閑話 ラルフ君の1日
タイトル通りラルフ君の1日です。
短めです。
感想で頂いたご意見を基に書いてみました。あーうぃんさんありがとうございます<m(__)m>
伏線とかは張れていないいつものうまひクオリティですので悪しからず~
それではどうじょ(/・ω・)/
※2016 9/20 大幅に書き足しました。
暗い森の中、1匹の狼がいました。
彼はいつの間にか森にいました。
彼は親の顔を知りません。親が本当にいたのかも定かではありません。
ですが、彼はそんなこと気になりませんでした。
彼の目の前には生き物がいました。ゴブリンと呼ばれる魔物でなんと6匹もいました。
小さい狼を良い餌と思ったのでしょう。しかし、その見立ては不十分だったのです。
狼は瞬時にゴブリンの後ろに回り込み1匹の喉元を後ろから前足で一閃しました。
無防備だったゴブリンの首は飛び、血飛沫がシャワーの様に辺りに降り注ぎます。
それからしばらくしないうちに残りのゴブリンも息をしなくなり、最後まで立っていたのは小さい狼だけでした。
それから狼は森で生活しました。
1匹の子狼を狙って多くの魔物が襲って来ました。
ですが、襲って来る敵を軽々と蹴散らしているうちに狼の周囲には敵が来なくなりました。
そして狼は森のトップに君臨したのです。
狼自身はその事に何も思いませんでした。自分が強いことは当然。それぐらいの認識でした。
それからしばらくして森が騒がしくなっていることに気が付きました。
そして何やら不思議で抗いがたい匂いがしました。狼にとってこんな事は初めてでした。
森の外へ出てみるとたくさんの生き物が戦っていました。
その中の1匹に気になる匂いの元を見つけました。
それは自分より小さい生き物でしたが、自分に対して敵意も恐怖も向けませんでした。
その目は自分の事を興味深げに見ていました。今まで向けられたことのない目でした。不思議でした。
狼はこの生き物の事がとても気になりました。
生まれ育った森にも未練はありません。だから、彼はこの不思議な奴に付いて行くことにしました。
ラルフ君は目を開けます。懐かしい夢を見ていた気がします。
窓からは日の光が差し込んで起きる時間が来ていることを教えてくれます。
彼の横には大好きな主が眠っています。
主の口元にはだらしなく涎が垂れています。
ですが、そんなことラルフ君は気にしません。
彼は自分を笑いながら撫でてくれる主が大好きだからです。
こうやって、主より早く起きて、主の顔を見るのがラルフ君の日課でもあります。
プルプル
ぷるぷる
モッチーとクロが「おはよう」と挨拶して来ました。
(おはよう)
ラルフ君ちゃんと返事をします。
この3匹の仲はとても良好なようです。
ゴーンゴーン
鐘の音が領内に響きます。
これは朝の音と呼ばれるもので毎朝決められた時刻に鳴らされます。
「う~ん」
ラルフ君の主はまだおねむのようです。
「アシュラード様、ご起床の時間です」
侍女が起こしに来たようです。
なので、ラルフ君たちはご主人を起こそうと鼻先や触手で突きます。
(主、起きる)
念話もだいぶ慣れました。
ただ、やはり人の言葉で伝えるのは難しくどうしても片言になってしまいます。
「んあ?ああ、おふぁよ~」
主が目を覚ましました。
しまりのない朝の挨拶ですがこれもいつものことです。
それから朝の一撫でをしてもらいます。
この時間はラルフ君とスライム達にとって大切な時間です。
一頻り撫で終ると少年は着替えて3匹と一緒に朝食に向かいます。
朝食の時間は主一家と共に取ります。
モッチーとクロはそれぞれ主の大切な妹君と弟君の膝の上です。
ラルフ君は主の傍で朝食をいただきます。
ラルフ君は鶏の唐揚げが好きでたくさん食べます。
ですが、汚く食い散らかしたりはしません。1個ずつ皿から溢さない様ちゃんと咀嚼して食べています。
彼はマナーが守れる精霊狼エレメンタルウルフなのです。
ですが、そんな彼にも苦手なものがあります。
その名はイエロービーンズ。黄色い豆です。
ラルフ君どうもあのプチプチした食感と甘さが苦手なようです。
ですがラルフ君は位の高い魔物です。嫌いなものを避けるのは誇り高くないと考えています。
なので、彼はイエロービーンズの食べ方を研究し、ある方法を思いつきました。
それは「好きな物と一緒にまとめて食べる」という作戦です。
彼は大好物の唐揚げとイエロービーンズを一か所に集めそれを一気に頬張ります。
そして咀嚼もほどほどにそれらを呑み込むのです。
食べ終わると、主は偉いね言ってと褒めてくれます。
これがあるからラルフ君は嫌いな物も頑張って食べられるのです。
食事が終わるとラルフ君は主と別れます。
主は机に座ってお仕事をするのだそうです。
残念ながらラルフ君にはお手伝いできないので、モッチー、クロと共に主の妹君と弟君の面倒を看ます。
彼女たちはラルフ君たちにとても好意的です。
長女のイリスはラルフ君をモフモフするのが大好きで、次男のオルトーはモッチーやクロの質感がお気に入りです。そして彼等は触られるだけでなく、一緒に遊びもします。
トランプと言う札を使った遊びで遊ぶのです。
賢いラルフ君たちはちゃんとルールを理解できるのです。
因みにこの中で一番トランプが強いのはクロです。次点はラルフ、3番手はモッチー。続く4番手はオルトーでダントツで弱いのがイリスです。
しかし、魔物達は気遣いが出来るので、適度に負けています。
