第63話
それでは、どうじょ(/・ω・)/
〇 ??? 〇
「ねぇ、まだ続けるの?いい加減疲れたんだけど」
その声は何処か不満気だ。
「まだよ。絶対にその機会はある筈、だからそれまでは我慢なさい」
女性の声がそれを窘める。
「でも、ね「ここでは※※様よ」・・・はいはい。※※様がそのなんとかって奴と上手くいくんだったらその流れで僕も大丈夫じゃないの?」
なおも不満を隠せない少年が何かを口に仕掛けると女性はそれを訂正させる。
その言葉が漏れてしまっては困るからだ。
「正直、私もそう思っているわ。他のは私の相手にならないだろうし」
女性の声は自身に満ち溢れている。
さもそれが当然であるかのように。
「だったら、もういいじゃないか」
女性の言葉に我慢が限界の少年の声が強く訴える。
「本当に頭はまだまだね。顔は恵まれているというのに」
「僕は顔だけじゃない!」
どうやら女性の言葉はもう一人の声の主の琴線に触れたらしい。
声だけでなくその気配からも怒りが漏れ出ている。
「静かになさい。分かってるわよ。でも折角天から与えられたんだからそれは十二分に使いなさいな。それにもし貴方がこの役目を果たしたらお父様はきっと貴方の事をお認めになるわよ?」
向けられる怒りなど全く気にした様子もなく女性の声は駄々をこねる幼子に言い聞かせるが如く語り掛ける。
「分かってるさ」
少しは血の気も落ち着いたのか、憮然とした声色で短い返事が返って来る。
「なら良いのよ。でも、難しいと思ったらすぐに引きなさい。良いわね?」
「なんで?」
理解できないとばかりに少年の声は聴き返す。
それに一つ溜息をついてから女性の声が説明する。
「無理矢理迫ったりしてそれが明るみに出たら、私の話まで消えるかもしれないじゃない。それぐらい分かるわよね?」
暗に「こんなことも分からないの?」と言ったニュアンスが含まれている。
こんな言い方をされて腹立たしさを覚える少年であったが、教えてもらった立場で文句を言える筈もない。
「分かってる!」
「それじゃあ、目立たない様にしてなさい。決して先走るんじゃないわよ?」
決して私の邪魔をしないでと言わんばかりに女性の声は最後の釘を刺す。
ただ、哀れかな。この会話がこの2つの声以外の存在に筒抜けになっている事に2つの声の主たちは終ぞ気付くことは無かった。
□■□■
今日は自由日程でござい。
要は何して過ごしても宜しいという一種の休養日です。
まぁ、ずっと気を張ってるのも疲れるだろうし丁度良いんじゃないでしょうか?
てか、
「父上、これはいつまで続くのですか?」
ぼくちゃんの疑問は尤もだと思うのです。
変則的な1対3での顔合わせ、それが連日、終わりが見えないです。
「いやぁ、僕としては三家公平に機会を作ろうと思ったらこうなっちゃってね。どうしたら良いかな?」
父上笑顔で言う事じゃないと思います。
普通は計画をちゃんと立ててやるべきではないかと思うのですよ。
で、正直自分も良い考えは何も浮かびません。
なんてったって初めてですからね!
まぁ、ここは母上にサポートしてもらいましょう。
「父上、母上に助言をお願いして見れば如何でしょうか」
「マリーにか。確かにそれもアリだね!」
溺れる父は母をも掴む。これだと母上を卑下しちゃってるから違うか。
まぁ、何が言いたいかというと、こういったプライドの低さが父上の好ましい所であり、頼りない所でもある、ということです。
帯に短し襷に長し?一長一短?違うか。慣れない言葉は使うもんじゃないね。
何にしろ両親の仲が良いことは善き哉善き哉。
そして母上を呼び、更に家令のマクネスさん(※第9話)、カゲゾウに果てはダンジョウまで巻き込みああでもない、こうでもないと白熱した議論が展開された。
アッシュ君は10分でフェードアウトしました。
家の話とか小難しい話はされても分かりません。
手持ち無沙汰だったのでモッチーやクロと戯れてました。ああ、心のオアシス。
・・・・・・
「では、3人のご令嬢とそれぞれ一日ずつ過ごし、それが終わり次第それぞれの領地に帰す方向で」
どうやら漸く決まったらしい。
長かったな~モッチー、クロ?
プルプル
ぷるぷる
え?たくさん遊べて楽しかった?
