閑話 lonely only
閑話のタイトルに毎回悩みます。
どうしても一捻りしたいのですが、気付けば何時も安直な感じに・・・
今日まで読んで下さった皆様ありがとうございました!(最終回感)
では、どうぞ。
綴り間違えてたので直しました。
失礼しました。
我々はゲイン子爵領へ向かっている。
今はとても清々しい気分だ。
「殿下、とても嬉しそうに御座いますな?」
爺が尋ねて来る。
その雰囲気は男爵領を訪れるまでの疲れ切った姿とは異なりとても健康そうだ。
「まあな。爺も大分顔に生気が戻ったな?」
「そうですな、男爵領では大分気を遣って頂きましたしな。」
あやつから頻りに美味いものを進められて食べていたからだろう。
口では言わんが感謝している。
爺は我の大事な臣なのだから。
「我はまさか魔法や武の鍛錬をするとは思わなんだがな。」
その爺は男爵家の者達の鍛錬にまで参加したのだ。
今は一線を退いてはいるが元々爺は武官だった。その血が騒いだのかもしれん。
勿論我も参加した。
地獄であった。
外から見ている分には我でも大丈夫だろうと思っていたのだ。甘かった。
あやつが「地獄を見ることになりますが構いませんね?」と言った意味が分かってしもうた。
兵士や竜人、果てはスライムにまでやられ散々であった。
「殿下、配下に豪の者を加え、我々も鍛えましょうぞ。」
爺の気が高まっておる。羽目を外し過ぎたか?
だが、その言い分も分かる。
我には力がない。この場合の力とは人だ。
味方の数が少なすぎるのだ。
ならば質を上げようとするのは決して過ちではない。
我が王位を目指すなら、だ。
正直、我は王位に興味はなかった。
物心付く頃には兄と姉がいがみ合っておった。
我が話し掛けても2人は碌に相手にしてくれなんだ。
2人とも我の事を競争相手としか見ていなかったのだ。
だから、我は在り方を変えた。
悪戯や城を抜けだしたりして、周りの者を困らせるようになった。
当然、我の後ろに回り派閥を作ろうとしていた連中は消えて行った。
こうすれば、我が王位を継承することはない。
となれば、兄や姉は振り向いてくれる。そんな甘い考えだった。
兄や姉の態度は変わらなかった。寧ろ、より冷たくなった。
その視線は競争相手が減ったことへの安堵と馬鹿な事を繰り返す我への侮蔑しかなかった。
思えば、我はこの時全てがどうでもよくなった。
父母には滅多に会う機会はなく、相談もできず、兎角暴れた。
使用人達に呆れられようと陰口を叩かれようと関係なかった。
爺や直臣の奴らは必死に諫めてくれた。
だが、それでも我の心に空いた穴は埋まらなかった。
そんな時だった、アドバンス男爵家の事を聞いたのは。
その噂の中に気になるものがあった。
曰く、男爵の息子は魔法の才に優れ、更に領民と農作業をする、との事だった。
貴族達はこれに眉を顰めていたが、我は無性に気になった。
それからと言う物城下に降りて民の事を観察するようになった。
その者達は裕福ではない。それでも一生懸命に働いて毎日を生きていた。
その時に、とある老婆に声を掛けられた。
「坊や、何をそんなに悩んどるんだい?」
我は答えた。
「お主らはこの様な生活が辛くないのか?」
老婆は笑って言った。
「ああ、貴族の坊ちゃんかい。私らの精一杯がこれなんだよ。これ以上を望むなら国王様に頼むしかないね。」
思えばこの時からだったのだろう。
我が国と言う物に興味を持ち始めたのは。
城下の降りてはたくさんの民と触れ合った。
民達は様々な顔を持っていた。
泣き虫な者。親切な者。ぶっきらぼうな者。調子乗りな者。
決して裕福とは言えない者達ばかりだったが、皆の生きる姿はとても貴かった。
そして何より驚いたのが、孤児の存在だった。
こやつ等は靴磨きに銭拾い、生きることに必死だった。
我は銭拾いをする一人に聞いた。何故その様なことをするのかと。
その者は我を見て一言
「てめぇには一生分かんねぇよ」
初めてだった。
そこには呆れと確かな怒りがあった。兄達のような蔑みではなかった。
考えればすぐに分かることだった。
彼等には親がいないのだ。
生きる為には金が掛かる。金を稼ぐ親はいない。
ともすれば自然と道は決まるのだ。
それからというもの、我は孤児たちの元を何度も訪ねた。
最初は碌に相手にされなかった。罵声も浴びせられた。
それでも我は会いに行った。
その間に政についても必死に考えた。
彼等の為になることを。
それでも我には何も見つけられなかった。
そんな時、訪問の儀が行われることになった。
これは幸運だと思った。
