第10話 全ての真実
セトはみんなを走って追いかけていったが、結局みんなに追いつくことはなかった。それどころか、途中で追いかけるのをあきらめ、階段のずっと下を見つめていた。
風が冷たかった。
「ふぅ・・・
結局追いつきゃしないです」
セトはつまらなそうに呟いた。
しばらくの静寂。
この場所に誰一人訪れることなど、なかった。
「リー・・・ちゃん、いますか」
セトはリーフを呼び寄せた。
『セトちゃん・・・? どうしたのです?』
「教えてください。あの二人のことを。そして、私に起こっている変化を・・・!」
セトは、片手で壁をおもいきり殴りつけた。
『・・・分かりました。言います、いいのですね?』
「覚悟は出来ています、リーフ。全て、教えてください」
リーフは、セトの言葉に困りながらも小さくうなづいた。そして、重々しく口を開いた。
『セト、あなたはもう感知していたのかもしれませんが・・・。
あなたは人間ではありません。ついでに言うと、あなたの1番近くにいるお友達4人全員が、人間ではありませんですよ』
「!」
『この世界はもちろん、人間の住み着くための星、『地球』です。
しかし、あなたは人間ではない。
―――お分かりですか? あの楓とカナも『ニンゲン』という生き物ではない、『バケモノ』といういきものです。
あなたは―――『女神』という生き物です。
別世界から派遣された、人間とは全く違う生物。あなたは、世界を救う存在・・・です。
・・・私が言えることはこのぐらいですよ〜?』
「そ、そうですか・・・。おしえてくれてありがとうです〜、リーちゃん」
セトは苦笑いをしながらも、体は小刻みに震えていた。自分の真実、仲間の真実、楓たちの真実を知った今、自分には何が出来るだろうか? セトはそう考えていた。
『楓とカナという者がいましたね―――。その人は『心の闇』に蝕まれているでしょうね〜・・・』
リーフは不気味な顔をして言った。
しばしの沈黙が続き、セトがもう、耐えられない! という風に口を開いた。
「私に・・・何をしろと言うんです―――!」
『言ったでしょう・・・? あなたは『女神』、世界を救う生物。あの人たちの心の闇をうち砕くのです!
その行動がやがて、この狂った世界を救う方法となるのなら―――』
セトには、リーフの発している言葉の意味が理解できなかった。ただ1つ分かることは、『楓たちを救う』ということのみだった。
「あ・・・ごめんね。長く説明させてしまいまして・・・。行きましょう、みんなのもとへ」
『はい、セトちゃん!』
セトとリーフは、みんなの元へと歩いて向かった。
「せんせーっ、セトちゃんがいませーん」
ひのりが先生に向かって叫んだ。それと同時に、急にみんなが心配し出した。
「セトちゃんがいませんですの?」
「場所、知ってるのかな?」
「そのうち戻ってくるだろう。如月の班だけ先生のところにこい。他の人は部屋に入れ」
みんなのいつもの元気な返事、やんちゃな返事が返ってくることはなかった。それほど、セトを心配していると言うことだろう。
「お前らは、如月と一緒じゃなかったのか?」
「はい、一緒ではないのですよ」
先生の問いに、即行で答えたのはひのりではなく、るい、ルナ、アオイでもなく、セト自身だった。セトは、るいの後ろにそっと立っていた。そのセトの行動に、みんなはぎょっとした。
るいは、セトがずっと立っていたのにも関わらず、今までずっと気がついていなかった。視線も感じない、気配も感じなかったらしかった。
「せ、セトっ! 心配したんだよー」
「ごめんなさい〜。食べてたら、遅くなっちゃって・・・」
ひのりの言葉に、セトは笑顔で答えた。
「皆さんにはご迷惑をおかけいたしますです〜」
「これからは迷子になるなよ〜」
「「「「「は〜い」」」」」
5人は、自分たちの部屋へと戻っていった。
セトたちの部屋は、萌と藍と言う人と同じ部屋だった。藍は、葉巻学園でとても神秘的な女として有名だった。
「みんなの分、布団引いた・・・」
「藍ちゃ〜ん! ありがとで〜す!」
セトは思わず藍に抱きついた。
「セト、照れる・・・」
藍は、微笑んだ。
「で、セトちゃん。今までどこにいたの?」
るいが笑いながらたずねた。セトも笑って言った。
「みんなが見えなくなってしまって・・・道も分からなくなってしまいました。冷静に考えたら、三階だと言うことが分かりました。いや〜、戻れてよかったのですよ〜」
遠くを見るような目で、まるで独り言のような喋り方だった。棒読みのようにセトは言った。
言い終わると同時に、部屋をノックする音が聞こえた。
「おい、風呂だぞー」
どうやら風呂の時間のようだ。セトたちは大きくうなづいた。だが、アオイだけは下を向いていた。
「斧って、持っていっても問題ないのさ?」
「お、お風呂に斧を持っていくの!?」
ひのりは驚いて、たずねた。
「だ、だって、その、アクアを置いていくなんて、かわいそうなのさ」
アオイは途切れ途切れに、照れながら言った。
『アオイ・・・ありがとう―――』
アクアも微笑んでいた。
「よぉっし、お風呂でっすよ〜!」
「うん、いこっ!」
セトたちが楽しそうに部屋の外に出ると、もう他のみんなは、先にいっていた。セトたちは、苦笑いをしながらお風呂へと向かうことになった。
大変申し訳ございませんっ!
遅くなってしまいました。
遅くなってしまった上にこんな駄文で・・・すみません。
これからも、更新がとてつもなく遅くなりますが、よろしくですっ!