愛い奴らめ。よしよし。
「当の本人が聞いてないってのは納得いかねぇんですが、そこんとこどうなんです?」
「アッシュ、君のことで話してるんだからね?」
「・・・ごめんなさい」
あれ?
これって俺が悪いんですかね?
あ、なんでもないっす。大変失礼しました。
プルプル
ぷるる
自分たちのせいでごめんなさい?
いや、モッチー達はなんも悪くないからね。
可愛いのぅ。
「ダメだこりゃ」
何か聞えた気がしたけど気のせいでしょう。
うん、そうに違いない!
◇◇◇
そして、翌日。
「お待たせしました?」
「いえいえ、全然」
人生初のでぇぃとです。お相手はパツキン美少女アンジェラたん。
意味?逢引だよ。
おい、何笑ってんだ。
キモいってなんだ。まだまだ十代ピチピチだっつの。
こちとら日頃から彼女が出来たらこんな事したいななんてのを逞しく考えとんじゃボケェ!
「?」
いかんいかん。
俺の中の荒ぶる魂が闇に呑まれ掛けたぜ全く。
ここは真摯にそしてがっつかずにジェントルマンで行くところだ。
ほな、いくでぇ~
Q.お洋服の店は?
A.お貴族様が好むようなお高い店はうちには御座いません。
Q.ジュエリーショップ(意訳)は?
A.そんなもんうちに以下略
こんなやりとり繰り返してたら雰囲気が何処となく重たくなってしまいました。
うん、これは仕様がない。いくら発展したといっても所詮男爵領は男爵領ですからね。
それにしてもこの子からは浪費の香りが。
あれは懐かしい社会人2年目の頃大変お世話になっていたリバーサイドのカリンちゃん(当時23歳)を彷彿とさせる、いやなんでもありません。失礼致しました。
しかし、会話は続けてくれるからモテない男児からするとこれは助かる。高評価だ持ってけドロボー!
他の会話の内容も至って普通。
1対3お茶会の時と同じく豊富な話題を用いた我が家への探り。
慣れるとこれはこれで面白い。
さりげな~く繰り出される追求のジャブを社会人スキル微笑みのウェービングで紙一重に躱していく。
今の気持ちはデンプシーロール(笑)
あとは家族についてぐらいだった。
女の子という存在はやはり小さいもの、幼いものに興味が湧くらしい。
頻りにイリスについて聞いて来た。
お兄ちゃんもイリスに嫌われたくないから答えてよさそうなものだけお答えしました。
そして一日が終わりました。
でぇーと2日目、お相手は内気な前髪っ子ミリカ嬢。
うん、頑張ってくれてるんだが、会話が続かない。
ミリカ嬢の興味のある話題(主に本)→僕ちゃん付き合えない。
僕ちゃんの興味のある話題(飯、魔法)→ミリカ嬢ついていけない。
このままじゃ暗い感じになるのも嫌だったので本の虫マリウスを紹介することに。
なんか静かに熱く談義してた。ワイ空気。なんでや(´・ω・`)
そのままでぇーと2日目終了。
でぇーと3日目強気赤髪美女フローレット嬢。
3人の中で一番の鬼門かと思われたでーと、正に地獄でしたね。
デート序盤、話を振る、「ああ」「違う」の一言返答シリーズ地獄。
食事中、無言地獄。
うちの領の兵士たちに混ざっての訓練、ひたすら相対地獄。
マジで剣の腕半端ねぇっす。
「シュッ」とか風を切る音がしてましたもん。
いくら刃を潰してるからってあれ喰らったら重症間違いなしですって。
で、避け続ける私にフラストレーションが徐々に貯まっていったのかどんどんスピードが上がって行くしでそりゃあ大変でしたとも。
そして何を思ったのかお見合い後もここの鍛錬に混ざりたいとか言い出す始末でとても疲れました。
一応、お預かりしてるお嬢さんですからね。まぁ、鍛錬に入れちゃってる時点で結構な問題ではあるんですけど。
なんとか宥めまして、ラスワン男爵の許可を貰ってからにというところに落ち着きました。
そんなでしたが、鍛錬後にふと見せた微笑はすごく魅力的だったと言っておきましょう。
これにて無事、第1回アシュラードお嫁さんになってくだ杯の全日程が終了しました。
しかし、そうは問屋が卸すまいと厄介事が顔を覗かせるのです。
それが起きたのは夜のことでした。
ス、ストックががが
恐らく来週は大丈夫だと思いますが。
(´・ω・`)ホへェ




