第7話
お読みいただきありがとうございます。
本日もゆったりとした感じで気楽にお読みください。
そして出発の日です。
特に問題が起こることなく帰路に就けます。良かった~。
天気も良いし皆の体調も問題なし。
それではしゅっぱ~つ。
はい。テンプレです。いや、テンプレなのか?
盗賊です。王都を出て2日目の今日我々は襲われようとしています。
「折角何事もなく帰ろうと思ってたのに迷惑な輩だなぁ。あいつら捕縛したら近くの街に連れて行かなきゃいけないじゃないか」
「坊ちゃま、少々お気楽が過ぎますよ」
「いやぁ、ミッシェルちゃんも充分落ち着いて見えますがね?」
「マックスもぶつくさ言ってないで一応戦闘準備しといてね。大丈夫だとは思うけどさ」
「へーい。頼んますぜ、坊ちゃん」
そう言ってマックスも馬車を降り迎撃の布陣に加わる。
盗賊は前方から仕掛けてくる。一方向からだけだ。
いやぁ、相手がおバカさんで良かったね。楽に終わりそうだよ。
では、
「・・・・・ピットフォール」
おバカさんたちが効果範囲に入ったことを確認し、魔法を発動させる。
名前通り落とし穴です。半径10m、深さ2mの。
襲ってきてた者たちが次々とホールインワンして行ってます。
「流石です、坊ちゃま」
ミッシェルさんが手放しに褒めてくれる。ほんと俺に甘いよなぁミッシェルさん。
「坊ちゃんの魔法は相変わらずですなぁ」
褒めてるんだか貶してるんだか釈然としないマックス。
幸運にも穴に落ちなかった奴らが引き返そうとしている。此処で逃がすと面倒だから悪いけど始末させてもらう。
「ウォーターアロー」
複数の水の矢が逃げる者たちを後ろから襲う。そして地上の盗賊を殲滅すると穴に嵌った奴らを拘束してゲームセット。
そして落とし穴から拘束した野郎どもを地上に上げそのまま街へ引き連れて行く。
そんな中マックスが新人に話し掛ける。
「どうだい、うちの坊ちゃんの魔法はスゲェだろ?」
「確かにすごいですね」と冷静さに変わりないマリウス。
「すごい!すごい!」と大はしゃぎなアリサ。
「そうですね。あんな魔法見たことないです」と素直に感心しているヘレーヌとコクコク頷くラムト。
「俺より年下なのに・・・・負けられねぇ」とつぶやき闘志を燃やすキルト。
そんなことを話しているうちに近くの街に着いた。街の入口で盗賊を引き渡し、今日はこの街で一泊することになった。実況見分では護衛が壁となって時間を稼ぎながら魔法で制圧したと誤魔化しておいた。嘘を言ってるわけではないから問題はない筈だ。流石に鎧が汚れていないと疑われるので、護衛の人たちには悪いが鎧に土や軽い傷をつけてもらった。
そして一泊して懸賞金を貰ってから再びアドバンス領を目指す。それから3日後、漸く我が家に帰って来た。
まずは両親に今回の報告をする。露店での販売から新人5人のこと、終いには帰りの盗賊撃退まで。2人は俺の報告に一喜一憂しながら最後まで耳を傾ける。
「初めての旅で盗賊退治と、アッシュはやっぱり凄いね。僕たち自慢の子だよ」
「アッシュに怪我がなくて良かったわ。ほら、こちらへ」
母上に近寄ると膝の上に乗せられ、頭を撫でられる。
恥ずかしいからヤメテー。。
そんな願いもかなわず俺は思う存分撫でられた。
そんな状態で父上がいきなり爆弾発言を投下する。
「あ、それとアッシュまだ先になるけどお兄ちゃんになるからしっかりね」
あ、さいですか。
・・・・・・・・・・・・て、さらっと言うことでもないでしょうに。
全く父上は。何処か緩いんだよなぁ。
母上の妊娠はどうやら俺がアドバンス領を発って直ぐ発覚したらしい。
俺一人じゃ後々、大変だから父上、母上にはもう1人ぐらい頑張ってもらいたい。
そうだな、未来の弟や妹の為に領内に学校でも作るか。
先生は募集掛ければ集まるだろうし、あと諜報部隊育てないと今のままじゃ駄目だし、やることはまだまだあるなぁ。
だが、これも素晴らしいセカンドライフを過ごす為。頑張らねば。
そして家族3人での団らん(領地会議)は俺がおねむになるまで続いた。
我ながらこの小さい体が恨めしい。
だけどちゃんと寝とかないと背が伸びないしな。流石にちびのままは嫌ですし。
そして、翌日。俺の重機ライフが再開しました。今整地しているのは学校が建つ予定の場所です。
勝手に学校なんて建てて大丈夫なのかと思うでしょうが大丈夫。領内の子どもたちの託児所として表向きはやっていきますので。
それにしても人材が欲しい。学校の教師役、諜報部隊の長にその人員、そして内政官に兵士。何から何まで足りません。
とりあえずは、またお金を貯めて人材を買いに行かないと。
たくさんの人材を大っぴらに募集すると他領と揉め事が起きたり、どっかの隣国さんとかから探り入れられちゃうからやるなら慎重にしないといけないんだよ。あぁ、ホント面倒。
でも母上のこともあるから次に俺が王都に行けるのは早くても半年先なんだよね。
ネイガードさんに手紙書くか。
「アシュラード様帰ってらっしゃったんですね。お帰んなさい」
と声を掛けてきたのはブランドさんだった。
「ブランドさん、ただいま。鍛錬中ですか?」
ブランドさんは元AAランク冒険者でまだまだ現役でも全然おかしくない若さなのだが、改革を始めてからのテオレームを訪れた時に此処をかなり気に入ってくれたらしく、冒険者を引退して移住して来てくれたのだ。パーティを組んでいたけど、お仲間さんたちは快くパーティ脱退を受け入れてくれたらしい。
因みに冒険者のランクはGから始まりF、E、D、C、B、A、AA、AAA、Sに分けられ、AAランクだったブランドさんはかなり有名な冒険者で貴族からの勧誘もあったらしい。
そんな人がうちを気に入ってくれるなんてありがたや、ありがたや。
「まぁ、動かないと体が鈍っちまいますからね。それにしてもアシュラード様の土魔法は相変わらずですね。」
「僕なんてまだまだですよ。あ、新しく連れて来た子たちがいるんで暇があったら稽古つけてあげて下さい。お給金はちゃんと出しますんで」
「あいよ。暇なときに見ときますわ。そんじゃ頑張って下さい」
「ええ。ブランドさんも」
ブランドさんは走り去って行った。
うーん、ストイックだなぁ。それでいて親しみやすいし、顔も良い、そして強く、一定の貯蓄もある。
女性から見ると稀に見る優良物件だな。さて、彼を伴侶にするのは誰か注目せねば。
おっと、いらん事考えんで仕事しましょ。
盗賊さんが出ましたね。一瞬で出番終わりましたが。
こういう一度きりの登場人物に名前付けたり人物背景を考えて書かれる方ってすごいなと再確認したお話でした。