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第40話

 



 国王様とご対面であります。

 扉を入った先は部屋と言うよりホールといった感じで天井が高いデス。

 これお腹の音とかなったらスゲー響くんだろうなとか考えちゃいました。

 そんで国王様はザ・国王用って感じのこれまたデカい椅子に座ってます。

 漏れなくナイスミドルなオジサマです。この美顔率の高さに拙者辛さを抑えられません(´;ω;`)

 その国王様の横には精悍な兵士が2人と太まし~感じのおっさんが。

 そして我々の周りには文官、武官が並んでおるわけです。


 そんな皆様の視線の大半はラルフに注がれているわけです。

 良かったね、ラルフ、大人気だぞ!?

 その本人は全く気にせず堂々としたものです。おい、欠伸はやめい。


 父上は緊張のご様子。

 何とか解してあげたいけど下手に動けないからごめんね?自分で頑張ってくれ!


 ラルフと父上を足して割れば丁度いいのかもしれない。

 でも、そしたら獣人のイケメンが出来上がっちゃうな。

 却下で。


 そして僕は目だけで周囲を見回してます。

 なんて言うか好意的な視線は1つも御座いませんね。

 品定め、強い警戒、澱み切った欲の目等々その種類は様々なんですけどね?


 「名乗りを」と言われたので父上と僕ちゃんは名乗りを上げます。

 父上は何とか噛むことなく名乗れたのでとりあえず及第点と致しましょう。

 それでも緊張している様子は隠せないけどね?


 「先の群れ討伐ご苦労であった。」


 国王様の労いの言葉です。

 だったら幾らか支援寄越せよと言いたかったですが、お口はチャックです。

 と言うかそれは伯父さんのゲイン子爵に言うべき言葉じゃないでしょうか?

 このナイスミドルが悪くないのは分かってますが何かモヤモヤします。


 「男爵よ、ゲイン子爵より報告は届いておる。そちの息子が大いに活躍したと聞いたぞ?」


 「ははっ、恐縮です!」

 

 父上、ペコペコしてます。

 褒めてくれてるし、僕ちゃんも頭下げとこっと。


 「若い芽が出て来るというのは国としても良き事だ。これからも精進せよ」


 「ははっ、身に余るお言葉、有り難く。」


 ちゃんとお礼を言うのです。

 でも一々畏まるのって面倒だよなぁ。


 


 「それでは本題に入るか。そちらのエレメンタルウルフについてだが、「陛下、失礼致します。少しよろしいでしょうか?」


 国王様の隣にいたぽっちゃりさんが強引にカットインして来る。

 

 「・・・何だ、宰相」

 

 あ、ちょっとイラッとしたな。

 まぁ、あれは僕ちゃんがやられてもイラッと来るだろうな。


 「はっ、その事なのですが、そのエレメンタルウルフとても強き力を持っていると聞き及んでおります。ですので陛下の従魔として採り立てるのは如何でしょう?」


 は?いきなり何言いだしてんの、このメタボっさん?

 調子乗ってると泥人形ボッチ君アンタの家に寄越しますよ?


 「我には頼もしき近衛がおる。それにエレメンタルウルフはとても気位が高いと聞く。到底我には従うとは思わん。それにそのエレメンタルウルフは男爵家のものだ。おいそれと採り立てることなど愚の骨頂だろう。」


 衛兵さん僕は見ていましたよ、一瞬頬が緩んだのを。

 褒められると誰だって嬉しいもんだよね。分かります。

 それにしても本当に断ったよ。ラスカルの言う通りこの国王は少なくとも敵ではないのかな?


 「でしたら、セルラーヴ王子殿下にはどうでしょう。王子殿下は武に優れております。エレメンタルウルフでも従えられる才は充分に「お待ちください」


 ここで更にマーブルさんのカットイン。素敵です!!


 「先程から宰相殿は男爵殿やエレメンタルウルフの意思も顧みず勝手に話を進めておりますが、それはあまりに非礼が過ぎるのでは?何より国王様の発言も遮っておりましたし少し落ち着かれては?」


 「確かに陛下の発言を遮ってしまったことについては大変申し訳なく。ですが、マーブル殿、この提案は王家を慮ってのことです。男爵殿も喜んで受け入れて下さいましょう?それにエレメンタルウルフの意思など誰も確認できますまい?」


 その笑みには清々しさの欠片も御座いません。

 周りにもニヤついてる奴等がいる。宰相さんのお仲間でしょうか。むかつくわ~

 それによりにもよって王家のためって、良く回る舌ですね?その舌は一体幾つ割れてるんでしょうね?


 そしていくらキレッキレマーブルさんでも「王家のため」という大義名分を出されれば、気軽に否定することなど不可能ですかね?

 全く以て小賢しいな。


 アッシュ君、万事休すか!?

 そして復讐ルート突入か?