イリスはそれに気付くことは無く、楽しく遊んでいます。
もしかすると彼等は保育士さんとしても優秀な人材かもしれません。
そんなラルフ君ですが、この触れ合いも悪くないなと思っています。
恐怖ではなく好意を向けられるのはラルフ君もやっぱり嬉しいようです。
2人の相手が終わり、主を探しに行こうとしていると不意にある存在を感知しました。
ラルフは君途轍もない速さでその場所まで駆け抜けます。
ラルフ君が足を止めた先には領内の兵士でもない輩が男爵邸内の様子を窺っていました。
ラルフ君は主の害になりそうな存在には容赦しません。
あっという間に後ろへ回り電撃で気絶させ、捕獲してしまいました。徒に命を奪ったりはしません。殺してしまっては情報を得られず主が困ってしまうからです。それに安易に敵を殺すとラルフが危険視されるから、と主は言っていました。
その怪しい輩を咥えて彼は兵士の元へ行きます。
そして兵士の足元に放り投げるとまた戻って行きます。
彼は主とその家族にしか極力近寄ろうとしません。
警戒ではなくどちらかと言うと身内に入っていないからとの基準からです。
ですが、そんな彼にも例外はあります。それは子どもです。彼等の純粋な目はラルフ君ですら抗えないのです。
さて、お昼を過ぎると主の鍛錬が始まりました。
ラルフ君はそれを見学しています。
主は竜人と老人に厳しく鍛えられています。
あの者達はラルフ君から見ても強い部類の存在です。なので、正直自分も闘いたくてうずうずする時が多々あります。
ですがラルフ君は自制の出来る狼です。決して乱入したりしません。尻尾はブンブン振られていますが、決して誘惑には負けないのです。
すると竜人がラルフ君を呼びました。
「ラルフ殿、少し参加してもらえないだろうか?」
偶にこの様なお誘いもあるのです。ラルフ君は無表情を装って、声の主の元へ歩み寄ります。尻尾がブンブン振られ、喜んでいるのは一目瞭然です。しかし、皆良い大人なのでそこには触れません。
「では、こやつに軽く攻撃を仕掛けて欲しい。攻撃の威力はいつも通り手を当てるぐらいの強さでお願いしたい」
(分かった)
ラルフ君の目の前には笑っているのか泣きそうなのかよく分からない顔の主がいました。
ラルフ君は主と一緒に鍛錬が出来ると嬉しそうです。
因みにモッチーとクロは他の兵士達と組手をやっています。もちろん指導する側で。
彼等は一体何を目指しているのでしょうか。
「ラルフ・・・・お手柔らかに頼むよ」
(主、任せて、頑張る)
微妙に話が噛み合っていないのですが、仕方ありません。
ラルフ君は主の為に一生懸命なのです。決して仮にでも戦闘が出来るから大喜びしている訳ではないのです。主はまだどちらかと言うと弱い部類に入ります。野生を経験しているラルフ君からすると弱さは死を招くと言う事がよく分かっています。ラルフ君は主に怪我をして欲しくありません。ですので出来る限り全力で相手をして主に強くなって欲しいのです。
そしてそんなラルフ君の思いから出た言葉を聞いた主は何か諦めたようです。
それが決して生に対する執着でないこと祈るばかりであります。
その後の鍛錬について一方は主と鍛錬が出来て満足気で、一方はへとへとで立っていられなかった、とだけ言っておきましょう。
屋敷への帰りはラルフ君が主を背負って戻りました。
鍛錬後、夕飯を食べると主と一緒に湯浴みに向かいます。
主の少年が発案し、男爵領に住むドワーフの職人が作り上げたお風呂。
ここに湯を沸かし、一日の汚れを落とし、疲れを癒すのです。
ラルフ君はこのお風呂の時間も大好きです。
何故なら主が丁寧に洗ってくれるからです。
一緒に湯船に浸かるのも好きですが、やっぱり体を洗われるのが一番のお気に入りです。
仲間のモッチーやクロも同意見の様です。
風呂から上がるとラルフ君は布で水気を拭いてもらえます。
これもまた彼のお気に入りです。自分で水気を飛ばすことも出来るのですが、主に拭いてもらう事を覚えてからラルフ君は風呂上りはいつも拭いてもらっています。
スライム達は拭く必要がないので羨ましそうです。
この事に関しては少し特別な感じがして、鼻が高いラルフ君でありました。
浴室を後にし主の部屋に戻るとまた触れ合いタイムが始まります。
スライム達はひたすらモミモミ天国、ラルフ君はブラッシング天国です。
これは主の私欲によるところが大きいのですが、される側が喜んでいるので如何とも言い難いのです。
この間中、主は笑顔で幸せそうです。
そしていつの間にか
「すぅー、すぅー」
少年は睡魔に夢の世界へ導かれてしまっていました。
ラルフ君はもっと撫でてもらいたかったのですが、疲れている主を無理に起したりはしません。
風邪を引いてはいけないので布団を咥えて上手に少年に掛けてあげます。
プルプル!
ぷる!
(分かった、我、三番)
3匹は夜の番の順番を決めます。
魔物と言えど睡眠はやはり必要なのです。
けれど、人間よりは必要な量は少ないです。
だからこその交代制での見張りでもあります。
かなり贅沢な護衛であることは間違いないでしょう。
そして部屋の明かりが消え、少年の部屋には夜が訪れます。
目を瞑る前にラルフ君は大好きな主の顔を眺めます。
安らかに寝息を立てる主の顔を見るとラルフ君はとても心が温かくなります。
(おやすみなさい)
こうしてラルフ君の1日は終わるのです。
平和で穏やかで何物にも代え難い幸せがそこにはありました。




