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第46話

 権謀云々書きたいけど無理っすわ(ヽ''ω`)

 では、どうじょ

 えー、私は今王都に来ています。

 何故かって?ラがつく王子に「来い。来なければ処す」と脅されたんです。

 僕は何もやってないのに。理不尽ここに極まれり。


 そして王都の賑わいが凄いんですが何か祭りでもあるのでしょうか?

 あまり人混み得意じゃ無いんだけどなぁ

 だがしかし!!僕ちゃんはイリスとオルトーに買って帰るお土産を選ばなければならんのです。

 人混みの戦場へいざ参らん!


 「ちょいと失礼しやすぜ?」


 見た目ヒョロッとした感じの男が話し掛けて来た。

 なんでしょう?


 「アドバンス家のご子息殿とお見受けしやす。おいらぁ、ぶっ飛んだ方の使いでさぁ。一緒に来てやもらえませんかね?」


 部下にぶっ飛んだ方呼ばわりとは、やはりアイツの頭はげふんげふん。何でも御座いません。


 「そうですか。それではよろしくお願いしますね?」


 「へい、こちらになりやす」


 そしてどんどん大通りから離れて行く。

 大分静かになったな。落ち着くわぁ。


 「ここですぜ。綺麗とは言えやしませんがどうぞ中へ」


 確かに、廃墟とまではいかないけど、中々の年季を感じる建物だな。

 この中に居んのか、アイツ。

 

 建物に入って行くとガタガタと床板のぶつかり合う音がする。

 ギシギシと軋む所もある。


 「来たか」


 奥の部屋に入るとそこにはラスカル王子殿下がいらっしゃいました。

 この部屋だけは掃除や改装が行われており、文字通り別世界となっています。

 正にザ・隠れ家って感じでしょうか。


 「殿下お久し振りです」


 「その口調は止せ、鳥肌が立つわ。今はラスカルと呼べ」


 失礼しちゃうぜ。こちとら気を遣ってんのにさ!!

 まぁ、正直面倒だからありがたいけど


 「じゃ、お言葉に甘えますか。それにしてもこの部屋凄いね?」


 「まあな。それは我の子飼いの者達がよくやってくれたのでな」


 そう言いながら僕ちゃん達の案内をしてきた男性の方に視線をやる。

 男の人は少しだけ笑みを見せる。褒められて少し恥ずかしいのかもしれない。

 

 「良かったね、優れた部下が出来て」


 「付け足すと信の置ける・・・・・、な?」


 それは重畳でござーます。

 6年前、彼がうちの領地を訪ねた時から始まった「殿下の部下作りましょう大作戦」通称「臀部作戦」嘘です。だからそんな怖い顔しないで下さいお願いします。


 当時、いや、現在も王城内に殿下の信の置ける部下は少ない。

 王城ではグルソンさんと護衛さん数名、王城の外はアドバンス男爵家うちゲイン子爵家(伯父さんとこ)ぐらいしかいない。

 ですので城下の民に目を向けたわけです。それも出来るだけ貧しい人を中心に。食べ物やお金を支援して味方にしようという作戦でした。味方を作るだけでなく、独自の情報網を作れるという点でもこれは重要なことだったのです。

 

 まぁ、中々グレーな手段なのは自覚してます。

 ぶっちゃけてしまえば、恩を売って仲間に引き込むってことですからね。

 それでも、傾き王子のカリスマなのかその事に反発する奴は少ないらしい。

 

 おかげでラスカル君は王都に根を張ることが出来ました。

 めでたしめでたし。

 

 「まだ完全にとはいかんがな」


 アグレッシブだねぇ

 確かに自分の足元はしっかりさせときたいよね。

 僕ちゃんなら部下に丸投げするけど。

 それはそれとして本題ですよ。

 何故に僕ちゃん呼ばれたの?


 「お前は本当に痴れ者だな。シルフェウスとリッデルの学生交流戦だ」


 ・・・あぁ、何か聞いた事があるようなないような。

 で、それと僕ちゃんに何の関係が?


 「出る気はないか?」


 「お断りいたす!」


 何だその顔は。「はい、喜んで!」とでも言うと思ったのか?

