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第54話

 では、どうじょ(/・ω・)/

 


 ワイワイガヤガヤドンドンパフパフ~

 へいらっしゃい!!おいし~串焼きだよ~安いよ~

 フロンテルム名物オコノミ焼きだよ~食べたことのない人は是非ともウチへ!!うまいよ~!!

 立ち並ぶ屋台や料理店からは元気良く店員の声が響き渡る。


 

 フロンテルムは現在とても混雑しております。

 あ、そこの奥さん!お子さんの手は離さない様に!

 おい、そこの冒険者食べ歩きはまぁ良いが、ゴミをその辺にぽいしてんじゃねぇぞ!!

 え?君、迷子?じゃあ、案内所に行くから一緒においで。


 

 本日から我が領ではフロンテルム杯が行われるんです。

 忘れた?相撲大会ですよ。

 それの実行委員的な奴で只今私、ボランティアしてます。

 何故そんな事をって?人手が足りないんです。

 使える物は次期領主でも使うんですよ。


 因みにこの後はイリスとオルトーと一緒に美味い店巡りをしようと約束してるのです。

 楽しみだなぁ。



 そんな大忙しの相撲大会ですが、かなり大きな規模になってます。

 今では年齢別に細分された14歳までの子どもの部

 そして15歳~19歳までの青年の部

 そして無差別級。

 これを男女に分けて行うのです。


 無差別級ですが1日目は女性、2日目は男性で予選が行われ、そこから抽選で本選の組み合わせを決めます。3日目は女性の本選、4日目は男性の本選が行われるのです。


 青年の部は体がしっかり出来ていない若者の為に作りました。

 現代なら中高生の年齢ですからね。大人に挑むのは早いってことです。


 無差別級開始の前々日に子どもの部が、前日に青年の部が行われます。因みに子どもの部、青年の部は領民限定です。

 日程は3つの部を合わせて6日間、ちょうどこの世界での1週間を掛けて行われます。

 今日はその6日目で男性の無差別級本選が行われるのですが、人の多いこと多いこと。



 そして僕ちゃんは親御さんとはぐれてしまった女の子を仮設の案内所に連れて行ってる所です。


 「今日はお父さんと来たの?」


 「お母さんとお兄ちゃんも一緒なの」


 「そうなのか~、それじゃあ早くみんなに会わなきゃね?」


 「うん・・・」


 いかんぞ。逆に家族を思い出させて心細くさせてしまいまちた。

 これはどうにかして挽回せねば!

 う~む、おっと。


 繋いでいた手が急に動かなくなったので、ふと見やると、少女はあるお店を見つめていた。

 店の名は<お菓子畑>。ここは確か、スイーツや甘味を取り扱っているお店で女性から絶大な人気を誇っていたと記憶している。事実、店の前には若い女性たちが列を成して並んでいる。


 「ここに行きたいの?」


 「えっとね、このお店にね、みんなで行こうねって言ってたの」


 少女は更にシュンとしてしまった

 いかん、どんどん地雷を踏み抜いてる。

 モテない男に女子のエスコートはさせちゃあかんですよ!

 自分で言ってて悲しくなるけど。

 しゃーない、折角うちに来てもらったんだから楽しんで帰って貰わないとな。

 となると、


 「カゲゾウ、ちょっと」


 「はい、その娘の家族ですね?現在、情報を集めていますのでどうぞご自由に」


 見事な段取りの良さ。

 出来る男だな、ホント。

 部下が優秀だと上は楽だよね。確認だけで済むんだから。


 「じゃあ、これからモーイの館に行くから、ご家族見つけたらそっちに誘導してもらえる?」


 「御意」


 カゲゾウはそう言うと消えてしまいました。

 忍者って何でもありだよなぁ。


 そして少女は目の前に突然現れた人が突然消えて目を白黒させている。


 「ああ、吃驚させちゃったかな?ごめんよ。それで、さっきのおじさんが今君のお父さん達を呼びに行ってるんだけど、待ってる間に美味しい物食べたくない?」


 何か不審者っぽいよなぁ、と思いながら尋ねてみる。

 少女は不安と期待が入り混じった複雑そうな表情をしている。

 

 「えっとね、美味しいもの食べたいの。でもね、お金ないの」


 「それなら、安心して?お兄ちゃんが力ずkゲフンゲフンお願いしたら、どうにかなるから。お父さん達が来たらそこで一緒に美味しい物食べたら良いし、どう?」


 この子小さいのにしっかりしてるわぁと感心を覚えながら再度お誘いしてみる。

 くどいけど不審者じゃないからね、私?


