閑話 お兄ちゃんと父さん
閑話でごわす。短めで候。
今日というかさっき書きました。
なので粗い部分もあるかとは思いますがご了承ください。
あと誤字やおかしい点を見つけたらご指摘よろしくお願いします。
僕はラムトと言います。獣人です。
お母さんも獣人です。お父さんは僕がもっと小さい頃魔物に襲われて亡くなったそうです。
お母さんだけでは僕と2人の生活を支えることが出来ず、ネイガードさんにお母さんが頼み込んで奴隷にしてもらったそうです。ネイガードさんは僕らの恩人だとお母さんに僕の耳が腫れるぐらい言い聞かせられました。
僕とお母さんが売られる条件はただ一つ、2人揃って買う事、これだけでした。
お母さんは贔屓目無しに美人です。実際、買われるまでに何人かの人がお母さんを買おうとしたらしいのです。僕は小さかったので覚えてませんが。
けれど買われることはありませんでした。
理由は簡単です。僕が居たからです。
かなり破格の値段でお母さんと僕を買おうとした人もいたみたいですが、ネイガードさんはそれを断ったようです。詳しいことは知りませんが、その人は大変女癖がよろしくない貴族の方だったようです。お母さんはネイガードさんにはとても深く感謝していました。それは今でも変わりません。
そんな僕たちが貴族のご子息様に買われることになりました。
その方は買ってすぐに僕達を奴隷から解放して下さりました。
今考えるととてもぶっ飛んだことだったのだなと思います。
そして、その方は陽だまりのように温かい方で、僕の頭をよく撫でて下さり、
「僕はラムトのお兄ちゃんだからな?何か困ったことがあったら言うんだよ?」
と優しく仰ってくれました。
お恥ずかしながら、小さかった僕は「兄」が出来たと喜んでよく遊ぶのをせがんでいました。
アシュラード様は、全く嫌がりもせず
「ラムトは遊びたいのかぁ、よし!じゃあ遊ぼう!!」
と言って遊んでくださいました。
お母さん曰く、「心臓が止まるかと思った」との事でした。
うん、僕も今更ながら反省してます。
アシュラード様は兎に角貴族らしくない方です。
勿論いい意味でですよ?
農家のおばさんたちと道端でお話ししてたり、
全く聞いたことのない料理をいくつも提案したり、
この前なんかスモートーナメント子どもの部に仮面をつけて<仮面少年>と言う名前で参加なさってました。曰く、「私は顔を見せることは出来ないのだ」と仰っていましたがどの様な意味があったのでしょうか?
皆、当然分かり切っているので会場中笑いが絶えませんでした。
結果は準々決勝敗退でした。負けたのにその口元には確かな笑みが浮かんでいました。
閉会式の時なんて「来年は優勝します!!」なんて言うもんだから皆大笑いして「頼むぞ!仮面少年!」なんて声まで飛んで、腹痛で大変でした。
そんなアシュラード様はよく「彼女が欲しい」と呟かれます。
確かにアシュラード様には婚約者や幼馴染と言った方がいらっしゃいません。
マックスさんはよくそれをネタにしては100倍ぐらいの仕返しを喰らっています。
その時だけは、アシュラード様の目が怖いです。
何と言うか闇を感じます。
ご領主様もこれには悩んでらっしゃるようで、溜息をついてらっしゃるのを見たことがあります。
そして交際関係繋がりですが、お母さんが再婚しました。
お相手は元AAランク冒険者のブランドさんです。
この男爵領に来てからもお母さんは幾人かの男性にアプローチを受けていましたが、全てお断りしてました。それとなく僕に近づいて来る方も居ましたが、そういう方にはよりはっきりした態度でお断りしてました。そういう人に限ってお母さんの容姿しか見てなかったような気がします。
ですが、ブランドさんは違いました。
僕には冒険者ならではの経験談、苦労話を楽しそうに話してくれました。
今でも剣の稽古をつけてくれてます。
そしてお母さんが近くにいるとよく顔が赤くなってました。
僕も大きくなるとその理由が分かりました。
