第34話 分かり合うこと
第1グループのあらすじ
セトは呪文を考えていた。ルナにも協力してもらい、やっとのことで呪文が決まった。
早速試そうと、次の目的地に向かおうとするが、上空からコゴウが登場する。
コゴウで試そうとも思ったが、コゴウは運悪く落とし穴に落ちていった。
―第1グループ―
「お、ま、え、ら……」
「コゴウ……しぶといやつだな、お前」
あの短時間のうちに、あんなに深い落とし穴を登ってくるなんて、執念にしか思えない。魔法など使わず、腕と足の力で登ってきていた。
「セト、と言ったか。お前、生け贄にならんか?」
「わ、私!? というか、なんの?」
「そろそろ神、もとは人間だったのだがな。目覚めるのだ。生け贄にならんと、力尽くで……」
コゴウが鎌を構え、セトは一歩後ずさりをする。
「我は天に選ばれしもの。世界に光を、我に波動を」
小さく呟き、セトは杖を手に持った。その様子を察知したのか、コゴウはにんまりと笑った。コゴウの鎌が変形する。マイと戦った形とはまた違うのだ。余計に鋭くなっている。
「というか、あの呪文、杖のへんしんように使っても良いですか? ルナちゃん」
「ああ、構わないが?」
「私は、生け贄にはなりません」
コゴウがセトに突進してきた。セトがうまく魔法をコントロールできるのか、それが3人には心配なのであった。セトは、4人の中で1番魔法のコントロールが出来ていない。
「っ、コ、ゴ……」
「生け贄になりたくないんだろう? なら、かかってこい。弱いのならば、生け贄にでもなればいい。さっきも一戦終えてきた。あの結構強い娘の好きなやつが神らしい」
「……その子、ひのりちゃんが言ってた子かな」
今の状況は、セトが圧倒的に負けている。コゴウが飛び、セトが片ひざをついてコゴウを跳ね返す体制になっている。コゴウの目は、本気だ。
「っ、お前が生け贄になれば良い」
「いいや? 私は生け贄にならない。神に仕えるべき存在だからな?」
「生け贄にならないために……私が、神に仕えてやります。そして、あなたが生け贄になればいい話。決定じゃないの?」
セトはしっかりとコゴウを跳ね返す。パワーだけが自慢なもので、たとえ男だろうが大人だろうが、関係無し、手加減無しで向かっていく。
「お前では無理な話だろうな。神に仕えるのは、ふさわしい者だけだからな」
「別になりたくなんか、ない。私は普通に暮らしていたい。みんなと喋って、みんなと笑って。それだけで良いのに……。やっぱ神なんかに、仕えたくない」
セトは歯を噛み締め、コゴウをにらみつけた。一息ついてコゴウに突進するセト。コゴウは余裕の顔でバリアを張る。大きな波動を杖から放ち、その波動は、バリアを破るほどの勢いだった。しかし、コゴウのバリアは破れることはなかった。
「お前の望む、普通とはなんだ」
「え……」
いきなりの問いに、構えていた杖をおろすセト。呆然と立ち尽くし、コゴウの瞳を見る。
「私の望む、普通?」
「そうだ。……私も元は普通に、平凡に過ごしていた。しかし、実の親を目の前で八つ裂きにされたとき。そのときから私は普通に過ごせなくなった。終わり無き、神に仕える生活を強いられた。……私だって普通に生活したい」
コゴウの過去。それはとても悲しく、恐ろしいものだった。セトは、それが自分だったら……と想像し、とても耐えられないと思った。コゴウはそれに耐え、今にいる。その努力をした者を生け贄にすると言ったセトは、ひどく後悔した。
「ごめんなさい……。私、何にも知らなくて」
「……いいんだ。これで、私たちは分かり合えただろう? さあ、来い。お前の全てをぶつけろ!」
「分かりました。しっかりと相手が分かるように!」
セトはもう1度波動を放つ。先ほどより、一段と強力な。
「っく……まだだ、セト!」
「らぁぁぁあああ!」
10秒ほど波動を放ち、杖をおろすセト。二回も一度の戦闘で強力な波動を放つと、さすがに疲れる。そこでセトはいったん攻撃を止め、真っ向から勝負に出ることにした。体勢を整え、コゴウに向かって全力疾走をする。
セトの手は硬いサポーターで覆われていて、どんなに強いものを本気で殴ろうとも割れることは無いようになっている(とても傷ついた場合、ひび割れる場合はある)。コゴウはまたしても強力なバリアを張り、セトの攻撃を受け止めるつもりだ。
セトのパンチと、コゴウのバリア。二つの強力な魔法がぶつかり合い、周りに大きな衝撃をあたえた。辺りは眩しい光に包まれる。ルナたちは何歩か後ずさり、光に包まれなくてすんだ。
「セトッ!!」
ルナの叫びは二人の魔法による衝撃音で掻き消されてしまった。
どのくらいの時間光が発生し、二人はあのままだったのだろう。あの光はまるで、現れなかったかのように全て消えていた。むしろ、あの光はなんだったのだろう。
『セトちゃん!! 大丈夫ですか!?』
セトは立っていた。倒れているコゴウを、悲しそうな目で見つめながら。
「そうだよね……私たち、分かり合えたんだよね……」
セトは震える声でコゴウに語りかけた。目をゆっくりと閉じると、涙が頬を伝い落ちる。手を目に当て、座り込んで、声を殺して泣いた。
どうも、遅くなりました!
ここで皆さんにお知らせです!
来年の春、私が中学1年生になったら、新たな連載小説を投稿したいと思っています。内容はもう、ずっと前から考えていて、最近ストーリー的にまとまってきました。
この連載が完結するころ、もしくはその前に連載が始まると思います。
では、よろしくお願いします!