 「じゃあ、行きたいの」


 悩んでるようだったけど、しっかりとしたお返事いただきました!

 それではお嬢様、貴方に食の素晴らしさ、是非ともご賞味して頂きましょう。



 ◇◇◇



 それから、女の子を連れてやって来ました、モーイの館。

 大人気店なので、列がとんでもないことになってますね。

 しか~し、ここで私、権力使わせて頂きます。裏口からこっそ~りと。


 生憎、座席は埋まっているので、従業員スペースでの食事になります。

 現場のリーダーさんに無理を言ってちょっとした料理を出してもらいました。ごめんよ、手当付けとくからさ。

 そして出て来たのはクッキーとミルクです。

 少女の目が凄くキラキラしてます。お腹も減ってたのか口元からは少し涎も見え隠れしてます。

 目の前でお預けは可哀想でしたので、「どうぞ」と言ったのですが、勢いよく頬張り始めてお兄さん吃驚です。

 てか勢い付け過ぎて喉詰まらせちゃってます。ほら、ミルク飲みな。

 


 「ゴクゴク・・・ぷはぁ。こんなに美味しいの食べたことないの!」


 「そうか。それは良かったよ」


 喜んでもらえて何よりです。

 ワイも一枚、と思ったけど女の子が「あっ」て顔になったから「どうぞ」って言ってあげました。

 ちっちゃい子にはどうしても弱いんですよね。


 そうこうしてるうちに、ご家族がやって来ました。

 両親の元へ走って行く姿を見るとやっぱり寂しかったんだろうなとしみじみ思いました。


 うん、やっぱり子どもの笑顔は素晴らしいですね。

 女の子のお兄ちゃんも態々頭を下げてくれました。年齢は俺よりちょっと上ぐらいかな?礼儀正しい好青年でした。

 

 その後は、ワテの空間収納にある食材を使って、色々な料理を振る舞いました。

 お父さんは餃子を気に入ってくれた様でエールと一緒にパクついてました。

 お母さんはモーイと鶏肉のシチューに嵌ってました。

 お兄さんはガッツリ豚カツを貪ってました。それにしても米が欲しい。

 そして女の子は食後のケーキに大喜びしてました。


 4人家族は楽しそうに帰って行きました。

 いやぁ、良かった良かった。


 

 「アシュラード様、イリス様とオルトー様とのお約束の時間が過ぎております。お急ぎになられた方が宜しいかと」


 やばっ

 すっかり忘れてた!!

 

 今日は大会最終日で父上と母上が自由に動けないから、仕事を早めに切り終えて美味しい物を食べに行こうと言う約束をしてました、が現在、約束の時刻を2時間近くオーバーしてます。

 

 「マズイ!!カゲゾウ、2人は何処に!?」


 「アリサが代わりに相手をしてくれております。近くの店ですので行きましょう」



 急いで行きました。

 そりゃもう全速力で。


 「悪い!2人とも、遅くなった!」


 「兄様が仕事してるから許してあげてってアリサ姉様が言ってたから特別だからね!」

 「僕も!アリサお姉ちゃんが一緒に居てくれたから大丈夫!」


 神様仏様アリサ様~

 ナンマンダブナンマンダブありがたや~


 「いえ、アシュラード様が迷子の子の面倒を看ていると連絡があったので。それに私もお2人と楽しく過ごさせて頂きました」


 アリサは本当に良いメイドになったよなぁ

 これならネイガードさんの所でもやっていけるだろう。


 「で・も!」


 何だいイリス?


 「兄様が約束を破ったのは事実!だから・・・



 その後、祭りでにぎわう街中を楽しそうに歩く3人の兄妹たちをたくさんの人が目にした。

 恐らくその長男であろう少年が妹と弟の要望に応え、奮闘する姿がそこにはあった。

 しかし、3人の表情は皆飛び切りの笑顔であったと言う。



 次話以降も間がそれなりに空くかと思いますが、皆さんどうぞよろしくお願いします。

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