第21話 いざ、聖界へ
『大変ですーっ! せっせっ、聖界がぁーっ!』
マントの中から、傷だらけのリーフが飛び出してきた。洋服はボロボロで、小指の爪より上は千切れ、無くなっている。顔には無数の傷があり、そこから血が絶えることなく流れている。
「ど、どうしたんですか? その傷・・・」
『今はそれどころじゃないんです! ある地域では日照り、噴火、大火災、地割れで、もうひとつのある地域では大雨、土石流、洪水、土砂崩れ! 最終的には、島が二つに割れて・・・』
リーフは、かなり慌てているようすだった。痛々しい傷などには目をむけず、必死に聖界の状況を伝えようとしている。
「おちついて・・・いられない状況のようですね。島が二つに割れた上、異常気象・・・」
『みんなっ、聖界に来て欲しいのです! 聖界を救ってください!』
地震はようやく止まり、みんなのパニックはおさまった。しかし、まだ聖界では異常気象が続いている。早く聖界に行き、異常気象を止めなければ、また何度も地震が起こる可能性がある。
「リーちゃん、私行きます」
「私も行く」
「あたしだって行く!」
「ボクも行くのさ」
「わ、私は・・・」
みんなが真剣な顔をして聖界に行こうとしている中、るいは行くのをためらっていた。
『クローンでもおいていけば、先生にばれないじゃない? もちろん、時間はみんなが学園に戻ったころに止めるわよ、安心なさい』
「ありがとう、パンチョ。わかったわ、私も行く」
しばらく悩んでいたるいも、引き受けた。
『魔導なしではあの世界は危険です。あなた達に魔導力を与えます』
「・・・お願いします、リーちゃん」
リーフはセトの前に立ち、手のひらと手の甲をセトの胸の前で合わせ、目を瞑った。すると、リーフの手から真っ白な光が出現した。それを掴み、優しくセトの胸の中に押し込んだ。
「わぁ・・・ありがとう、リーちゃん!」
『いえいえ。じゃあ残りの人ならんでくださいね』
リーフは残りの人も順々に魔導力の塊を押し込んだ。
『アオイ・・・ボクたちはここに残ろう』
「そうほうがいいね。いってらっしゃい、みんな」
アオイとアクアはこの世界に残り、しばらくのあいだ地震の様子を見ることにした。そして、また地震が起こったらすぐ伝えられるように、リーフに通信機を渡された。
『私はルナさんとノア、そしてセトちゃんと日照りのほうへ向かいます。残りの人は、大雨のほうへ向かってください。通信機をお渡しいたします』
リーフはパンチョに通信機を渡した。その後、握手を交わした。
『みなさん、無事を祈ります』
『そっちこそ、生きて帰ってね』
二人は礼をして、握手の手を離した。リーフとパンチョはそれぞれマントを取り出し、広げて床に置いた。声をそろえて1、2、3と数え、マントをめくると、白いつむじのようなものが出来ていた。
「ひのりちゃん、るいちゃん、また会いましょうね?」
「もちろんだよ!」
「絶対よ! 約束するわ」
「生きて帰る、それが守らなければならない約束だ」
生きて帰ると言う約束をし、それぞれ別のつむじに入った。互いの無事を祈りながら―――
セトたちはつむじの中を彷徨っていた。つむじの中は意外に広かったが、凍えるように寒かった。周りを見回しても何もなく、ただ白いだけだった。
「さっむいですね〜、ルナちゃん」
「寒いな・・・。ノア、セトにぴったりのジャンパーでも出してやれ」
『了解』
ルナは、セトが鼻水をたらし、震えているのを見て心配になったようだ。ノアは手のひらで光の塊を作り、そこからジャンパーを作り出した。
『言っておくが、寒いのはこの通路だけだからな。ここを通り抜けたらこれは消滅する』
自分で作り出したジャンパーを指差した。
「ありがとう、ございます。・・・あったかい!」
『ほら、お前の分もあるんだぜ? ルナ』
「わ、私はいい。もうつくからな」
ルナが指差した先に、一筋の光が見えた。
結構 はやく更新できた・・・かな?
こんにちは、読者様。
いつも読んでいただき、まことにありがとうございます。
早いもので、もう21話でございます。
では、また次回。