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第31話

 応援頂いたので頑張りました!

 5000字はないのですみません。


 



 「アシュラード様、王子殿下よりお手紙です。」


 カゲゾウに書簡を渡される。


 3年前から、おいどんはラスカル王子殿下と手紙の遣り取りをしているでごわす。

 あのべらぼうめはおいどんを悉く馬鹿にしてくるど。

 それがこれだぁ。



 元気か?

 まぁ、お前が元気でないことなどないのであろうがな。

 相変わらず風邪も引かんのだろう。阿呆は風邪を引かぬからな。

 ところで、念願の相手は出来たか?

 いや、聞くだけ無駄であったな。

 我はお主と違い大人気だぞ?晩餐会ではご令嬢方が呼ばなくても向こうから寄って来るのだからな。

 おっと、お主には縁のない話でさぞ辛かっただろう。済まなかったな。

 話を変えよう。

 男爵領の名は他国にまで広がっているようだな。

 王族の末席に座す者として喜ばしく思うぞ。

 お前の手柄ではなく、男爵の手柄だがな。

 

 我も先日民と共に幾つかの屋台の設置を手伝ったのだが難しかったぞ。

 だが、何とか成し遂げたからな、安心せい。


 それではな。お主も励め。


 ラスカル



 以上です。ほぼ原文です。

 ええ、見て分かるようにめっちゃ僕ちゃんの事を全否定してきます。

 自分で聞いておいて、すぐそれを自分で否定する、正に傷口に塩を塗り込むスタイルです。

 しかも毎回俺への女性ネタを必ず入れて来るという徹底した嫌がらせっぷり。

 皆様ご唱和ください。

 せーの


 うぜええええええええええええええええ


 何なの?

 8割俺への嫌味じゃねぇか!

 それもちゃっかり自慢入れてくんじゃねえっつうの。

 

 「アシュラード様。」


 そう言ってカゲゾウから渡されるのはモッチー。

 モッチーを只々モミモミします。

 冷静になりたい時はこれがデフォルトになってます。

 この触り心地、進化してから更にパワーアップしましたね。


 言い忘れてました。モッチー進化したってよ。


 一緒に魔物を討伐してたら進化したんです。


 モッチー  (ホーリーライトスライム)  属性 光 聖


 Lv.30  HP 150/150  MP 104/104


 スキル


 体術Lv.5

 聖魔法Lv.3

 光魔法Lv.4




 聖属性が付いちゃいました。

 回復薬を飲みまくってたことと何か関係あるのかな?

 そして一番スキルレベルが高いのが体術です。

 鑑定は正常ですよ?本人も近接戦嫌いじゃないようですし。

 鍛えてるおかげかHP・MP共にかなり上がっており、魔と武両方兼ね備えたとんでもない感じになってます。

 そして元々、持っていた溶解スキルですが進化と共になくなっていました。

 スライムって基本雑食だからこのスキルは必須なはずなんだけど、なくなったってことはモッチーは食べるものを選ぶようになったってことか?

 う~む、謎だ。



 あ、モッチーのおかげで大分落ち着いて来たな。

 よし、話を戻そう。

 

 

 手紙を見た感じ分かると思うけど、アドバンス家とラスカル王子の仲は良好です。

 これは他勢力にも伝わっている為、うちにちょっかいを掛けて来るところは少なくなってます。

 それでもまだ、しつこい方はいらっしゃるんですよね~。

 因みに、王子はゲイン子爵家とも連絡を取っているとの事です。



 ただ、国王派と公爵派がこっちを警戒してるっぽいんですよね~。

 それが若干面倒臭いです。

 

 多分ですけど、晩餐会でラスカルに迫った令嬢達も二派閥の仕込みなんじゃないかな~と思ったり思わなかったり。

 え?アイツが本当にモテてるんじゃないかって?

 そんな俺の精神衛生状都合の悪い事考えられる訳ないでしょ!?

 喧嘩売ってんですか!?

 買いますよ?

 こちとら幼馴染も居なければ許嫁も居ないんでね。


 ヒロイン?そんなもの現実リアルにゃ居やしないよ。

 ったく、神様方も少しぐらいそこら辺融通きかせられんのかね?


