第2話 目覚め編 全ての始まり
今日は待ちに待った宿泊体験学習。セト、ひのり、るい……誰もが待ち望んでいた。
たった一人を除いては。
ルナは布団の中にいつまでももぐりこんでいた。そして、こうつぶやいた。
「うわ、行きたくねぇ。でも、ひのりとかは困るよな。 私が班長だからな・・・」
ルナはどうしても行きたくない理由があった。元にいた学校の人がくるからだ。ルナの前の学校の人は、ルナをいじめていた。理由は、「人生、楽しみたい」からだそうだ。そんな話になり、偶然とおりかかったルナをいじめることになった。
毎日、殴られたり蹴られたりの繰り返し。時々、トイレの水をかけられたり。
そんな人生が嫌になったルナは1年前に葉巻学園に引っ越してきた。葉巻学園の人たちの間ではいじめなどはなかった。もちろん、ルナに優しく接してくれた。葉巻学園は寮式なので、ルナの部屋でも一緒に寝てくれた。夕食も一緒に食べてくれた。
そこで出会ったのはひのりだった。ひのりはルナに初めて話し掛けてきた少女だった。何にも疑わず、まっすぐな紅い瞳で、ただまっすぐ見つめていた。そのあと、話がだんだん弾むようになってきて、今ではいいコンビだ。
たまにけんかもしたりしたが、そのけんかは早く収まった。るいのおかげだった。
「わたしは……みんなに迷惑をかけてばかりで、何にも役に立たないで……」
ピーン ポーン!
「ルナー、学校行こうよー!」
玄関のドアががちゃりと開いたすぐ後、ひのりの声がした。ルナは布団をかぶって玄関へ向かった。
「なんで貴様がここにいる!」
「なんでって、迎えにきたんだよ! 行くよ」
「ああ、先にいっててくれ!」
ルナの格好を見たひのりは、小さく笑った。
「ふふっ。待ってるよ」
「私は……行かない」
ルナはうつむいた。
「何で?」
「前の学校の人が……」
「前の学校?」
「私をいじめてきた学校の奴らが来るんだよ……!」
「そんなのはぁ、あたしたちが何とかするよ! 行こう、ね!」
「ひのり……先に行っていろ! 私は、まだしたくをしていない」
「……うん、わかった」
ルナは宿泊の準備をしていなかったのだ。
ひのりにまで迷惑をかけられないと思ったルナは、ひのりを先にいかせた。いくら学園の別寮に泊まるところがあっても、時間的にギリギリだった。
果たして、ルナは間に合うのか!?