第10話
本日2話目です。
お間違えの無いようお気を付けください。
無事、ブラッディベアが討伐されやっと一息つける、
そう思ってた時期が私にもありました。
熊さん討伐から凡そ1か月経った今アドバンス家は領主から使用人まで大忙しです。
政務はこれまでより少し増えたけど、それ程という訳でもないのですよ?
しかし、今度は我が妹の誕生により国内のKIZOKU-SAN達からお祝いの言葉が届けられ、その返事にてんてこ舞いになっているのであります。
フェルシウス王国は王を頂点とし、次いで王族、公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵の順に階級が分けられております。
アドバンス家は、国内でカースト最下層の男爵位。まぁ、会社で言うなら平社員ってところっすかね。しかも、国内のどの派閥にも属していない。普通なら、近隣の貴族ぐらいからしか、お祝いの言葉なんてこないでしょう。事実、僕ちゃんが生まれた時も伯父のゲイン子爵と、近隣のウィズル伯爵からしか祝電はなかったらしい。他の貴族様からは一切連絡がなかったそうだ。まぁ、こっちも喧伝しなかったていうのはあるけどさ。
多分、モーイ料理の聖地として、名が売れたからだろう。
手の平返しとは正にこのことだ。
貴族ってものの図太さを痛感したよ。うちの両親も大変そうだ。
まぁ、うちの影響力が増すのは良いことだけどね。
だけど、嬉しいことばかりではないのですよ、残念なことに。
厚かましいク〇共がうちの可愛い妹ちゃんに縁談をとか言ってきやがりました。
勿論、丁重にお断りしましたよ。ふざけるのも大概にしろってね。まだ0歳ですよ?
というか、下心が見え見えなんだよ。「婚約した暁には我が領でも店を開いて・・・勿論税は我が領のもので」(意訳)とか、「高貴な我が息子の嫁にしてやるから有り難く思え」(意訳)等々、中世の貴族や戦国時代の領主もこんな感じだったのかなぁとある意味感心しているところです。
婚約が決まった訳でもないのに将来の展望を延々と語るって、捕らぬ狸のってやつだよね、ホント。頭の中がお花畑で人生楽しいんだろうなぁなんて思っちゃいましたよ。因みにまだそのお誘いは続いています。
俺にそういう話はなかったです。領民と仲良く作業して、上下関係に緩いというのがマイナス要素らしい。
俺から言わせてもらえば威厳なんて最低限ありゃ問題ないのですよ。大学時代、教習所の教員にいたんですよねー。運転中、ずっと黙りっぱなしで何も言わないくせに、ミスした時だけ偉そうに「あ~」とか「何やってんだ!!」とか言うおっさん。無言っていうのも一種の重圧で辛い人には辛いもんね。俺は教習1回目でそんなおっさんに当たって、当時はイライラしたもんさ。
この世界だって、人に感情はある。貴族だからと偉ぶったところで得られるのはちっぽけなプライドと領民の反感ぐらいだし。そうなるくらいだったら、俺は今のままで結構です。
とは言ったもののこの世界でも嫁さんどころか彼女もできないんだろうか・・・・・
悲しみのEndlessWaltz!