不思議と嫌な感じはなかったです。
ブランドさんは決してお母さんに近づこうとしませんでした。
お母さんに触れること自体避けているようでした。
後でアシュラード様に伺ったのですが、「単純な照れ」なんだそうです。
ブランドさんはカッコいいのに結構初心なようです。
お母さんも何時からかブランドさんの事を目で追うようになってたと思います。
すみません詳しくは分からないです。
只、初見でも2人は両思いであることは容易に想像がつくぐらいの雰囲気でした。
なので僕はお母さんに言いました。
「僕は今とても幸せなんだ。でも、お母さんが好きな人と結ばれてくれたらもっと幸せになると思う。多分だけどお父さんもそれを望んでると思うよ?」
お母さんは「ありがとう、ラムト。そんなこと言うなんて大きくなったのね。」と目を赤くして言いました。その次の日から、お母さんのアタックが始まりました。
と言ってもお母さんは元来大人しい気質なんで、あまり前に前にとは行きませんでした。
それでも、お弁当を作って渡したり、晩御飯に誘ったりして普通の感覚なら分かるであろうアプローチを続けました。
しかし、ブランドさんは強敵でした。と言うか鈍感でした。
どんなにお母さんが話し掛けても緊張からか会話が続かず、好意を匂わせる台詞も大抵の場合聞き逃したりと、アシュラード様曰く「難聴系鈍感主人公だな」とのことでしたが、僕としては空回りするお母さんが見てられませんでした。
ブランドさんを呼び出して、はっきりするよう言いました。
ブランドさんは
「すまなかった。ありがとう、ラムト」と言い終えるや否やお母さんの元へ見たこともないスピードで走って行きました。
そして、僕は近くの茂みで盗み見していたアシュラード様とマックスさんに注意をしました。
ブランドさんは慌てていて気付かなかったようですが、僕は耳が良いのですぐ気が付きました。
たまにアシュラード様はこの様な悪いことを喜んでするのです。
そして、ブランドさんはお母さんにプロポーズし、見事2人は結ばれました。
今では2人はとても嬉しそうに会話しています。
それまでは一体何だったんだ位の仲の良さです。
僕も将来はお母さんとブランドさんのような家庭を何れ持ちたいです。
このことをアシュラード様に話したら
「妬・・・いや、いけないラムトの家族なんだ・・・・・・はぁ」
とお疲れの様でした。
そんなアシュラード様とブランドさんですが、親交のあるゲイン子爵領に出兵するそうです。
アシュラード様には「親父さんもう冒険者じゃないのに、ごめんな?」と謝られました。
こういう所はやっぱりアシュラード様らしいなと思い嬉しくなりました。
ブランドさんもお母さんと抱き合っていました。
ブランドさんは恥ずかしそうだったけど、とても嬉しそうでした。
アシュラード様とマックスさんが冷やかしてそれぞれご領主様とミッシェルさんに拳骨をもらっていました。あの2人はこういう時だけ息が合っているような気がします。
そして、ゲイン子爵領に向けて皆が出発しました。
お母さんは姿が見えなくなるまで、ブランドさんを見送っていました。
そしてアシュラード様は出立直前こう仰いました。
「ラムト、子どもたちの事頼んだよ?ラムトは僕の弟でラムトは皆のお兄ちゃんなんだからね?」
子どもたちとは領内学校の生徒達のことでしょう。
アシュラード様は皆の事をとても大事にされていますし。
だからこそ、その言葉には優しさと確かな信頼が篭っているように聞こえました。
いってらっしゃいお兄ちゃん。
いってらっしゃい父さん。
僕も自分に出来ることを精一杯頑張ります。
だから、決して怪我の無いよう祈っています。
はい、ラムト君でした。
この子も滅多に出番のない子なので何れ書くぞと思っていましたが、やっと書けました。
アシュラード君に女性欠乏症が出てますが素です。
それはそれでやばいですが素です。
そして狸耳美人を嫁にしたブランドさんには嫉妬を
うまひの心は決して広く御座いません。