 冗談じゃない。学生じゃない人が出場してそれがバレたら国の面子丸潰れどころの話じゃない、信用に関わる。

 

 「そう警戒するな、冗談だ」


 じー


 「3割ほどは本気だったがな」


 はい、やっぱりこの王子はうつけでしたね。

 皆さん、俺の判断が国を救いましたよ?褒めて下さい。


 「父上もお主をどうにか出せんか苦心していたぞ?」


 こくおおおおお!

 国潰す気!?まさかの国王がボス的なやつですか?

 

 「まぁ、それほど人材不足ということだ」


 でも高々学生の交流戦なんだから別に勝敗に拘らなくてもいいんじゃ、って何その冷たい目

 溜息まで!?何だってんだ一体。


 「申し訳御座いません、ラスカル殿下。アシュラード様はそういったものに大変疎いのです」


 カゲゾウ君、その発言僕のことを扱下ろしてないかね?

 そして、おいうつけ、「お主も大変だな」とは何たる言い草!

 

 「この交流戦には少なからず両国の代理戦争の面もあるのだ。前回我が国は敗れている為、自国開催の今年は何としても勝ちたいのだ」


 代理戦争?どゆことでっか?

 

 「まさかシルフェウスとリッデルが過去に争っていたことも知らぬとは。無知も此処まで来れば天晴だな」


 めっさ馬鹿にされとる。

 でも知らない物は仕方ないでしょ?

 戦国時代の武将とかには興味あったけど肝心の歴史についてはさっぱりだったし。

 ややこしいんだよね。誰某がああやったら、別の誰かが何たらみたいな。

 

 「カゲゾウよ、主の教育はしっかりな」


 カゲゾウ君黙って一礼とは肯定と取っていいのかな?

 最近、カゲゾウの好感度も下がっているのでは疑惑が濃厚になった模様です。


 「そう言えばラスカルは交流戦出るの?」


 「我は出んぞ。父上達と共に観覧だ。リッデルの王族もおるぞ?」


 やっぱ王族さんは出ませんよね。

 でも仲悪い国の王族と一緒に試合観戦ってのも嫌だよなぁ

 それにしても何故僕ちゃん呼ばれたし。本当の理由は?


 「いや、我だけ面倒事に追われるのも癪だったからお主を呼んだだけだ。特に深い意味はないぞ?」


 はあああ?

 何ですかそれ?喧嘩売ってますよね?買いますよ?言い値の10倍で買ったるぞゴラァ!!


 「それは半分冗談で、お主にも他国とはどのような存在かを目にしておいて欲しかったと言うのが一番の理由だ。お主はそこら辺に関心が薄そうだったしな。実際驚くほど無知であったし」


 お気遣いどーも。出来れば一生関わり合いになりたくなかったよ、こんチクショー(´Д⊂ヽ

 つか半分本気なんかい!!相変わらず迷惑極まりない野郎だ。塩を撒いてやりたい。顔面に。


 「ではな。観戦の際は気を付けることだ。この様な催しの時は大抵其処彼処に何処かしらのネズミが紛れ込んでおるからな」


 知りたくなかった情報どうもありがとう。

 出来ることならそんな場所に呼ばないで欲しかったよ。


 

 その後、ラスカルと別れ宿でお休み中です。

 モッチーとクロと戯れております。

 ラルフはフロンテルムでお留守番です。ひとりだけ可哀想だけど目立つし、人が多い所で何か問題が起きかねないから我慢してもらいました。帰ったらいっぱいモフモフしたいです。


 モチモチ

 ぷにゅぷにゅ


 両手にスライム、しあわせ~

 


 それにしても交流戦かぁ

 スポーツでよくあるU-15みたいなもんだよなぁ

 若手のトップが競い合う。何か格好良く聞こえる不思議。実際凄い事なんだけどさ。


 

 「ふぉっふぉっふぉ、何やら考えておるのう」


 出ました、神出鬼没のお爺さん。一体貴方は何処から現れたんですか?

 部屋の鍵閉めてましたよね?