おバカはこの位にして、
カゲゾウ達が集めて来た情報を整理して、距離をとる奴、ビジネスライクに付き合う奴等々、複数にカテゴリー分けしています。因みにカゲゾウ達は表で活動する際、黒の装束とかは着てないからね。・・・・・まぁ、裏の場合は着てるけど。
で、ざっと情報を整理した結果、国内の貴い方々は多かれ少なかれ腹に一物ある輩ばかりということが分かった。そんな人でなければ、貴族は務まらないのかもしれないけど、どうしても付き合うのに忌避感はあるよなぁ。それも俺が現代の感覚を持ってるからだろうけど。
これからも情報収集には力を入れて行こう。
あと防諜もしっかりしておかないとな。カゲゾウの報告では領内に幾らかそういうのが紛れ込んでるらしいし。あぁ、大変だ。
早く成人してエール片手にフライドモーイ喰いてぇよぉ。
そして、あっという間に半年が過ぎ、大分領地も落ち着きを見せ始めた。
うるさい貴族方も漸く静かになったし、俺も5歳になったし、めでたいね。
そして、俺はカゲゾウから国内の情勢についての説明を受けている。
1年以上の時間を掛けて集めたから、情報の精度はそれなりに高いと思われる。
フェルシウス王国には大きく分けて3つのグループが存在する。
まずは国王派。この派閥は国王主導と言うより、国王という神輿を担ぐ文官・騎士などが中心らしい。国王の評価は中の下といったところらしい。特に悪い所がある訳ではないが、逆に良い所もさして見受けられないといった人物らしい。
次に公爵派。この国には公爵家は1つしかなく、恐らくキャラメイクの時見かけた「暗躍する公爵」はココのことだろう。表には聞こえてこないが、裏に潜るとかなり怪しい噂が聞えてくるらしい。この派閥の特徴は単純だ。公爵という核が傘下の貴族達を手足の様に使うといった感じで、まぁ、所謂ワンマンですな。王族を除く国内貴族トップの公爵さんだからか派閥の大きさもそれなりと言うことです。
最後に、無所属派。まぁ、上に挙げた2つの派閥に所属していない貴族達の総称ですな。このグループの大半は風見鶏で、自分達の利を最優先に国王派、公爵派の間をウロウロしている。うちやゲイン子爵もこの無所属派だが、国王派、公爵派共に距離を置いている状況だ。
先のマイシスター勝手に頭の中で争奪戦は、ここ1,2年で名の売れて来たアドバンス男爵家を自陣営に引き込みたいというはた迷惑な思惑からだろう。婚約を申し出て来た8割がどちらかの派閥に属する家だった。流石に派閥のトップである国王、公爵はしゃしゃり出て来なかったが、そうなればうちも従わざるを得なかったかもしれない。しかし、そこまで行くと脅しになっちゃうし、これからの陣営拡大の足枷になるのは間違いない。
ちょっと変な例えだけど、自分の勤める会社のお偉いさんから「自分の娘と見合いを」と言われると嫌だと思っても断り辛いだろう。そして、その話が社内や取引先に伝わったら、「あの人は社員に自分の子とのお見合いを強制した」というレッテルが社長に貼られることは想像に難くない。これは風評的にマイナスだろう。
何が言いたいかというと、どちらの派閥も強制はできないということだ。手段を選ばずアドバンス男爵を陣営に引き込めば、他の貴族からそっぽを向かれ兼ねないのだ。こっちとしては、助かりました。できれば、こんな騒動起こさないで欲しかったですけど・・・・
「それで、表向きの勧誘合戦は終わったということは・・・」
「はい、裏での工作も何れ始まるかと」
カゲゾウからの聞きたくなかった一言に頭が痛くなる。
まぁ、口で効かないなら実力行使でとなるよなぁ。今まで全く気に掛けてなかったんだから放っておいてくれよ~。
それで、これもこの国というかオリシスという世界では極々当たり前のことで、決して短絡的とは言えないんだよね。
戦国時代も俺に従わなければ攻め滅ぼすぞ!みたいな武士はたくさんいたし。当時はそれが常識だったみたいだし。
「どういう手でくると思う?」
「普通なら弱みを握ろうとしますが、ご領主様は後ろめたいことなど一切なさらない方なのでその手段はとれません。となると頼らざるを得ない状況に持ち込もうとする筈です。」
考えられるのは、
「領内での工作活動ぐらいかな?カゲゾウは他に何が考えられると思う?」
「男爵領外での妨害もあるのではないかと。酷い場合フロンテルムを行き来する商人への盗賊行為も十分考えられます」
そこまではしないだろ、とは言えないかぁ。
正にテンプレな「ブヒブヒ、俺様偉い」のご貴族様だもんねぇ。
対策考えないと。
そんで、お金も貯まったし、そろそろあの人に会いに行こうかな?
少し政治色出してみました。
因みにアッシュ君は妹に激甘です。
毎日、顔を見に行っていないいないばぁをするぐらい甘々です。




