第23話
やらかしました。
何を思ったのか、既に購入して読み終えた本をまた買ってしまいました。
シリーズもので「あ、新刊じゃん」と思って買ったらこのざまです。
皆さんも買い物の際、うっかりミスにはお気を付け下さい。
確認大事!!
さぁ、人も次第に集まって来ました。
とりあえず、試しに兵士達でお手本を見せたり、何回か模擬試合を取らせたりしてます。
最初の目的と思いっ切り違う方向に進んでいますが、まぁ良いんじゃないでしょうか。
参加者はとても気合が入っています。
思い付きと言うのも馬鹿には出来ませんね。
序でに観客席も即席で造りました。
勿論いつもの土魔法で。
そして空地がいつの間にか闘技場っぽくなりました。
これって勝手にやって良かったんでしょうか?
国の法律に引っかかってたら・・・・・・・・・・・
まぁ、いざとなれば魔法で元通りにすればいっか。
「アシュラード様、準備が出来ました。」
カゲゾウが報告して来る。
「分かった、そっちは任せるよ。」
カゲゾウは頭を下げると戻って行った。
では、参りましょうか。
土俵に上がると、一気に喧騒が止んだ。
俺の傍にはマックスとライゼンが控えている。過保護だなぁ。
「では、これより第1回フロンテルム杯相撲トーナメントを開催します!!」
と宣言する。
先程とは異なり今度は歓声が上がる。
うんうん、良い感じだ。
「今回は優勝者にモーイの館で使える無料食事券をそれ以外の上位三名には賞金をアドバンス家が用意します。皆さん頑張って下さい。」
更に歓声が上がる。
参加者・観客ともに盛り上がってます。
良いですよぉ。
「では、早速試合に移りたいと思います。」
そして始まった相撲トーナメントは思いの外盛り上がった。
恵まれた体格で力押しする者。
巧みに相手の手を捌き、隙を見て相手を降す柔の者。
泥臭く耐えて勝ちを拾う者。
その戦い方は十人十色で見ているこっちとしても十分面白い。
戦いで気分が高揚した者が相手を降した瞬間「フライドモーイはケチャップじゃー」とか「そのままが一番だぁー」とか叫ぶもんだから観客にも受けちゃって。
そしてカゲゾウに何をお願いしたかと言うと、
「さあさあ、観戦しながらフライドモーイはいかがかね~」
「モーイチップスとエールもあるよ~」
そう、売り子さんを近隣の店から手配してもらっていたのです。
スポーツ観戦では欠かせませんよね?
売れ行きも好調なようであちこちで声が掛かっているみたいです。
アリサやヘレーヌにも手伝ってもらってます。
可愛い子が売り子やってると買って上げたくなってしまう悲しい男心、これを利用しない手はないのです。
セクハラなどをさせない為近くには兵士を配置している。
ヘレーヌにはブランドさんが鬼の顔して張り付いてるから大丈夫だろう。
ってか、若干営業妨害気味。
「かぁ~、こりゃいけね~や。ついつい飲んじまうぜ。」
おい、そこの真昼間からエール飲んでる駄目護衛。
「マックス君、昼間から随分良い御身分ですね?」
「ゲッ、坊ちゃん!失礼しやした。」
エール飲んで気が緩んでたな。
よかろう。こっちも最終手段を行使させてもらおう。
「大丈夫です。きちんとミッシェルさんに報告しときますから、安心して下さいね?」
ミッシェルは仕事に対して非常に真摯なので、例え恋仲であったとしてもこのことを知ったらマックスに容赦はしないだろう。
一体、何を安心しろと言うのでしょうね?
流石にやばいと思ったのだろう。
必死に懇願して来る。
だが、許さん!
「坊ちゃん、それだけは勘弁して下さいよぉ。」
「君はちょくちょく手を抜きますからね。これはそのツケだと思って下さい。」
と笑顔で切り捨てます。
何故か周囲が大爆笑している。
面白い要素が見当たらないんですがどうしてでしょう?
ね、モッチー?
プルプル
そうだよなー
よく分かんないな。
気を取り直して、トーナメントに戻りましょう。
ベスト4が出揃ったようです。因みに大会開催のきっかけになった2人は仲良く1回戦敗退で、今は2人で楽しそうに観戦しています。
1人目は農家の長男モージ、
残った4人の中で最重量でここまでは全ての対戦相手を豪快に投げ飛ばして勝ち進んできた、正に王道の相撲を取る男。勝ち方が派手で全体的に人気は高い。
2人目はドワーフの鍛冶師ガッサン。
身長は低めだが、パワーは他の3人に全く引けを取らず、ここまで全て自分より身長のある者達を倒してきた小さな巨人。小柄な男性からの人気が高い。
3人目は冒険者のリンデス。
4人の中では断トツの細身だが、力もあり何より技のキレが尋常じゃなく、玄人好みの技の相撲で魅せる一筋縄では行かない優男。勿論女性人気は高い。
4人目も冒険者で名前はドナー。
パーティでは所謂タンカー担当で、身長は平均的だが、鍛えられた足腰で粘り強く勝ち進んできた男。彼の相撲は見る者の琴線に触れるようで少数ながら既に熱狂的なファンもちらほらと。
一体誰が勝つんだろうか?
