第92話
暑くて溶けるゥゥ(ヽ''ω`)
そいでは、どうじょ(/・ω・)/
「んだば、ホイッ!」
相手は格上なんだから、手段は選ばず参りましょう。
地面から石礫をお見舞いです。
え?身体強化しただろ?拳でタイマンじゃなかったの、って?
そんな脳筋な要素は真っ先に排除です、はい。
「ッチ!」
しかし奴さんもかなりの化け物っ振りで、全弾躱してるんですが。
そして距離を一気に詰めて来ます。
「こんだけか?」
イケメンの余裕の笑みってイラッて来ますよね。
顔がイイからってひけらかしおって、って思いません?
なんか、こうボコボコにしたいですよね、顔面。
「んな訳、ないでしょ。泥門!」
相手は人間。
さっき、馬から降りてるから、必ず地面に足を付けなきゃならない。
これは、人間にとっての常識であり絶対。
だから、その足場を崩す。
お得意の足場ドロドロ戦術なり!
「ッ、シッ!」
ワイルドマンは後ろに跳んで、泥沼を躱す。
おい、ちょっと待てや。今、地面に足付けずにバックステップしなかったか?
ちょ、チート!それチート!チート反対!
「なんつうか、陰険だな。お前」
うるせぇ、顔も良くて武力チートのアンタに勝つためにはこれくらいせんと話にならんのじゃ!
「けど、その程度なら──すぐ、終いだぞ?」
背中にゾゾゾと悪寒が蠢いた。
ヤバい。
「二重障壁!」
咄嗟に空間魔法で前方に二つの空間を作る。
それとほぼ同時に、それらが砕ける感触があった。
その場所には男が突き出した拳が添えられていた。
「ん、こりゃあ、見えない壁か?まだ、手札持ってんのかよ」
相手は少し意外な顔をしているが、こっちはパニック一歩寸前だよ、この野郎!
何処に素手で空間魔法をぶち抜く人間がいるんだよ!
・・・ライゼンもそういやぶち抜いてたっけ。いたよ、凄い身近に。
「ホント、この世には化け物がゴロゴロいるんだなぁ」
思わずぼやいてしまったぼくちゃんは悪くない。
うん、悪いのは非常識な奴らだ。
ワイの一般的な感覚は間違っていない!
「何だ、随分と余裕な口振りだな」
余裕なんかねぇよ!と声を大にして言いたいが、生憎そんな余裕すら残されていないんです。
「アースバインド!」
「円脚!」
見事に土の縄がぶった切られました、蹴り一発で。
いや、ホント、頭オカシイと思うんだ。
「手刃羅!」
とか、考えてたら手刀が目の前にィィ!
逸らすっきゃない!
力じゃ勝てない、ならば、
感覚は相手の腕の軌道を弧を描かせるイメージで!
その遠心力で、自分は一回転しながらの
「逆打ち!」
俗に言う裏拳だが、こっちの方が格好良いので。
ガッ!
確実に当たった感触があった。
しかし、思ったより幾分早く当たった気がした。
「良い技だ、しかし、力が足りねぇな」
コイツ、もしや、避けられないと分かって自分からぶつけにいった?
だとしたら、とんでもなくクレイジーだ。
そんなこと、狙ってできるもんじゃない。人には反射という反応が備わっている。熱いものに触れたら即座に手を引っ込めるというあれだ。で、この反射は目の前の危機に対しては大抵の場合「止まる」か「引く」ことに作用する。当然だ、生命防衛機能としては純然ともいえる。
しかし、このワイルドイケメンはその危機に文字通り自ら頭を突っ込んで来た。
間違いなく奴は一種の気狂いだ。
それにこちらとしては、結構本気で頭を狙ったつもりなんですけどねぇ。
それに耐えるって。
まぁ、奴さんも身体強化はしてるんでしょうが。
「アシュラード様、あやつにはユニークスキル、それも身体強化の類のスキルが備わっている可能性がございます!お気を付けを!」
カゲゾウがここで新情報を提供してくれる。
ありがたい、が出来れば今の一撃入れる前に聞きたかった。
聞いていれば、全力フルスロットルで打ち込んだのに。
まぁ、これは俺のミスだよなぁ。彼を攻めることは場違いだ。
「さんきゅー、カゲゾウ」
「ふん。まぁ、いいか。知った所でお前に俺のユニークスキルをどうこうできる訳でもあるまい」
いっついぐざくとりー。
しかし、その言い草腹立つわ~。
よし、絶対泣かす。
「にしても気に食わねぇな、その目」
なんかスゲェ身体的特徴を非難された気がする。
「俺からしたらアンタのその整った顔の方が万倍気に食わないですけどね」
「そういう意味じゃねぇよ。その希望が絶えない目が気に入らねぇんだよ!」
全く理解不能。
理不尽極まりない言い掛かりである。
「練気法!」
身体強化を再び練り直す。
今度はMPを結構注いで。
バシィィ、ドスッ、バン、シュバババババ!