 (・・・・・・・・・・・・)


 何か言えや、おい。

 普段、いらんちょっかいばっか出して来るくせに、こういう時はだんまりとは。


 (そこは本人の資質ですので・・・・・ガンバ!!)


 何その厳しい世界!?

 世界は俺に厳しすぎる。

 


 「アシュラード様。そろそろお戻りになられて下さい。」


 あ、すみません。


 この手紙で重要なのは最後の2行です。


 我も先日民と共に幾つかの屋台の設置を手伝ったのだが難しかったぞ。

 だが、何とか成し遂げたからな、安心せい。



 一見、日常の出来事を書いたように見えますが、違います。

 この2行にはそれぞれ暗喩された情報があります。

 まず、「屋台」。これはラクトルを支持してくれる貴族を指します。屋台骨とか言いますもんね?

 そして、「設置を手伝ったが難しかった」は交渉が難航したことを意味します。

 と、来れば最後は言わずもがな「成し遂げられた」は説得に成功したということになります。


 つまり、この2行を翻訳するなら

 「幾つかの貴族と交渉し、難航したが何とか繋がりを得た。」

 って感じです。


 ややこしいでしょう?

 でも、これぐらい気を遣って悪いことは無いんです。

 堂々と「いくつかの貴族を仲間にした」って手紙に書いてその内容が漏れたら、ラスカル消され兼ねませんし。

 やっぱり何処の世界でも権力闘争ってのは怖いもんですね。


 

 お分かりになる様に王国に小さいながらも歴とした第3勢力、ラスカル王子派が誕生した訳です。

 アドバンス男爵派じゃないのかって?

 国王・公爵と来て男爵じゃ見劣りするでしょう?

 それに動くのは王子自身ですからこれで良いのですよ。

 

 

 「順調そうだよ?」


 そう言って手紙を見せる。

 カゲゾウは手紙を一読すると頷いた。


 しかし、僕ちゃんは見逃しません。

 一瞬だけどクスッてしましたよね?

 何をクスッてしたんですかね?


 責めの視線をジーッと向けますがびくともしません。

 手強いデス。



 コンコンコン!

 「アシュラード様!至急の連絡が!」


 マリウス君の声です。

 何か珍しく焦ってますけどもどうしたんでしょう。


 「分かった。入ってくれ。」


 「失礼します。」


 焦っていてもマナーを守っての入室、真面目やなぁこの子。

 あ、ワイの方が年下でしたっけ?

 まぁ、とりあえずお話を聞かせて頂きましょう。

 と、その前に


 「マリウス、お水どうぞ。」


 「ありがたく頂戴します。」


 おお、一気に飲むね。

 喉渇いてたのか。


 「おかわりいる?」


 「いえ、もう大丈夫です。お気遣いありがとうございます。」


 因みにお水を用意したのは僕です。

 これを最初にやった時は皆から注意されたけど、今じゃ誰も何も言わなくなりました。

 はい、僕ちんがそれでもやり続けたからですね。すみません。

 

 

 「では、ご報告させて頂きます。ゲイン子爵領に跨る大森林にて魔物の群れらしきものが確認されたとのことです。それに伴い子爵様より救援要請が届きました。」


 そりゃヤヴァイね。

 

 この世界には魔物という存在がいます。

 さて問題です。その魔物達が暮らすのはどのようなところでしょう?

 答えは簡単、人がいない場所です。

 まあ、その鉄板が森ですね。あとは山や海、洞窟とかもそうかな?


 で、そういう場所で数年から数十年単位で起こるのが魔物の群れ化です。

 その構造は至って単純です。強くて知性を持った魔物が、ランクが低く知性の低い魔物を兵士としてある種の軍を作ると言った感じです。


 面倒なことに統率者である魔物を討ち取らない限り、群れは崩れません。

 しかも、そのリーダー格の魔物さんは大抵、群れの後方にいるので手が出し辛いのです。

 群れの長を仕留めるのに時間が掛かり過ぎると、その分被害が増えていきます。歴史上には魔物の群れによって消滅した都市もあるそうです。



 なので魔物の群れが確認された場合は、他の領地や国に救援要請するのは常識なんです。

 が、ここで派閥問題が邪魔してきます。

 ラスカル王子派と分かり切った男爵家と繋がりの深い子爵家を喜んで助ける人はいるでしょうか?