鑑定は使えるけど勝負事の目は俺にはないしな。
「ライゼンは誰が勝つと思う?」
「勝負事は様々な要素が絡まるものだ。それに、このスモーと言う競技自体未知のものだ。正確な予測等不可能だ。」
鬼強くて経験豊富なライゼンを以てしても分からないとは、国技相撲は奥深きかな。
なんちって。
試合に戻りましょうか。
準決勝の組み合わせは
モージvsガッサン、リンデスvsドナー
そして、準決勝第1試合はモージの勝利となった。
ガッサンも粘りはしたが、体格的にもハンデがある上に重量差もあってモージが投げ飛ばして決着が着いた。ここはガッサンには悪いが順当と言った感じだ。
次の第2試合はまさかの展開となった。
試合前の会場内は大方リンデスがドナーを往なして勝利するだろうという雰囲気だった。
だが結果はドナーの勝利となった。
試合の流れとしてはこんな感じだ。
リンデスはこれまで通りドナーに掴ませないまま隙を窺っていた。そして、ドナーの出した手を捌いた瞬間、間合いに入り込み掴んでから素早く投げの態勢に入った。
これで誰もがリンデスの勝ちだと思ったが、これはドナーの誘いだった。恐らくリンデスの取り組みを今までの数試合で研究していたのだろう。
投げの態勢に入ったリンデスを残った方の手で捕まえそのまま共倒れとなった。そして先に地面に着いたのはリンデスの手だった為、ドナーが勝者となった。
これには観客が沸いた。
座布団があったら、宙を舞いまくってるであろう盛り上がりだった。
女性の観客からは悲鳴が男共からは「よくやったぞ」との声が上がっていて兎に角凄まじかった。
決勝は準決勝終了後30分の休憩の後行われた。
これもまた凄い試合となった。
モージが投げようとするのだがドナーが何度も踏ん張って倒れない。
これがまた見ているこっちをハラハラさせるもんだから、場内の緊張感の高さが半端じゃなかった。
試合開始から凡そ2分。流石にドナーも耐えきれず最後はモージが投げて試合は終わった。
だが、会場からは盛大な拍手が起こり、中には感動からか泣いてる者までいた。
そして、気付かなかったがいつの間にか父上まで観戦していた。
母上とイリスはお留守番の様だ。まぁ、身重ですしね。
来年は家族揃って見れたら良いなぁ。
表彰式では4人がそれぞれ呼ばれる毎に拍手と歓声が起こりっぱなしで、本当に大盛況でした。
そして父上が来年以降も相撲トーナメントの開催を決定したと宣言すると再び歓喜の声や拍手が上がってました。
終いには「スモー」コールまで沸き起こり最高潮の盛り上がりでした。
これも親子で話し合って決めました。即決でしたね。
売り子を出せなかった店の店員からも次はうちにもとの声が上がったので来年は屋台が立ち並ぶ光景を見ることが出来るだろう。
と言うかこういう施設勝手に作って大丈夫なのかな?
「大会と銘打って闘技場扱いにすれば、問題が生じる可能性も捨て切れませんが、祭りに使う祭壇扱いにすれば問題は無いかと。」
なるほど本音と建て前の使い分けってやつですな。
それにしても、カゲゾウはやっぱり優秀だ。
ふと気づくと土俵では男達が次々に相撲を取っていた。
並ぶ列には見慣れた顔が、
「おい、キルト。帰るよ。」
「えー、一回だけ、一回だけ。」
何ですかそのおもちゃ屋で「これだけ、これだけだから!」と親に必死にせがむ子供のような態度は。
まぁ、それぐらいなら良いけどさ。
「やったー!!」
そして冒険者っぽいおっさんに往なされてあっさりと終わる。
悔しそうだ。
あ、また列に並ぼうとしてる。
「キルト、一回だけって言った筈だよ?」
「もう一回、もう一回だけ!」
はぁ、もう好きなだけやって下さい。
その後、キルトは更に3回列に並んだ。
他にも子供が何人か列に加わっているのが見えた。
うーむ、来年は日を分けて子どもの部とか作るのも良いんじゃないだろうか。
奥さん用に託児所とかも検討してみるか?
よし、帰ったら早速父上と相談しよう。
こういう楽しい事っていくらでも考えられるな。
あ、政務とかは結構ですので。