 いえ、彼は墓穴を掘りました。

 みてろ~、ギャフンと言わせたる。


 「すみません、私からよろしいでしょうか?」


 「これはこれはご子息殿、何ですかな?受け入れて下さるのですかな?」


 いやらしい笑顔だ。イケメンでもないおっさんのニヤケ顔なんて誰得だっつうの。

 マックスのニヤケ顔より気持ち悪いな。

 

 「いえ、宰相殿は「エレメンタルウルフの意思など誰も確認できない」と仰いましたが、もし、その意思が確認できたらどうしますか?」


 「ふん、それならその意思に従いましょうぞ。無理矢理従わせては可哀想ですしな。」


 可哀想なんて口から出まかせをよくもまぁ・・・( ̄▽ ̄)

 ですが、ありがとう!言質頂きました!


 「国王様、ラルフに近づく許可を願います。」


 「よかろう。許可する。」


 打てば響くこの感じ、本気で信用できそうかも。

 今は一旦置いとこう。とりあえず、ラルフの元へすたこらさっさと。


 「ラルフ、此処にいる皆にお前の意思を伝えて欲しいんだ、頼む。」


 撫でながらお願いすると

 (分かった)と一言。相変わらず可愛いな。この子を馬鹿王子になど絶対やるもんですか!!


 「それでは今より皆様にラルフの意思を本人がお伝えします。御静聴を願います。」


 皆、奇妙なものを見る目でしたが、騒ぎ立てるような輩はいないようです。

 そして静寂がその場を支配する。視線は皆ラルフに集まっている。

 それじゃあラルフよろしく頼むよ?

 そして僕ちゃんはラルフから少し距離を取ります。


 ラルフは国王を見据える。

 今までとは異なりその姿には確かな威が感じられる。

 国王だけでなく周囲の者全てが緊張を隠せない。

 もしかして無意識に威圧してる?

 でも魔法結界は発動しない。

 ってことは自前の威圧感ですかね?すげぇや


 (我、主と一緒、それ以外、従わない、我襲う、迎え撃つ)


 ラルフの声はこの場の全ての人に届いたようだった。

 宰相のおっさんも口をパクパクさせてます。ざまぁ見やがれってんだ。

 ラルフもちゃんとこれまでの話を聞いて理解していたんだろう。

 その言葉には強い思いがあった。


 「如何でしょう、皆様。確かにラルフの意思、伝わったのではないでしょうか?」


 皆さん無言。

 そりゃそうですわ。

 魔物が人の言葉で意思疎通して来たんだから。

 まぁ、それを受け入れられない者も中にはいるのです。


 「なっ・・・ありえん、ありえませんぞ!魔物が人の言葉を使うなど!!陛下、これはあの小童が何ぞの術を使ったに違いありませんぞ!」


 お~い、本性出てますよ~

 小童とは失礼なヽ(`Д´)ノプンプン

 これでも立派な相撲男児10歳ですからね?


 「はぁぁ。宰相殿、この室内は魔法系のスキルを使うと魔法障壁が反応を示すと私は伺っておりますが、そのような様子はありませんよ?流石にその言い訳は苦しいのでは?」


 10歳児に諫められる宰相。

 この国は本気で大丈夫でしょうか?

 何人か顔を下げてプルプル震えてる。笑ってはいけない王城inオリシス。頑張って皆耐えてくれ。

 笑ったらケツバットどころの話じゃないかもしれないので


 「うむ、面妖なこともあるものだな。エレメンタルウルフよお主の主とはそこにいる少年の事か?」


 お?国王様がラルフに話し掛けたぞ?




 〇 フェルシウス国王視点 〇




 「うむ、面妖なこともあるものだな。エレメンタルウルフよお主の主とはそこにいる少年の事か?」


 (そう、主、一人、他、違う)


 「そうかそうか」


 国王は嬉しそうに笑う。

 その笑みの理由がこの場に居る殆どの者には分からなかった。

 笑みの理由は至極単純。

 絶対なる主への思い、ただそれだけ。

 

 (出会って一月も経っていないと言うのに、此処まで思われるというのは正直羨ましい物だな)


 今この場に居る者達の中に心から国王に忠誠を誓うものは非常に少ない。

 恐らく両手の指の数に収まる程度しかいないだろう。

 国の中枢を司る者達がこうなのだ。

 だからこそこの魔物を少年の元に居させてやりたい。

 魔物を見る少年の目もに優しさを感じる。

 この者達を下らぬ謀の贄にはしたくない。

 そして国王は決を出す。


 「そうか、ならばそのまま主に仕えるがよい。」



 ◇◇◇



 国王の質問にラルフ君はちゃんと答えました。

 嬉しい事言ってくれるじゃないか。おじさん、涙が出そうです。

 よし、今日はブラッシングたくさんしてやろう。



 「陛下!?」

 

 豚さん驚愕。

 お許しが出ちゃいましたもんね。こりゃ目出度い。オメデトーオメデトー!!

