第7話 名前
「はじめまして〜。セトっていいます〜」
『こちらこそ初めまして〜』
「名前、何がいいかな〜? 覚えやすいのがいいですね〜」
『そうですね〜』
「君もおっとり系だね〜。リーフってどうですか? リーちゃんってよびますね〜」
『ありがと〜です〜』
セトは冬の冷たい風が吹く外に来ていた。セトの長く、白い髪が揺らいでいた。普通の人間ではきっと、耐えられないほどの寒さの中にセトは、何事もないような顔で立っている。
名前が決まると、二人は建物の中へと消えていった。
「初めまして! ひのりだよ〜ん!」
『こちらこそ初めまして!』
「君とはじめてあったときから決めておいたんだ、名前。太陽みたいに元気な子だから、サン。どうかな?」
『わーい、わーい、嬉しい。ありがとーひのりちゃん!!』
ひのりたちは1階と2階を結ぶ階段で、名前を決めていた。どうやらひのりは、元から名前を決めていたらしかった。なので、早く決まった。
名前が決まると、集合場所に帰っていった。
「あんた、非科学的ねー」
『・・・初対面で失礼ですわよ』
「まーまー、そう言わないで。あんたの名前は、パンチョ! いい名でしょう?」
『・・・あんた、ネーミングセンスないですわ』
「名前付けてあげただけいいとしなさい。じゃ、これからよろしくー」
『先が思いやられるですわね』
るいたちは屋上に来ていた。適当な名前が決まると、集合場所へと向かっていった。
「あーあ、あたし、やることないのさ」
『アオイ・・・』
突然アオイの後ろから聞こえてきた声。しかし、振り向いてみても誰もいなかった。それもそのはずだ。アオイは2階の手すりにもたれかかっていたからだ。
「おっかしーのさ・・・」
『アオイ・・・』
今度はアオイの隣でさっきと同じ声が聞こえた。振り向くと、アクアがいた。
「だ、誰なのさ!?」
『う〜ん、 君の守護霊・・・かな?』
「そっ、そもそも、守護霊って何なのさ!? そして、何であたしの名前を知ってるのさ!」
『ま、一応ずっとアオイの中にいるから。みんなの会話を聞いてれば分かる』
アクアは見透かしたように言った。
『君が望むのなら消えるよ。いつでも、消えろというのなら』
「・・・別にいてもいいのさ」
『でも、いつまでもいられる訳じゃないし、寿命の問題もあるから。それまで、仲良くね』
アクアが言うと、アオイも笑って答えた。
「うんっ、よろしくなのさ」
ルナは、アオイから少しはなれた場所に立っていた。静かに、誰にも聞こえないような声で、しかも無表情で歌を歌っていた。その様子を、ノアが眺めている。
『・・・歌、好きなのか?』
「下手だが、好きは好きだ。歌によっては耳に残るのもあるが、そんな歌はめったに聴かない」
『ふぅん・・・』
ノアは黙ってうなづいた。ルナは今度は、薄い笑みを浮かべながら歌を歌い始めた。
「あ〜、ルナちゃ〜ん」
「セト・・・他のみんなはまだか」
「すれ違わなかったですよ〜、まだ時間もありますし」
セトはいつもの笑顔で言った。その肩の上には、リーフが座っていた。
「あ、この子の名前はリーフですよ〜、よろしくしてやってください〜」
「あ、ああ。私の守護霊はノアだ」
「いい名前だね〜うんうん」
セトは首を縦に振った。
「おーい、セト、ルナー!」
「あ、ひのりちゃん」
「あれ、るいはまだなんだ?」
「ああ、まだだ」
「そろそろ来るよね! あ、この子はサン」
『よろしく―!!』
サンは大きな声で言った。笑顔がまぶしかった。
「あー、みんな早いわねー」
「早すぎるのさ・・・」
「あれ? アオイは名前を決めなくたっていいんじゃない?」
「少しアクアと話し込んじゃって」
と、後ろを向いて照れくさそうに言った。
『アオイが話を終わらせてくれなかったんだろう!』
「あ、あははは」
アオイとアクアは、見た感じは息がぴったりのようだった。
ピーンポーン パーンポーン
『葉巻学園の生徒たち―――各自の部屋へ移動してください』
放送が入った。今セトたちがいるのは2階。集まる部屋は3階だ。
「急ごう、みなさん〜」
「うん」
セトたちは急いで階段を駆け上っていった。
「はぁ、はぁ、守護霊たちは飛んでていいな・・・」
『人間のような愚かな生き物に生まれたことを後悔するんだなぁ・・・』
「ノア、そんな風に言うなよ」
『ああ、悪い悪い』
セトたちはやっと3階に着いた。
なんだかんだ言って、会話が多くなってしまい、
申し訳ございません。
次からは気をつけたいと思います。
次もよろしくです。