第12話 風呂で、そしてロビーで。
「アクア、いるなら返事をして欲しかったのさ・・・」
『ん、ごめんね・・・』
アクアはアオイの髪を撫でた。アオイは目を赤くしてアクアを見つめた。
「どうして・・・返事をしてくれなかったのさ?」
『・・・なんでもない』
しばらく間を空け、アクアは答えた。
アクアがはやく答えなかったのは、理由があった。
実はアクアは、のりおの後を憑いていった。
『タノシイカ・・・? クラスヲ、シキルコトガ』
アクアは、のりおのすぐ後ろで呟いた。当然、のりおには姿は見えない。
「誰だ、オレの背後に立つな!」
『ボクノコエハ、イマハキミダケニシカ、キコエナイ・・・ムダダヨ』
怯えるのりおの頭を、そっとアクアは撫でた。いつもアクアはそうだった。怯える人を見たり、悲しむ人を見たりすると、頭を撫でて安心させていた。
『ま、怯えないで。今回はキミと話がしてみたかっただけ・・・またね。
あ、そうそう。
あんまり調子に乗ってると、ボクに代わってアオイがキミを処分するよ・・・いいね』
アクアは赤い眼で見つめながらそれだけ言って、白い霧に消えていった。のりおはその姿をにらみ付けていた。
とのことだった。
「人それぞれ、色々な理由がありますし〜・・・返事をしない理由も色々あるのです〜」
「ん・・・そだね。今度から返事をするのさよ? アクアァー」
『はいはい』
「ねぇ、のりおさん。誰とお話を?」
ここは男子湯。大河がいきなりのりおに寄り、話し掛けた。一瞬からだを震わせ、怯えたのりおだったが、すぐにいつもの態度をとった。
「てめぇには・・・関係ねぇんだよ」
「関係あるよ? 困ったことがあったら、なんでも相談してね。じゃあ、僕は出るね」
一方的に言った大河は、最後に、にこっと笑って風呂場を後にした。その姿を見てのりおは、先ほどのアクアを思い出していた。
「あいつは・・・いったい誰なんだろうか?」
★ ★ ★
夜8時。葉巻学園の生徒たちは、全員風呂から上がった。バラバラになりながらも中央のロビーに向かった。セトたちは、世間話をしていた。
「もしもですが・・・富士山が噴火活動を開始し始めた、としたらどうなると思います?」
セトが、長い髪をタオルで拭きながら、みんなに聞いた。
「ん〜・・・もう三百年以上も噴火してないらしいし、大噴火になりそう」
「静岡のほうは大変なことになりそうだな」
「家が溶けたりもするのさ?」
「ここ、千葉も火山灰が降りそうだわ」
「逃げることは出来ないんですの?」
「逃げることは可能かもしれない。人間は、逃げ惑うことぐらいしか出来ない」
みんなそれぞれが、自分の思う『本音』を口にした。ひのりが、手をポンッと叩いた。
「あたしのいとこが静岡に住んでるんだけど、本当に富士山が噴火したら死んじゃうね。あははは♪」
ひのりが笑って言った。実際は、笑って済む話ではない。
「皆さん、ここからは真剣なお話です。聞いてください。
もしもこの周辺に火山灰が積もるとします。
その1シーンを頭に浮かべて見てください。
キラキラと火山灰が舞い降ります。綺麗だ、と思うのは最初のうち。
火山灰の積もる量はどんどん増え、積もり始めます。
そのうちに、火山灰の混じっているにごった雨が降り注ぎます。その雨は人体に影響を及ぼし、電力も停止します。
それが2週間以上も続く。
ね、大変なことになるでしょう・・・?」
セトは簡単な説明をした。その説明に、みんなは体を震わせた。
「なんか、分かりにくくてすみません〜」
セトたちはロビーに着き、椅子に座った。
「本当に想像しちゃうな・・・怖い」
「つまらない話ですみません〜」
セトが頭をかきながら言うと、アオイはセトの顔を見つめ、首を大きく振って否定した。
「つまらなくなんかないのさ! とっても為になるのさ!」
「・・・ありがとうなのです! アオイちゃん!」
セトはアオイの手を握り、目をキラキラさせた。アオイもセトの手を握り返した。アオイとセト、二人の友情が深まった瞬間だった(?)
「そろそろ部屋に戻るぞー!」
ロビーに先生の声が響き、葉巻学園の生徒たちは立ち上がった。そして、先生の後をついて行った。
こんにちは、読者様方。作者です。
更新遅くなりました。
最近は楽しんで小説かいてます^^
次はなるべく早く更新を・・・したいです!
でわぁっ、また!