アクション映画もかくやと言わんばかりの拳の打ち合いです。
正直、付いて行けるのが奇跡のような気がする。
「ッラァァァ!」
大振りな一撃!
これは受けずに流す!
「ソイヤッ!」
ガシッ
マズッ、掴まれ
「二度も同じ手は喰らわねぇ、よッ」
ボクッ!
「カハァッ」
息が一瞬止まるほどの衝撃の後、痛みが後を追ってやって来る。
「オラオラオラオラァァ!」
手を掴まれてガードが出来ないので、俺は攻撃を受けるしかない。
不幸中の幸いか、身体強化にMPを突っ込んだおかげで、気を失うことはない。
それでも、痛いものは痛いが。
「しぶといな」
ここで絞め技にでも来てくれればマジもんの肘打ちでもかますのだが、野郎は腕を掴んだまま、打撃をぶち込んで来るので、どうしようもない。
「アシュラード様!」
カゲゾウの叫ぶ声が聞こえる。
ヤバい、意識が飛びそうだ。
このままだと、
「ヅェェェヤァァァ!」
その聞き覚えのある叫びと同時に掴まれていた腕が自由を取り戻す。
「キ、ルト、ない、す、タイミングぅ」
「主は下がってろ!俺がやる!」
俺の前にはキルトが立っていた。
どうやらアインバースト子爵の方は片付いたらしい。
まさかだけど、コロコロしてないよね?
「アシュラード様、失礼します!」
インとホウに捕まれ無理矢理後ろに下げられる。
プルプル!
モッチーが即座にダメージを回復してくれる。
ああ、この光のエフェクト綺麗だなぁ、なんて見入ってしまう。
「イン、ホウ、アシュラード様を何としてもお守りしろ。私はキルトとあの男を抑える」
そう言ってカゲゾウは視界から消えてしまう。
なんだか、頭がボーっとする。
◇
「・・、・キ、アキ!」
「うん?」
「アキ、男はな、ここだぞ!」
懐かしい呼び方だ。
そう言って胸を指しながら笑う人がいる。
父さん
父上ではなく、前の世界で俺を世に降り立たせてくれた人がいた。
相変わらずだね。
「アキ、そっちはどうだ?」
楽しくやってるよ。父さんとしては複雑だろうけど、新しい家族にも恵まれてるよ。
「アキ、恋人は出来たか?」
いんや、第二の人生でも見事に独身、しかも文字通り独身貴族だよ。
「アキ、諦めるな、男は顔じゃねぇ、ここだ!」
父さん、自分が結婚できたからって、息子もそれが出来るとは限らないでしょ?
ってか、そのフレーズ未だにお気に入りなのね。
「アキ、お前は今幸せか?」
うん、俺は幸せだよ、父さん。だから、悪いけどちょっと戻るわ。それを守んなきゃいけないし。
「そうか。アキは俺の子なんだからやりゃあできる。しっかりやれよ」
うん、ありがと、父さん。心配掛けたね。
父さんが俺の頭をくしゃくしゃっと撫でてから名残惜しそうに頬を摩る。
ちょっと恥ずかしかったが、嬉しかった。
そして、次第に父さんの体は薄くなっていき、それとともに眩い光が視界を覆った。
◇
プルプル?プル!
目を開けると目の前にはモッチーがいた。
モッチーのおかげか痛みに関してはほとんどが消え、意識の朦朧さも完全に取り払われていた。
そして、頬には水滴が伝ったような感触と僅かな温もりが残っていた。
「キルトとカゲゾウは!」
顔を上げると、ワイルドマンを二対一で何とか抑えているのが目に入って来た。
しかし、均衡しているとは言え、二人には疲労の色が見える。
「アシュラード様!御二方が時を稼ぐ内に」
「お早く!」
インとホウはそう言うが、俺の向かう先は決まっている。
「練気法!」
身体強化を行う。
不思議と鍛錬中のようにスムーズに魔力が体を駆け巡る感覚を得た。
「アシュラード様!!」
「二人は悪いけど、モッチーを連れて味方の援護に回って!俺は借りを返してくる!」
そう言って走る。
体が軽かった。
父さんに会えたからだろうか?
そうならば、なんて自分は単純な奴なんだろう。
「横槍スマァァァッシュッ!」
ワイルドマンに全力の拳を打ち込む。
ドガンッ!
まるで鈍器同士がぶつかり合うかのような音がした。
だけども、拳は痛くない。
「戻って来れたのか。高級ポーションでも使ったか?」
相変わらずの余裕っ振りだな。
マジもんの化け物でしょ。
「さぁね、でも、今の俺はさっきまでとはちょっと違うかもよ?」
それでも、恐怖や絶望は感じない。
自然のまま、お気楽に。
さて、とりあえず、そのイケメンフェイスに一発入れたるからな、覚悟しろ!
内なる世界で故人に出会う。そこはかとなく漂う少年漫画感。
主人公の前世(?)については閑話で書く予定です。
もしも、モヤモヤさせたらごめんなさいぬ?




