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第47話



 「うわぁ人がたくさんだ。すんごい熱気だよ」


 「アシュラード様、周囲に気を取られて逸れない様お願いします」


 マリウス君が完全に僕を子ども扱いです。

 まぁ、確かに13歳だから十分子どもだけどさ、何か釈然としません。

 前世(?)含めたら53歳なんですけどね?おかしいなぁ


 「主。あそこからうまそうな匂いがするぜ?」


 「えっ?何処何処?」


 キルトは犬の獣人だから鼻が良い。

 その嗅覚で外出の際は美味い物をよく見つけて来る。

 

 「ふぉっふぉっふぉ。うまいのう」


 おい、爺さん。何ちゃっかり食ってんだよ。

 アンタ護衛だろ。仕事しろ、仕事。

 マックス以上に油断も隙もないな。


 

 こんなふざけた我々一団がいるのは王都が誇る闘技場です。

 人がごった返して、まぁ大変。

 貴族用の貴賓席に行けばこんな思いもしなくて済むんだろうけど、父上居ませんし、何よりアレな貴族さん達と一緒になんて、例え金を貰えたとしてもこっちから御断りです。

 それに人混みはそんなに好きじゃないけど、親しい人と一緒にワイワイするのは嫌いじゃないしね。

 ただ、


 「こわ~い雰囲気の方も紛れてるね」


 「ほぉ、分かるかの?」


 そりゃあ、こんなお祭り騒ぎの中、怖い顔してたり、全く感情の無い顔してりゃ嫌でも分かる。

 ああいうのは三流だと個人的には思う。僕ちゃんに違和感持たれちゃってる時点でアウトですよ。


 「ふぉっふぉっふぉ。少しは成長しとるようで安心じゃ」


 いやぁ、出来ることならそんな成長したくなかったです。

 確かに転生前はチート!ワクワク!!だったけど、実際は貴族めんどくせーだったり鍛錬つらい~とかマイナス面ばかり見えて来てうんざりしてます。

 慣れって残酷です。あの気持ちを返して欲しいです。

 


 とりあえず座席を確保して、開会式を待つのです。

 その間は屋台で買ったものを食べて繋ぐのです。


 「モッチー、クロ、うまいか?」


 プル!

 ぷる!


 あぁ、かわええんじゃあ。なんてぷりちーなんじゃあ。

 美味しそうでこっちとしても何よりです。

 ん?視線を感じる。


 周りを見ると、小さい子から厳ついおっさんまで様々な人が注目してました。

 どうしたんだい?

 あ、この2人(?)ですかい?可愛いよね?

 いや、女性達の視線の多くはマリウスとキルトに行ってるな。

 その2人は慣れたもので全く気にしていない。マリウスは読書してるし、キルトに至っては食べ物に夢中で気付いてないな。


 (周りがイケメンばっかって・・・ドンマイ(≧▽≦)!)

 (強くあれ)

 (まぁ、これが現実だよね~)

 (男性は顔だけじゃありませんよ?気を落とさないで下さいね)


 この方々、このネタになると毎回出て来るよな。

 つか,最後の方、フォローの様に見えてあまりフォローになってませんぜ?;つД`)


 いかんですな。

 切り替えましょう。

 僕たちは一体何を観に来たんだ?そう!交流戦だ!


 ないすなタイミングで開会式のようです。

 代表の学生たちが出て来ます。


 え?


 「どうかしたかの?」


 「ダンジョウ、国の代表があれ・・なの?」


 「ふぉっふぉっふぉ。まぁ、坊からしたら物足りんかのう」


 いや、物足りないとかじゃなくてさ。

 ぶっちゃけ弱そうなのだ。


 距離はあるが鑑定は使えるのでちらほらと個人情報を覗き見したのだが、スキル数も少なく、レベルも低い。


 「ですが、中にはそこそこなのもいますよ?」


 カゲゾウに促された先にはマッチョがいた。

 そう、マッチョだ。いや、マッチョなんて言葉じゃ足りない。

 あれは正に筋肉の鎧だ。あのゴリrゲフンゲフン。彼はリッデル王国代表の3年生のようだ。

 レベルも学生にしては初めて見る30。それにスキル数も多いし、スキルレベルも高いものによってはレベル4のものもある。

 恐らく戦闘スタイルは見た目通りの近接タイプだろう。

 名前はゼンガロム、え?苗字無し?


 「あの人貴族じゃないんだ」


 「そうじゃのう、貴賤に問わずとはいかんがシルフェウスよりかはリッデルの方が実力主義なのは間違いないのう」


 だから、自国ネタで弄るの止めなさいって、爺さん。

 

 「あれを貴族のぬくぬく坊ちゃん共がどうにかできる訳ねぇだろ」


 キルトは辛辣だがその通りである。

 温室育ちの方々にはあれは荷が重すぎる。

 

 「それに、あの男子学生以外のメンバーもそれなりに鍛えているのが十分に窺えます」


 マリウス君冷静だねぇ。

 確かに、リッデルの代表の方が平均の質は高そうだ。

 こりゃシルフェウスぴんちじゃないですか?