 周りもざわついてます。

 異議は私が認めません!!特に何もしないけど。


 「ビトレイ、お主が言ったことだぞ?エレメンタルウルフの意思は今の主と共にあること。ならば処遇は決まりだろう?」


 うは~おっかねぇ~

 目が本気マジだよ。宰相のおっさんドンマイ!!いや、この場合ざまぁか。

 果たしてこれはテンプレな展開と言えるのか。

 つか、僕ちゃん何もしてない。

 つまりテンプレではないですね。残念です。

 

 「・・・いえ、陛下がお決めになられたのなら何も。」


 「違うだろう?お主が条件を提示し、それをこの者達が果たしたのだ。我はそれを見届けたに過ぎん。」


 言い訳を許さないスタイル、大変良いと思います。

 あ~あ、プルプル震えちゃって、しっぺ返しって言うのかな?

 モッチーと違って全く魅力のない贅肉が揺れております。


 「どうした、宰相認めんのか?」


 「はっ、失礼致しました。確かに私も確認したので納得で御座います。」


 お、もう悔しそうな顔はしてないな。

 仮にも一国の宰相ってとこか。まぁ、それでも大分駄目な気がするけど。


 「うむ。他に何か意見のある者は?」


 誰も何も言いません。

 まぁ、会社の社長の決断にいちゃもん付けられる社員なんてそういませんよね。

 そんな度胸僕ちゃんも御座いません。

 つか、言う事ないですし。


 「それでは、エレメンタルウルフはアドバンス男爵家の預かりとする。皆の者よいな?」


 『はっ!!』


 これで終わりかな?

 あ、忘れてた。


 「国王陛下一つお尋ねしたいことが。」


 「うん?なんだ、申してみよ?」


 「はっ、ありがとうございます。下らない事では御座いますが、待合室に置かれておりました、菓子なのですが大変美味でして、是非ともご用意して頂いた方にお礼を述べたいのです。何分私、美味い物には目がないものでして。」


 「その様な事か、ビトレイよそちなら知っておろう、それに食の聖地と呼ばれる男爵家の倅が美味いと言うのだ我も興味がある。」


 「は、はい。ええとですな。」


 お前か宰相。本気・・でやってくれるじゃねぇか。

 あと何人かが反応したの確かに見たぞ。

 人を呪わば穴二つって言葉を実践したいですねぇ。


 「陛下申し訳ございません。お恥ずかしながら覚えがなく、その事についてはこの後でよろしいでしょうか?」


 「・・・・そうか、ならば仕方がないな。男爵家の倅よ、それで良いか?」


 「はっ、十分に御座います。ありがとう御座います」


 誰がやったか分かっただけで良しとしよう。

 そしてそのままお開きとなりました。

 宰相さんの汗にちゅ~も~く!!

 何かあったんですかねぇ?


 護衛の4人と合流しました。

 

 「坊ちゃんまた何かやらかしやませんでしたか?」

 

 「マックス君、君は僕の事を常々どう思ってるのか聞きたくなったよ。」


 「そりゃあ、当代一の問題児トラブルメーカーでさあ。」


 それは的外れだな。

 僕ちゃんが問題を起こしてるんじゃない。

 問題が起きてそれに僕ちゃんが巻き込まれてるだけだ。


 「そうですかねぇ~?」


 そうだよね、皆?

 あれ?どうして目を合わせてくれないのかな?

 

 「ま、その話は置いといて帰ろっか。」


 父上、それは暗に肯定していませんか?

 もういいです。僕にはモッチーとラルフがいますからね!


 (我、主、好き)


 うぎゃ~何と言う可愛さでしょうか。

 よし!なでなでしよう。今しよう。


 もふもふもふもふもふもふもふもふもふ


 「アシュラード様、行きますよ。」


 は~い

 それでは帰りますかぁ。

 イリス、オルトー待っててね~

 兄ちゃん帰る


 「おい、そこの者、その獣我に献上せよ」


 のは遅くなるかも。


 そこには性格の悪そうなイケメン青年が立っていました。

 如何にもお坊ちゃんな雰囲気で鼻につく感じです。

 まぁ、多分あの御方でしょうね。


 部屋を出て来た方々もぎょっとされてます。

 当然ですわな。つい先程、国王直々にラルフの処遇が決まったのですから。

 

 「早速、また問題が起きやしたね、坊ちゃん」


 マックスうるさい

 これは俺が起こしたとは言わないだろうが。

 て言うか大丈夫だよね、これ?

 

 



 

 

 貴族の言動とか国王との謁見とかうまひには当然経験がないのでこんな感じになりました。

 なので予防線張らせてもらいます。おかしい点があったらすみません。


 このなぁなぁな感じで良ければどうぞこれからもよろしくお願いします<m(__)m>


 

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