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第29話

 今日は色々とやらかしてしまいました。

 コンビニで追い抜きしちゃった方すみませんでした(;´Д`A ```



 朝食を取り終えると早速街に出ることになりました。

 そして王子から1つお願いがありました。

 

 それは、街の中ではただの貴族の息子・・・・・・・・・ラスカル・・・・として扱って欲しいと言う事でした。

 勿論、グルソンの爺さんや父上達は猛反対したさ。

 一国の王子をそんな扱い出来る思考を持つ者はこの世界にはほとんどいないだろう。

 俺は別に構いませんが。


 結局、王子に押し切られ「アドバンス家と旧知の貴族の子」という設定で行くことになった。

 そして、僕ちんには歳も近いからと言う事で「呼び捨て」で「敬語も無し」となりました。

 いやぁ、そこら辺に気を遣わなくていいのは正直ラッキーですわ。

 父上達からしたら気が気じゃないだろうけど。


 

 イリス、オルトーとも顔合わせを行いました。

 うちの妹、弟は可愛いでしょう?と自信たっぷりに聞いたら、大笑いされ「兄馬鹿も此処まで来れば立派だな。」等と言われてしまった。

 解せぬ。


 ただ、その時ちらりと見せた何処か寂しそうな顔が気に掛かった。


 最後にうちの最終兵器モッチーとご対面した。

 

 「ふむ、面白い。我の僕になるか?」


 等とふざけたことを抜かしおったので、後で彼にはライゼンでさえ「美味いが二度食べようとは思わん」と言わしめた激辛料理をプレゼントしようと思う。

 決して仕返しなどでは御座いませんよ?

 100%善意からです。



 それで、現在我々は領内を見回っています。

 領民のフレンドリーさに王子、その護衛達もいささか驚いているようです。

 採り立ての野菜とかをお裾分けしてくれる訳で、僕ちゃんの空間拡張バッグがパンパンになりそうです。


 「あれまぁ~、坊の友達かえ?」


 「う、うむ。そうだ。」


 「そうかね~。よう来たねぇ~。」


 そう言って王子の頭を撫でる近所の婆様。

 王子ですら抗えない婆様パワー恐るべし。


 王子が圧倒されている。

 駄目です。腹筋が爆発する。ブフォ

 

 ギロリ


 ピューピュピー

 睨まれちゃいました。

 知らない振り~



 婆ちゃん達の群れを抜けると次に向かったのはスモー祭壇。

 ご想像の通り、相撲トーナメントで使用した土俵である。

 この祭壇にお布施はいらない。

 一番、勝負を取るか、祭壇(土俵)に向かって手を合わせるだけで良いということにした。

 この気安さが人気で、祭壇では毎日のように相撲が取られている。


 王子には相撲トーナメントの始まりから説明しておいた。

 そしてそれを聞いた王子は何か考え込んでいる。


 「アシュラード、此処は闘技場ではないのか?」


 「ラスカル、それはちょっと違う。これはあくまで神への供物を供えるための祭壇なんだよ。この場合の神って言うのは存在しないものでね、そうすれば権益を求めて近寄って下衆共が近寄って来ることもないし、何より純粋に民が楽しめるんだよ。」


 「成る程」と王子が再び興味深げに相撲を取る若者たちを眺める。

 相撲やってみたいのかな?


 「ラスカル、相撲やってみる?」


 「良いのか?」


 「ああ、相手は勿論、僕だ。」


 「ふん、負ける気がせん。」


 そう言って始まりました一番は呆気なくアシュラード君が勝ちました。

 決まり手は叩き込み。開始と同時に突っ込んできた王子の肩を見事に叩き込んでやりました。

 何か言ってるけど、負け犬の遠吠えでっせ。


 「もう一回だ!」


 仕方ない。受けてやろう。



 ◇◇◇



 それからは死闘となった。

 技はこちらに一日の長があるが、力は向こうの方が強い。

 最初の方は圧倒していたが、力技に持ち込まれるとどうしようもなく、次第に勝負は拮抗して行った。

 結局、30回近く勝負する羽目になった。


 「はぁ、はぁ、こ、今回は、はあ、僕の勝ち、です、ね?」


 「何を、言うか。はあ、最後は、我が、はあ、勝ち越して、いたぞ。」


 しんどい・・・・・・・

 何故こうなった?

 俺は悪くない。日本男児の血が騒いだだけだ。

 やっぱり王子が悪い。そうだ、そうに違いない。


 「アシュラード様、お水に御座います。」

 カゲゾウが水を持って来てくれた。お礼を言って、一気に飲む。

 王子もグルソンの爺さんに水を貰って飲んでいた。


 「ふう~。」


 大分、落ち着いたぞ。

 ん?男共がぎらついてる。

 俺らの相撲に中てられたのか?