 答え、ほとんどいません。

 馬鹿だよね?こんな時までくだらない争い持ち込むんだもんね。

 


 「うち以外に支援するところはありそう?」


 「は、幾つかの無所属派の所から救援物資は届いているようですが、兵力は未だ集まっていないようです。」


 てことはうちから兵力出すしかあるめぇよ。

 そして実力のある人・・・・・

 新婚さんには悪いけど、頑張ってもらいますかね。

 ごめんね、ヘレーヌ、ラムト。


 「マリウス、ブランドさんに手紙を書くからそれを渡してくれ。」


 「かしこまりました。」


 「カゲゾウは兵の調整を、あとセキに兵糧の確認させといて。」


 「承知しました。」


 「あ、それと僕も子爵領行くからね。」


 その時、2人の思いが1つになった。


 『いけませんっ!!』


 なんでそんなピッタリハモッてんねん。

 

 「いや、心配してくれるのはありがたいけど、こういう時こそ僕の魔法の出番じゃないかな?」


 「確かに、アシュラード様の魔法は強力です。ですが、余りに危険が過ぎます。まだ群れの詳しい情報も入って来ておりません。もし、貴方様に何かあってからでは遅いのです!」


 マリウスの熱弁にカゲゾウがうんうんと首を縦に振ってる。

 いやぁ、でもですね?1,2発デカいのぶち込んで相手怯ませられる方が絶対に被害を減らせると思うのですよ。

 それに前線には出ませんよ?怖いですからね。



 何とか2人に分かってもらえるよう丁寧に説明する。

 ですが、2人とも中々納得してくれません。

 う~む、如何しましょうかね。


 悩んでいると、父上が入って来た。


 「アッシュ、揉めてるってことは行く気かい?」


 ばれてーら。

 流石父上、よく分かっていらっしゃる。

 

 父上にもさっきと同じ説明をする。

 父上は渋い顔をしている。そりゃ跡継ぎを危ないトコに出したくないわな。

 どうすっかなぁと思っていると


 「分かった。行っても良いよ。」


 と、まさかの言葉を頂きました。

 2人もこれには大変驚いた様子。

 何よりアシュラード君が一番吃驚してます。


 「本当ですか!?」


 「ああ、ただし、2つだけ約束を守ってもらうことが条件だからね?」


 条件とは何ぞや??


 「1つは護衛を常に傍に置いたまま、後方からの魔法支援に徹すること。」


 これは当然だろう。


 「もう1つはもし旗色が悪くなったら、何を置いてもその時点で離脱すること。」


 それって、つまり


 「自分の命を最優先に、言い方は悪いけど他人の命は切り捨てるってことだよ。これが貴族なんだ。アッシュにできるかい?」


 へヴィーだな。 

 そんで、父上の目が何時になく本気だ。

 笑って誤魔化せる感じじゃない。



 俺は何れ小さいなりの男爵領を治めることになる。そんな俺が死ぬことは決して許されない。

 例えその為に何十、何百の人が死のうと。

 そう言う事なんだろう。


 男爵つっても貴族は貴族。民を導く責任がある。

 場合によってはその責務を果たす為、導くべき民の命を切り捨てる覚悟を持てってことですか。

  

 良いでしょう。

 要はこう言う事でしょ?


 「僕が頑張って、助けられる命拾えるだけ拾えりゃ問題ないってことですよね?」


 父上は俺の言葉に驚いていた様ですが、笑って


 「全く、僕の話なんか全然聞いちゃいないんだから。」


 なんて言っちゃってくれちゃいました。


 親不孝な息子でごめんなさい。

 ですが、不肖アシュラード君、覚悟を決めました。



 「必ず、生きて良い報せを持って帰ります!」



 

 その2日後、俺は救援部隊を連れて子爵領へ向かった。


 

 その時、イリス、オルトーにはお土産を頼まれました。

 あれ?兄ちゃん今から戦地に行くんだよ?

 え?兄様なら大丈夫。だからお土産ちょうだいって?

 嬉しくない訳じゃないんだが・・・

 何か目から塩水が。しょっぱいぜ!







 

 





 ヒロインは一体何処にいるのだろうか?

 国内、国外、将又人外?


 うまひにも分かりません。

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