第59話
ちょこっとおさらい
教国とやらのお偉いさんが食い物目当てにやって来た。
バトル展開なのに主人公空気。
やっぱり後ろには欲望の権化(神)の影が。
今回から違うお話になっております。
あれ?おさらいの意味とは・・・
気にせずにどうじょ(/・ω・)/
「父上、もう一度仰っていただけますか?」
「ああ、いいよ。アッシュ、君当てにお見合いの話が来た。それも3つだ」
・・・・・・・・
ひゃっほーーーーーーー
祭りじゃ祭りじゃあ!!
苦節13(+40)年。遂に私に春が来た!
えらいこっちゃえらいこっちゃよいよいよいよい!
「ご領主、そりゃあ新手の詐欺かなんかじゃないのですかい?」
黙れマックス、物言わぬ泥人形にしてやろうか?
「坊ちゃん、目がやべぇですって。落ち着いてくださいよ」
「アッシュ、落ち着いて」
ふん!綺麗なお嫁さんが居る人たちには分からんでしょうなぁ。
初めて生を受けてから(前世を含めて)早50と数年。
そんな長い期間生きて来て誰からも好意を寄せられることのなかった可哀想な人生など。
学生時代は迸るパトスを気味悪がられ、社会人になれば会社仲間ぐらいでしか異性と交流出来ず。
だが!
そんな悲しい人生とはもうオサラバよ!
ガハハハハハ
「ご領主、ありゃあ重傷じゃねぇですかい?」
「う、まぁ、仕方ないよ。なんせ・・・
ん?
何か2人でヒソヒソしてるが、まあいいや。
僕は今ならどんなことをされても許せるほどの慈愛に満ちているのだから!
「ごほん!アッシュ話の続きを良いかい?」
「はい、どうぞ父上」
(今まで見たことない笑顔だ。若干崩れてるし、これが破顔か。アッシュ・・・少し気味が悪いよ)
今、私アシュラードは人生最高の笑みを浮かべている筈。
なのに何故か父上は口元をひくつかせていた。
「それで今回はその三家の相手と会ってもらうことになる」
「顔合わせと言う事でしょうか?」
「そうだね。実際に話してみて、もし、アッシュが良いと思う人が居れば、そのまま話は進んで行くことになると思う」
おお~
なんか現実感が出て来たな。
「ただ、相手のご令嬢が男爵家の害になりそうだったり、アッシュを気に入らなければお流れになるからそれだけは覚えておいてね?」
ぐっ、前者は仕方ないとして、後者の場合アッシュ君のライフポイントが0を超えてマイナスの域に達しそうだな。
「坊ちゃん、ビシッと決めて逝っちゃってください!」
おう、任せとけ
って「いっちゃって」に何か違和感を覚えたんだが気のせいかな?
おっと、聴き忘れてた。
「父上、そのお三方はそれぞれどちらのお家で?」
「えーっと、伯爵家、子爵家、男爵家だね。あ、相手の家柄は気にしなくて良いよ。これまでにも散々断って来てるからね」
そうだよなぁ
明らかに格上のお家からの縁談ブチりまくってたもんなぁ
お爺様からは「よくやった!」って言われたけど。
まぁ、孫は偉大というやつですな。
「なるほど。それで肝心の顔合わせはいつ頃になりますか?」
「一応だけど、向こうへの返答とか準備も含めて三月後くらいかな」
三か月先か。
ちょっとランニングでもしようかな。
〇 イリス 〇
最近、兄様が怪しいの!
なんだかソワソワしてるの!
「~♪」
かと思えば今みたいに料理しながら鼻歌歌ってるし。
これは要観察なの!
行くわよ、オルトー
◇◇◇
兄様はお仕事をはじめたわ。
やっぱり機嫌は良さそうなの!
「姉上~、もうやめようよ~」
ったく、オルトーは弱気なんだから
そんなんじゃ父様みたいになれないわよ?
あ、こっちに来る!隠れなきゃ!
「あ~、いつもより早く終わったと思ったら鍛錬か~、嫌だな~」
「アシュラード様、ウダウダ言わずに行きますよ?」
「は~い」
ふぅ~。何とかバレなかったわね。
それにしても兄様相変わらず鍛錬が嫌みたいね。
けど、私は見逃さない!
兄様はせいむが早く終わるといつもなら鍛錬までの時間を引き延ばそうとするもの!
やっぱり変。
観察を続けなきゃ!