 だとすると、流石にこれ以上いると他の人に悪いからな。


 「ラスカル、そろそろお暇しよう。」


 王子も察したようで、俺達は譲ってくれた人達にお礼を言ってスモー祭壇を後にした。



 そこから、食い倒れ通りに向かっていると仄かに香ばしい匂いが漂って来た。

 これは焼き鳥だな。

 そんなことを考えていると王子が突然走り出した。

 

 「ちょい待ち」

 アースバインドを即座に発動しロープ状の土で手足を封じる。


 『!!』


 いかん。遂やってしまった。

 後悔はしているが反省はしない。

 

 皆さんが固まってらっしゃいます。如何しましょうかね。

 とりあえず、魔法を解除する。

 すると、つかつかと王子が近づいて来てガッと肩を掴まれた。


 「何だ!!今の魔法は?」

 喰いつくのそこか。

 怒られるかと思った。

 本気で事案ものだもんな、今の。


 「あの~、自分で言うのもアレなんですが、怒らないんですか?」


 「ん?ああ、そんな事どうでも良いわ。それよりも其方の魔法だ。それより何だあの速さは?」


 目が滅茶苦茶輝いてる。

 目の鋭さと相俟って怖いですって。

 面倒臭いけど仕様がないか。


 「そ、そうですか。あれは日頃の訓練の賜物ですね。まず、魔法の制御を徹底的に鍛え上げます。先ず具現化する魔法の形、大きさを思い通りに作り出せるようにします。これは頭で鮮明に想像できる位やり込んで下さい。」


 そう言って、水球を一つ手元に出し、形を星型にしたり大きさを変えたりして、実践して見せる。


 「これが自由にできるようになったら、次に魔法の操作に移ります。例えばこの水球をっと。」


 ウォーターボールを自分の周りで周回させ、どんどんスピードを上げていく。

 皆がおお~と声を上げる。

 俺は奇術師か何かかな?


 「この様に軌道から速さの調節までしっかり訓練して下さい。」


 水球を消し、説明を終える。

 王子は今一つなご様子だ。


 「確かに、地道な訓練の賜物であるのは分かる。だが、それを考慮しても其方の魔法は異常ではないか?」


 鋭い。

 確かに訓練はやった。俺は更に各魔法の才を持っている。だからこそ、あそこまでスムーズに魔法が発動でき、操作できるのだ。

 うん、俺もやっぱりチートなんだなと改めて実感する。


 「そう言われてしまっては、何も言えませんね。もしかしたら、才と言う物が自分にはあるのかもしれません。ですが、その才も努力せねば実を結ぶことは無いのです。ですから、ラスカルも自分のを信じ努力を積み重ねて下さい。努力は決して無駄にはならないのですから。」



 ラスカルは黙って俺の言葉を聞いていた。

 その表情は真剣で迂闊に触れれば、切られてしまうのではないかと錯覚するほど鋭いものだった。

 やがて、その気を収めると


 「うむ、正にその通りだな。礼を言うぞ、アッシュよ。」


 と言ってにやりと笑った。

 愛称でいきなり呼ばれたので吃驚してしまった。

 言ってくれるじゃないですか。

 ならば、

 

 「いえいえ、友として当然の事を言ったまでですよ。」


 ラスカルも虚を突かれたようで瞳孔が開いているのが分かる。

 にやりと笑い返すと意図が分かったようで、

 そして2人で大笑いした。

 周りの人達はノリに着いて来れず、ずっと空気だった。



 その後、食い倒れ通りにて色んな店を冷やかしたり、買い食いしたりしてその日は終わった、かと思いきや鍛錬はなくならなかった。


 チッ


 「ほう、今日はまだまだイケ(逝け)そうだな。よし、やるぞ。」


 ちょっと待って、ライゼン。

 イケそうがなんか変じゃなかった?

 誰かぁ~へるぷみぃ~


 ドカッ!バキッ!!ズドーーーーーン!!!

 ドサッ!


 結局、いつもの様にズタボロにされました。



 その2日後、ラスカル一行は伯父の領地へと去って行った。

 これから幾つかの貴族領を回って王都に戻るとの事で、グルソンの爺さんの胃が持つか心配になった。

 胃薬出しとこう。

 


 これからはもっと忙しくなる。

 頑張れよ!ダチ公!


 そして季節は巡って行く。




 次回で連日の投稿は一旦ストップとなります。

 そして次回は閑話になりますので、ご注意を。

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