  

 「ふぉっふぉっふぉ」


 答える気なしかい。

 まぁ、いつものことか。


 「ダンジョウ。質問なんだけどシルフェウスとリッデルの交流戦には代理戦争の意味合いがあるって本当なの?」


 「そのことか。そうじゃのう、その様な見方をする者もおると言うのが正しいかのぉ」


 「それって王族とか貴族とか?」


 「それだけではないぞ?先祖を亡くした平民の中にもその様な考えの者達は当然おる。でものぉ、だからこそ交流戦は両国の鬱屈とした感情を発散する大切な行事でもあるのじゃ」


 うへぇぇ

 重すぎるわ。そんな裏事情知ってたら楽しめねぇじゃん(´・ω・`)

 ぼかぁ何て事を聞いてしまったんだ。


 「ふぉっふぉっふぉ青いのう。この程度の事などさらりと流せんようではこの先苦労するぞ、次期領主殿?」


 この爺さんやっぱり意地が悪い。


 「ダンジョウ、賃金の話をしようか?」


 「おっと、厠に行きたくなったのう。それではの」


 気配が薄くなっていったと思いきやその姿はもう何処にもありません。

 彼は本当に人間なんでしょうか?僕ちゃん毎度不思議です。

 そして、こうなるともうどうしようもありません。

 逃げた彼を見つけるなど私にゃ無理です。

 諦めてトランプでもしましょう。



 その日はモッチーとクロとの3人(?)で夜遅くまでトランプをやってました。

 ちゃっかりダンジョウが乱入しに戻って来たので、ボコボコにしてやろうと思いましたが1度も勝てませんでした。

 あれ?おかしいな。僕ちゃん一応開発者なのに・・・・・・・



 〇 ??? 〇



 「あれは・・・一体」


 物陰から突然現れた人物の顔は少しではあるが疲労の色が見える。

 彼女の任務内容は情報収集を主とし、場合によっては自国の脅威に成り得る存在の監視又は排除を実行する裏そのものである。

 そして、彼女が何より優れているのはその隠密性。

 それを以て彼女は数々の任務をこなして来た。


 今から凡そ3年前に受けた任務と同じ標的だったが、前回は魔物に、そして今回は唯一人の老人の存在によって退却せざるを得なかった。


 標的はよく分からない札遊びをしていた。

 手札を抜き合って先に手札を無くした者が勝ちのようだ。

 見慣れない遊びに少し目を奪われてしまった。

 というかスライムが札遊びをしていることに驚きだ。


 傍に2体のスライムが居たが特に問題なく対処できると思い、気を持ち直して動こうとした瞬間、その老人は再び現れた。まるで自分の動きを察知しているかのように。

 実際老人には隙がなかった。

 標的との遊びを楽しんではいるが、意識は間違いなく自分に向けられていた。

 そして驚くことにどうやら黒いスライムも自分の存在に気付いている様だった。

 そんな1人と1匹だったが、不思議にも自分に対して何も仕掛けて来なかった。

 

 結果、自分は今ここに居る。


 「分からない」


 自分を見逃したスライムも老人も。

 遊びをしている間中隙だらけで、勝負に一喜一憂し、表情をころころと変えていた標的も。


 「要観察」 


 若き刺客はその言葉と共に王都の夜に消えて行った。

 

 

 〇 ダンジョウ 〇


 「行ったかのう」


 その脇には睡魔に敗れた少年が寝息を立てている。

 間違いなく刺客はこの少年を狙っていた。

 排除しようかとも考えたが、相手からその気配は部屋に入った時のみでそれ以降は沈黙していた。

 これからの事を考えるなら、排除しておくべき対象である。

 だがこの老人はそれをしなかった。

 間違いなく・・・・・事を収められた筈なのに。


 「ふぉっふぉっふぉ。尻尾だけ掴んでもどうしようもないしのう。ゆるりとな」


 普段とは違い、油断でも怠慢でもない歴とした経験から来る自信を感じさせた顔は一瞬にしていつも通りの好々爺のものに変わっていた。

 

 「それにしてもぐっすりじゃのう。危機感が足りん。これは仕置きじゃ」


 そう言って何やらごそごそし始める老人。

 2匹のスライムはそれを止めない。

 表情は窺えないが何となく呆れている様子は見る者が見れば、一目瞭然であろう。



 翌日、顔に黒い絵や文字を刻んだ少年が一人の老人を追い掛け回していたのを幾人もの人が目撃し、周囲は笑いに包まれたと言う。

 

  

 何故か最後まで締まらない不思議。

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