え」
「ええ、存分に」
こうして呆気なく伯爵とのお話は終わった。
あっさりし過ぎて拍子抜けもいいところである。
「ま、楽なのは良いことか」
「アシュラード様」
はい、不用意な発言はお控えします。
最近、どうにも注意されてばっかりな気がする。
プルプル
ぷるぷる
ま、いっか。
モッチー、クロ街に行こうか。
折角だしこの街特産の美味しいものを食べよう!
こうして役目を早々に終えたアシュラード一行は伯爵領を満喫するのであった。
〇 アドバンス男爵邸 深夜 〇
(ここ数日、僅かだが警戒網に穴があると思ったが、やはり、嫡男の遠出が原因か)
月明りだけが唯一の照明となった深夜、男爵邸に怪しい人影があった。
その影は慎重に、そして時には大胆に動きながら屋敷内へと踏み込んだ。
屋敷内は所々火が灯っており、見回りの兵もいたが、それでも男は目的の場所へと辿り着いた。
(ここが領主の執務室か、いかん、焦るな。冷静に、冷静にだ)
この慎重さこそ男が経験を積んできた証であり、男も自分の慎重さに限ってはそれなりに自信を持っていた。
部屋の鍵を自らの道具を用いて開錠を試みる。
それなりに手古摺ったが、カチャリと鍵の開く音がする。
男はゆっくりと音がしないように扉を押す。
そこに人が一人横向きに入れるか入れないかほどの隙間ができるとそこに体を滑り込ませ、扉を閉める。
(一先ず、ここまでは来れた。あとは、時間との勝負だな)
そうして机に手を掛けるや否やだった。
ビリビリビリ
何かが体を駆け巡る感覚を得た時には男は意識を手放していた。
男が地に倒れ伏すと、男しかいなかった筈の部屋に一匹の大狼が降り立っていた。
何を隠そうアドバンス家の主戦力、精霊狼のラルフである。
男が気を失ったのはラルフの雷魔法によるものであった。
それなりの腕前を持っていた筈の密偵だったが、相手が悪すぎた。
そして、部屋の扉が開き数名のお揃いの装束を着た者達が入って来た。
もちろんアドバンス家の裏を司る空忍たちである。
「コイツでご子息が出てってから5人目か、ホントうちって人気だよな」
「無駄口を叩くな、連れて行け」
「分かってますって」
気を失った密偵を二人がかりで担ぎ上げる。
ふと、軽口の男が口を開いた。
「それにしても中々えげつないよな。男爵家の嫡男が領外に出るから警備の主力を抜いて同行させ、屋敷の警備に解れがあるように見せ、噛み付いた獲物を釣り上げる。かぁーっ、おっかねぇや」
「いや、実際にカゲゾウさんや先代たちが抜けてるからかなり厳しいのは確かだけどな。実際、領内に入り込んでる輩の数やその内情、把握しきれてないだろ?」
それに仲間の一人が答えるが、すぐにこの集団のリーダー格がそれを叱責する。
「やはり、上役が抜けて気が緩んでるようだな、お前たち。これはしっかりと報告させてもらおう」
「うげぇ、勘弁してくださいよぉ。あの人らマジおっかねぇんすから」
空忍たちは部屋を後にする。
そして、最後に残ったリーダー格がラルフに話し掛ける。
「ラルフ殿、お疲れ様でした。今夜はもうこのような輩は来ないと思いますが、もしもの場合はよろしくお願いします」
(承知)
ラルフの返事を聞くと男は一礼して部屋から退出する。
残されたラルフは窓の外を眺める。
(主・・・)
置いて行かれたラルフ君、どうやら寂しいらしい。
とっても強いラルフであったが主の不在には弱かったようであった。
顧問がいないときの部活の乗りに近いと思うのですが、如何でしょうか。
因みにうまひは顧問が居ても居なくても気が乗らないときはサボるタイプの人です。