自領を数年で盛り上げた男爵、そしてその息子ならば何か良い考えを思いつくかもしれない。
そして我はアドバンス男爵領を希望した。
兄は宰相の家があるビトレイ侯爵領を、姉は公爵の家があるパトリオット公爵領をそれぞれ第一に希望していた。
そして我は男爵領に着いた。
すると待っていたのは希望した通り男爵の息子アシュラードだった。
見た目は我と変わらぬ大きさだったが、その落ち着きは風格すら感じさせた。
我の服装に一瞬驚いていたが、すぐに持ち直したのも見事だった。
勧誘したがきっぱりと断られてしまった。
だが、しっかりと我の目を見て話すあやつの姿勢に何故か嬉しさが湧いて来た。
男爵邸にて朝食を取り、その後奴の妹と弟と顔を合わせた。
奴は頻りに自慢して来て鬱陶しかった。
だが、羨ましくもあった。
我が求めて来たものが其処にはあったのだ。
領内を一緒に回っていると、領民が奴に兎角声を掛ける。
奴も笑顔でそれに応じ、どんどんその手に野菜を渡されている。
噂には聞いていたが此処まで領民に慕われているのかと脱帽した。
無遠慮に頭を撫でられたりしたが不思議と嫌な感じはしなかった。
そして奴が陰で笑っていたので、何れ仕返そうと心に決めた。
それからスモー祭壇と言うところに行った。
奴曰く祭壇と言う事だったがどう見ても闘技場の類だった。
そしてその祭壇では男たちが掴み合って何やらやっていた。
聞く所によると、スモーという掴み合って相手を地面に降した者が勝者となる闘技らしい。
奴に誘われ一勝負してみた。
すぐに地面に手をつかされた。
奴は勝ち誇った顔をしていた。正直、イラッとした。
それから何十回も勝負してコツを掴んだ最後の方は勝てるようになっていた。
水を飲んでもう一勝負といきたかったが、周りの男達から燃え盛る炎が見えたので、その場を去ることにした。
そしてお目当ての一つ食い倒れ通りに向かう途中、それは起こった。
匂いに我慢できず、我が走り出した瞬間、我は体の自由を失った。
原因は奴の魔法だった。
衝撃だった。魔法の才があることは聞いてはいたが、
我よりも歳の若い奴が詠唱もせず即座にあのような魔法が使えることには驚きしかなかった。
魔法について奴は懇々と説明してくれた。
そしてこうも言った。
「ラスカルも自分の先を信じ努力を積み重ねて下さい。努力は決して無駄にはならないのですから。」
恐らく奴には我の置かれている状況が分かっていたのだろう。
気遣いが感じ取れる言葉だった。
奴には礼を言った。
我はその時初めて奴をアッシュと呼び捨てにした。
奴は驚いていたが、仕返しとばかりに
「いえいえ、友として当然の事を言ったまでですよ。」
と言い返してきた。
嬉しかった。
我の軽口に軽く受け答えしてくれたのもそうだが、
何より友と言ってくれたことが最も嬉しかった。
2人で照れ隠しに笑った時は涙が出そうになった。
危なかった。見られていたら、あやつはここぞとばかりに我を弄ったことだろう。
「・・・・んか。殿下!」
いつの間にか考えに耽ってしまっていた。
爺がうるさい。
「すまんな。考え事をしておった。」
「全く。それよりこれからどうなされるのですか?」
爺にしては踏み込んだ質問だ。
これからと言うのは間違いなく王位継承についてのことだろう。
「我は我の道を往く。爺、これからも頼むぞ。」
「答えになっておりませんが、まぁ良しとしましょう。」
細かい奴だ。
だがそれでこそ爺だ。
青空を見ると、
出立前奴に掛けられた言葉を思い出す。
「ラスカル、君は君らしく馬鹿やってりゃ良いんだよ。困った時は昨日話したように僕を頼れ。助けてやるさ。なんせ君は僕の友なんだから。」
全く、奴には驚かされてばっかりだ。
ゲイン子爵も奴と交流があるようだし、奴の悪口で盛り上がるとしよう。
一行は子爵領へ向かう。
その足取りはとても軽やかだった。
「へっくし!!」
「坊ちゃん、風邪ですかい?」
「うぃ~、いや、なんか急にね。」
この時アドバンス領で1人の子どもが大きなくしゃみをしたのを王子は知らない。
ラスカル回でした。
登場から閑話まで何か知りませんが早いですけど、お気になさらず。
とりあえず、連日投稿はここまでになります。
切りも良いし(?)第1部完と言った感じで・・・(;^ω^)ダメカネ?
次話を何時投稿するかは未定です。
1話が出来る毎に上げるか、将又数話まとめてホイッと上げるのかそれすらも決めてません。
それ以前にやらなきゃいけないことも山積してますので・・・ハァ
こんな計画性の欠片もないうまひではありますが、どうか気長にお待ちいただければと思います。




