第一話 ー絶対帰還勇者ー
そして、転生は行われた――
ここは、異世界フリーアース、
なぜだか戻ってきちまったらしい。
やはりここで絶対本気で勇者になって、
魔王を倒さなければいけないようだ。
名は"ビビーン"だ。
年齢?
ヤボなことを聞くなよ。18、だ。
名前がかっこわるい?
うっせー、ボケ!!!
これでも名付け親に恩を感じてんだよ。
もっとも名付け親は俺のことを忘れちまってけどな。
今、俺はティータイムをしている。悪いがジャマをしないでくれるかな?
俺は読者のお前に言っている。
「ビビーン!」
フッ、早速俺の下僕が来やがったか。
「ドカッ!」っと鈍い音が聞こえてビビーンは頭をおさえ後ろをふりむく。
「イテーッ!」
そこにいたのは、ビビーンの下僕……
いや反対だ。下僕はビビーンで、あのお方は主人の"カノン・ジーク・エルクェイド"さまだ。
カノンはビビーンの頭をハリセンで叩くと一言。
「読者さまに、ボケとはなんですの?」
「いや、お前には関係ねーだろ!」
すると見よカノンさまがお怒りになり、ビビーンを足蹴になされた。
見よこの怒りよう。
お嬢様はビビーンに往復ビンタをなされたではないか。
「わかった。許してくれ!」
顔がまっかに腫れて痛々しい勇者。
「あなたを地球という異世界から呼びだしたのはアタクシですのよ。それを忘れなきに」。
一回目に会ってるカノンとは違いスゲーわがまま、だ。
正直振りまわされてる感じ。
「勇者ビビーン、何度もいうようですがこの世界は魔物のはびこる世界ですの。充分に気を付けてアタクシを守りなさい」
「へいへい。わかってますよ」
俺は今、絶対本気で勇者をやっている。
そこへ民間人が飛んできて、街の東に魔物が現れたとの情報が入った。
急いで現場に急行するとそこのはゴブリンの群がいた。
数は5体ほどだがなかなか手ごわい相手に苦戦を強いられる。
「どけ、俺の獲物だ!」
そういってかけつけてきたのは、あのギガ・コードだ。
ギガは俺がこの世界に2度来ていることを知っている唯一の人物。
「一度、逃げ出した腰抜けに用はない」
ごもっともだ。
カノンが知っていれば即追放させられていただろう。
何でもあの後階段から転げ落ちて頭を強打し記憶がぶっ飛んでいるらしい。
性格も荒っぽくなっているし。
2度目の転生時にビビーンと名乗ったのは俺自身だ。
「あれだな。ギガ共闘すっぞ!」
「お前と共闘するまでもない敵だ」
ギガは一身でゴブリンの群に剣を振りかざしながら突進していく。
その様子をみてカノンを連れてその場を後にする。
しばし考え込むカノンは口を開いた、
「あなたは戦わないのです?」
「ギガを信じているからな」
その言葉はカノンを刺激した。
頭を押さえながら苦しみだし地面に倒れこむ。
「……戻って……きてくれたのね。ビビーン?」
俺は目を丸くしたわずかだがカノンの、
記憶が戻りつつあったが何者かにまた記憶を消された様子だ。
「大丈夫か?」
「あなたは誰、アタクシの何なの?」
完全に記憶がぶっ飛んだ様子だ。
そこへギガが来てカノンを連れて行こうとした。
「お前にカノンさまを護衛する資格はない」
「教えてくれカノンは一体どうしちまったんだ?」
ギガは何も言わず姿を消した。
俺は過去の自分を呪った、
もしもあの時本気で勇者をしていれば、
カノンを苦しませずにすんでいたかもしれないのに。
拳が血でにじむまで木を何度も殴った。
腰抜けだった自分を変えたい、
忘れられているかもしれないが、
仙人・シドマのもとへと駆け込んだ。