ほら、オルトーついて来て。
◇◇◇
「てやっ!シッ!シッ!」
「まだ甘い!」
兄様が稽古をしてるの。
相手はライゼンなの!
兄様がいっぱいやるんだけど、ライゼンには全然なの!
ライゼンはやっぱり強いの!
兄様は何度も転がってるの。
へとへとなの。
でもね、この時の真剣な兄様はいつもより少しだけ格好いいの!
「だから甘いと言っておるだろうが!!」
ブオン!!
バシン!!
「グヘ~~~」
やっぱり格好悪かったの。
「うわ~、すごいな~」
オルトーはこの鍛錬を見るのが好きなの。
大人しいけどやっぱり男の子ね!
でも、兄様は鍛錬をするのも嫌いだし、見るのも興味ないって言ってたの。
兄様は怠け者なんだから!
でも、その兄様が今まで真面目にやってるの!
いつもなら「じどうぎゃくたい」とか「こどものじんけん」とか叫んでるんだけど最近は一回も言ってないの。
やっぱり兄様変なの。
父様に聞いてみようかな。
〇 ラクトル 〇
「だから兄様が変なの!」
イリスが僕を訪ねて来たと思ったらアッシュの様子が変だって言うんだ。
妹ってのはよく見てるよ、全く。
それにしても、テキパキ仕事片付けて、真面目に鍛錬してるのにそれが変ってアッシュ、もしかすると君は愛妹に駄目兄認定されてるかもよ?
と言うかここ最近のアッシュの変わりっぷりは確かに目に付くからね。
なんて言うか、そう!活力が溢れているって感じかな。
じゃあこれまではどうだったんだってなるけど、所々何と言うかおっさんっぽかったんだよな~
まぁ、それが完全に消えたって訳じゃないけど、幾分かマシにはなったよね。
とりあえず、イリスにはどう説明すればいいんだろうか。
本人が知らない所で色々と散々なアシュラードであった。
「へっくしゅん!」
「相対中にくしゃみとは、たるんでるぞ!」
ドガン!!
「グへェ~」
知らぬは本人ばかり
なんとも不憫であった
◇◇◇
そしてあっという間に月日は流れ、遂に顔合わせの日がやって来た。
なんとしてもこの機会を活かしたい者、全く興味を持っていない者、何を考えているか全く読めない者、各々が内にそれぞれ異なる思いを抱きながら一人の異性を待ち続ける。
そんな中アシュラードと言えば、
「うー、ドキドキするぅ~」
それなりに緊張していた。
人生初のお見合いである。無理もない。
しかも1対3の変則的な形式。
「坊ちゃん、あんまり考え過ぎない事ですぜ?どうせ頑張ったって駄目な時は駄目なんすから」
「マックス、お嬢様方がお帰りになったら奥さんに報告して試作中の魔法の実験に付き合ってもらうからね?これ、強制だから」
揶揄うつもりが藪蛇になってしまったマックスが情けない悲鳴を上げる。
この点においては何時になっても学習しない男であった。
ラクトルはそんな部下を慰めつつ、息子を促す。
「はいはい、そのくらいにね。それじゃあアッシュ、行くよ?」
「ふい~、はい、参りましょう、父上」
軽く一呼吸入れて、(ご)じゅう3歳の少年は扉に向かって歩き始める。
この先に自分の伴侶になるかもしれない人物が居る。
少年の心音は今までになく大きなものとなっていた。
(どんな人たちなんだろう)
アッシュ、人生初のお見合いが今始まる。
彼に待っているのは待望の春か、それとも変わらぬ極寒の冬か。
「俺はいつも通りに」
「私も」
「おいらも!」
「これじゃあ賭けになんねえよ」
その行方は神も食べ物を片手に酒を呑んで見守っているのであった。
もし、この会話が聞こえていたならアシュラードはより一層神々に苛立ちを覚えたことだろう。
神とはやはり奔放で俗物な存在であった。
間が空いてしまいましたが、これからぼちぼちやって行きます。
といってもストックも心許ないので週一更新を目標にやって行ければと思います。
至らない生焼け餃子ですが、何卒よろしくお願いします。
そして、漸くやって参りました。
ヒロイン(仮)たち。
主人公に春はやって来るのか?
「遅れて来たヒロイン」タグを作者は付けることは出来るのか!?
これから繰り広げられるであろう茶番にお付き合いいただけると幸いです。




