第35話 だんご虫
現代グループのあらすじ
コゴウは人間界にきた。アオイとのりおの甘ったるい会話を聞いて、赤面し姿をあらわす。そこで戦闘にはいるとアオイは身構えるのだが、アクアはコゴウを言葉だけで追い払う。そして、巨大だんご虫へとむかった。
―現代―
「うわー、触手付きだよ」
『気持ち悪い……とにかく本体を狙おう』
アオイは弓を、アクアは斧を構えた。
アオイの弓は、先が鋭くとがっている。黒で統一されていて、暗いところで戦闘するときにも目立たないようになっていた。
『まず、僕の言葉に従って? せーのの合図で触手のほうに切りかかる。君の弓は、矢が無くても使えるように鋭くなってて切れるよね?』
「うん。じゃ、行こうか」
二人は目を合わせ、頷いた。同時に口を開くと、小声で囁いた。
「『せーの』」
そのかけ声と同時に二人は走り出した。アオイは右側、アクアは左側へ。それぞれの武器をかまえ、触手に切りかかった。アクアのほうはうまくいき、一本切り落とすことができたが、アオイはそう簡単にうまくいかなかった。
「いっ、やあ! 弓、が……」
触手に巻きつかれたアオイは、その勢いで弓を落としてしまった。必死に足掻こうと足をばたつかせたり、両手で触手を殴りつけたりしていた。少女一人の力では触手は簡単に離れない。そんなことにも気がつかず、アクアは次々に触手を切り付けている。
「ちょ、止め……! やだ、やめて……アクアァ!」
アオイに巻きついた触手は、巨大だんご虫の口付近に運ばれた。アオイの大きな声に、さすがにアクアも気がついた。アクアは反対側にいるアオイの様子を見に行くことにした。が、誰もいない。
『アオイ!? 何処にいるの!?』
「上だよ上!! たっ、食べられそうなんだあ! 助けて!」
アクアが上を見上げると、触手に捕まりもがいているアオイの姿があった。アクアは斧をかまえた。そう、今からこれを触手に投げるところなのだ。
「えっ! な、何してんの?」
『これで、触手を切り落とす! 待っててね、今助けるよ』
「む、無茶だああ!」
そう叫んだときにはもう遅かった。斧がアオイめがけて、すごい勢いで飛んでくる。アオイはもう失神しそうだ。
斧はアオイの髪を少しかすり、通り過ぎていった。触手自体に全く被害は無かったが、その向こうのだんご虫に直撃した。だんご虫はあまり気にしていないようだ。
「あ、あれ?」
『ごめーん! もう一回やっていい?』
「やめてよ! 髪かすったよ」
アオイはもう半分泣いている。斧が高速で迫ってくるのは、相当の恐怖だっただろう。それを、もう一度体験する、しかも一発外れているのにもかかわらず。
『信じて、大丈夫。ボクはアクアを殺しはしないよ』
「いや、十分殺しそう」
『まあ、大丈夫だよ。おーい、相棒』
アクアは大声で斧を呼んだ。すると斧は、さっき通ったところをしっかり通って帰ってきた。もちろん、アオイの髪をかすって。
「……かすったんですけど」
『い、今のはボクじゃない! 相棒が悪いんだ!』
アクアは首を大きく横に振り、斧を指差した。当たり前だが、斧の反応はない。
『じゃ、今度は成功させる』
アオイはじっと目を瞑り、成功を祈った。
風を切るような音がして目をあけると、斧は触手に突き刺さっていた。触手からは、緑の液体がとめどなく吹き出している。触手が暴れるたびに、裂け目はどんどん広がっていく。
触手の力はすぐに弱くなり、アオイは無事に抜け出せることができた。だんご虫の体につかまってアクアの投げた斧を呼び寄せ、それに乗ってアクアの元へ帰った。
『もう、アオイのばか! 心配、したよ?』
「ごめん! もう、心配かけない。役にたつから!」
二人はすぐに視線を巨大だんご虫に戻した。