第11話
最近食生活が荒れてお腹を崩しています。
皆様も暴飲暴食には十分にお気を付けください。
再び、王都にやって来ました。
大体1年ぶりくらいかな?とりあえず、ここまでは何の問題もなくやって来れまちた。
相変わらず人がたくさんですなぁ。
社会人になってからは人の多い場所はなるべく行かないようにしてたからなぁ。
1年前もそうだったけど、若干しんどいです。けど、頑張ります!
只今モーイ料理の露店で出稼ぎしております。
最近、王都や他領の店でもフライドモーイやモーイチップスが出るようになったから、稼げるうちに稼ぎましょうという訳です。貴族の子が露店で商売ってやっぱり他人からはみすぼらしく映るんでしょうかね。
けど、笑顔で美味しいと言ってくれるお客さんを見れるから決してみっともない仕事ではないと思うけど。 それに、それ以外にも十分な利があるし。
しかし、この情報が貴族方に伝わったら、また結婚が遠のくな。
まぁ、顔を合わせる度に裏にいる大物さんのことを思い出す嫁さんなんてこっちから願い下げですけど。
ホントダヨ?ツヨガリジャナイヨ?
露店売りを終えて一旦宿に戻ります。
今回お世話になっているのは<赤熊亭>という宿屋。何かうちと因縁有りそうな名前だけどそんなことないのです。名前の由来は此処の旦那さんの容貌から来ていて、旦那さんは正に赤髪の熊と言った感じのナイスガイです。褒めてるんですよ?
この人、気の良いおやっさんタイプの人で新人冒険者や新米騎士の面倒をよく見ているらしい。その為、旦那さんは王都の若い男達の間では第二の親父として慕われているとのことだ。
もし、何も知らない余所者がこの宿屋で面倒事を起こそうものなら、すぐさま物陰に連行され絞られるらしいが、俺はその場面に出くわしたことがないのでそれが言語か将又肉体言語か真偽は定かではない。
旦那さん──マクガイアの料理に舌鼓を打ち、満足して部屋に戻る。
貴族嫌いの者達からは大分キツイ視線を向けられたが、気にしない。
元の世界でも政治家アレルギーの人とかいましたからね。理由は個人によって大なり小なりで好き嫌いってのは自然に生まれるもんですからね。こっちに実害がなければ甘んじて受け入れますよ。
なんてったって僕ちゃんは
「ねぇ、あれ(指差し)」
「え?・・・ぷっ、(クスクス)キモッ」
という地味に残酷な女性の侮蔑の笑いを受けて耐え切った漢ですからね。街中で肌の露出した服装の異性を見掛けて遂、目で追ってしまいそれが相手にバレるという悲惨な目に遭いました。
大したことないって?
童貞の頃だったから辛かったですよ?ガッツリ異性を意識してましたから。異性に対して変に憧れとかもあったんでしょうね。
それでも、童貞を卒業してからは、悩んでいた異性との距離感を自分なりに上手く測れるようになったと思います。モテる・モテないは別にして・・・
仕方ないでしょ!顔面偏差値45程度の顔なんだから。
この話全く関係なかったですね。
失礼しました。
部屋に戻ると、マサから報告を受ける。
このマサもカゲゾウの部下で、細身のカゲゾウとは逆に筋肉質で如何にも鍛えてますって感じのナイスミドルさんだ。僕ちゃんこの世界のイケメン・美女率の高さには神様仕事しすぎですよと一言物申したくなる時が多々ある。
あと、カゲゾウ達を『空忍』と呼称するようにした。
彼等は忍者と言う存在について伝聞ではあるが、同郷さん情報で知っていたらしく大層喜んでいた。
因みに名前の由来は空の様に広く、何処までも届く耳を持つ等と彼等には告げたが、実際はジャガイモに含まれる毒で有名なソラニンから来ている。
俺にしか分からない暗喩で「アドバンス家を喰うつもりなら覚悟しろ」って意味もなくはない。
誰も分からないから、全く意味のない名付けだったかもしれないけど。
「お貴族様達は表立って動く気配はないんだね?」
「ええ。国王と公爵の派閥争いも落ち着きを見せています。ただ、こちらの動きを探っている輩がいるようです。」
「その後ろにいるのが誰かは」
「申し訳ありません。そこまでは」
そこまでは欲張り過ぎか。
実際空忍達は少人数でよくやってくれてる。
「いや、こっちこそごめんね。マサ達には無理してもらってるのに」
「忝く」
マサは頭を下げる。
というか、彼等のこの古風な言葉遣い、やはり同郷さんが手を加えたのだろうか。
名前も和風な人多いし。
また、思考が逸れたな。気を付けよう。
「マサはどうするべきだと思う?」
「はっ。情けないですが、現状維持が最善かと。下手に相手を刺激して不測の事態が起きては目も当てられませんので」
うん、マサが言ってるんだからそうしよう。
決して考えるのが面倒だからじゃないよ?
俺は平凡だ。大した知識もないし、カリスマの欠片もない。だから、優秀な部下に丸投げするんだ。マリウス達だって将来一角の人物になると思ったから青田買いしたんだし。
「では、これまで通り周囲の警戒と情報収集に励んでくれ」
「御意」
マサが出て行くと入れ替わりにマックスが入って来た。
酒臭い。コイツ飲んでたな。
「坊ちゃん、此処は料理も酒も最高ですぜ?」
「うん、確かに料理は美味しかったね。でも、酒は程々にしなよ?いざという時、動けない様だったら遠慮なく肉壁にするからね?」
今世紀最大の笑顔で容赦ないことを言う(よんじゅう)ご歳児。勿論冗談デスヨ?
「ひっでぇなぁ、坊ちゃん。ちゃんと仕事してたのによぉ」
仕事?
マックスを見るとちゃんちゃらおかしいといった感じで
「この宿ネズミがいましたぜ。ちっちぇのが2匹ですがね?」と笑っている。
俺は戦慄した。
マックスが仕事をしていたことに。
「マックス君、ごめんね?僕は君のことを誤解していたよ。君は仕事となればすっぽかして、碌に役に立たない銭盗みの穀潰しだと思っていたけど、違ったんだね」
「そりゃないですぜ。まぁ、酒が好きってのもありますがね?同じ場所で酒を飲んでると何となく分かるんですわ。コイツは酔ってる・酔ってない、ただ楽しんでる・何か別の事考えてるってな感じで。一応、見張りの奴らには伝えておきますんで」
そう言って手を振りながら外に出て行った。
うーん、うちの部下優秀なのばっかだな。
いっそのこと彼等が国治めりゃ上手くいくんじゃなかろうか?
でも、それだと僕ちゃんが楽できないからなぁ。
とりあえず、現状の対策を考えとかないとなぁ。面倒だなぁ。
マリウス連れて来れば良かった。後の祭りってやつですね。
護衛の人達には悪いけど、王都にいる間は頑張ってもらいましょう。
よし!マックス君には日頃のツケを払ってもらう為、馬車馬の如く働いてもらいましょう。
勘違いしないで下さいね?
決して、公私混同なんてしてませんからね?
そして、翌日俺達はネイガードさんのもとを訪ねた。