 「で、あの金ぴかの派手派手しいの何?」


 如何にもなマントを羽織って意気揚々と歩いているリッデルのお坊ちゃん。

 因みに地雷臭がするので鑑定はしてません。地雷には近づかない。これ鉄則ね?


 「アシュラード様、選手紹介書き見てないんですね?」


 はぁ、と溜息をつくマリウス君。

 え?僕ちゃんが悪いの?

 あ、選手紹介書きってのはスポーツの大会で配られているパンフレットみたいなもので、それぞれ簡単な選手紹介が書かれている物です。

 僕ちゃん説明書とか読まないタイプなんで読んでませんけど。

 

 「あの者の名はエビル・サークッド。直系ではありませんが、リッデル王家の血が流れている人物です。サークッド家は公爵家で所謂王家に何かあった時の為の控えとされて興された家になります」


 えー。

 そんな限りなく王族のような人出すとか頭湧いてるんですか?いや、王家じゃないから良いのか?

 でもラスカルは気を遣って出てないのに。

 それにそんな人物、碌に攻撃できないだろ。

 僕?勿論手はあげませんよ?足で引っ掛ける位はするかもですけど。


 「この図々しさがある意味リッデルらしいと言えばらしいですね」


 カゲゾウ君!言葉に毒、毒があるからぁ!


 「まぁ、ここで攻撃出来るような気概のある者はおるまい。早速リッデルに1勝贈呈じゃ」


 ダンジョウ君!ストレート過ぎぃ!抑えて下さいよ!誰が聞いてるか分かんないんですから。



 


 〇 開会式の少し前 貴賓室にて 〇


 「で、向こうの実力は?」


 「はっ、3年の方は問題ないかと。2年は向こうが優勢。1年はこちらが優勢。この様に見ています」


 「で、王子の方はどうだ」


 「はい、やはり出場はしないようです。」


 「そうか・・・・」


 男は黙り込む。

 その部下もつられて沈黙する。

 すると、男は何かを思い出したようで部下に尋ねる。


 「そう言えば、今年のシルフェウスの1年には有望な者がいると聞いていたが」


 「アドバンス男爵家の長男ですね。どうやら王都学校には入学しなかったようです。ですので参加は出来ませんのでご安心を」


 因みに、アシュラード暗殺を指示したのはこの部下の男である。

 暗に命を出したのは上座に居る男なのだが、本人はもう覚えていない。

 失敗したことは部下の男が揉み消し、何もなかったことにした。

 でなければ失敗に関わった全ての者達が消される事になってしまっていたからだ。


 「ふん!心配などしとらんわ!!」


 「失礼致しました」


 この男、感情の起伏が激しく、扱いが難しい。

 臣下の者、ほぼ全員一致の見解である。

 しかし、そんな男ではあるが反シルフェウス感情を隠さないその言動には強硬派のシンパも多く、支持率はそこそこある。

 反隣国思想を持つ者達に人気も高い。


 「まぁ、我がリッデル王国が勝てるならそれで良いのだ」


 クックックと嫌な笑い声を上げる男、ジャコンド・ザン・リッデル国王は今日も悪役感満載である。

 



 〇 ??? 〇

 

 「この交流戦目ぼしい学生はいるか?」


 「特にはいないっすわ。リッデルのえーっと、ゼンガロムはそこそこですけど、まぁそこまでの奴っぽいっす」


 またもや怪しい影。

 この世界なら陰謀論は存在するに違いない。


 「それにしてもあの一角はどうなっている」


 「ああ、あの集団っすか。ガキを守ってる辺りどっかの貴族んとこでしょうが、確かに1人1人の質が高いっすね。特に、ガキの背後の2人、ありゃヤバいっすわ」


 「マークできるか?」


 「正直俺じゃ厳しいっすね。家の名前ぐらいは調べられると思いますけどどうします?」


 「頼む。だが、慎重にな。嗅ぎつけられると厄介だ」


 「りょーかいっす。んじゃ、失礼します」


 1人分の気配が消えた。

 残った男もまたその場を後にする。



 ぷるぷるぷる


 陰から見ている者がいたなどと考えもせず。


 ぷる!


 クロはまた影に潜り大好きな主の元へ帰って行く。

 そんな一生懸命なクロは戻ってからたくさん主に撫でてもらったと言う。



 

 自分の作品やっぱりスローテンポですね。

 他作品を読むとよく分かります。


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