膝上20cm
Twitterの診断メーカー『シチュお題でお話書くったー』で、「あなたは20分以内に12RTされたら、家庭教師と生徒の設定で片想いの相手に猛アタックするとなみの、漫画または小説を書きます。」と言うツイートをしました。
12RT足りなかったのですがw 書きたくなってしまったので……w
「せんせーーー! どう? 可愛い??」
私はそう言うと、玄関先で驚いた顔をしている先生の目の前でクルリとターンをする。今日はじめて袖を通した制服のプリーツスカートがふわりと揺れる。
膝上20cmのミニスカセーラーはその動きでパンツが見えそうになり、慌てて視線を逸らす先生の顔が少し赤くなっているのを確認して、笑みが漏れる。
「ねぇ、ねぇ? どう? 可愛い??」
赤い顔してして居心地悪そうにしている先生に身を寄せる。この一年で大分成長した胸を押し付けるようにすると、先生の顔がより一層赤くなった。
「……に、似合ってますよ……」
さりげなく私を押し退けながら、私の顔も見ずに言う先生にプクッと頬を膨らませ睨み付ける。
「もう、ちゃんと目を見て褒めてよ!」
そう非難すると、先生は困った顔をしながら私を見つめた。
「似合っていますよ」
そう言ってニコッと笑った先生はいつもの先生に戻っていてちょっとムカつく。
動揺させられたのはたった一瞬だけ。すぐに余裕そうな大人の顔になっちゃうからつまんない。
「それで、どうしたんですか? 急に訪ねて来たりして」
まだ玄関先で上げてもくれずそんな事を言ってくる。
「もう! 制服見せに来たんじゃん! 見せるって約束したでしょ?!」
「それは……確かにお話しましたけど……。もう家庭教師の仕事は終了したと思いましたが?」
そんな風に突き放す様な事を言う先生にまた頬を膨らまして睨んだ。
「だからわざわざ先生の家まで見せに来たんでしょっ! 約束したから! もう、生徒じゃないから……お部屋入れてくれないの?」
いつまでも上げてくれない先生に不安になって上目遣いで見上げる。
すると先生は溜息をついた。その溜息をついた理由を聞きたくなくて、慌てて言葉を重ねる。
「でもさ! 先生と生徒じゃないから、今までみたいな遠慮って必要ないよね?! それに家にも招待してくれるって約束したじゃん!」
「確かに……そんな事もお話した気はしますが……。まったく、感心しませんね。独身男性の家に突撃するなど、襲ってくれと言っているようなものですよ? しかもそれが教師と教え子の関係ではないのならなおさら」
「え? せ、せんせ?」
「まぁ、来てしまったなら仕方ありませんね。どうぞ、お茶ぐらい出しますよ。……どうしました?」
「い、いえ! お邪魔します!!」
なんかっ! なんか先生の口からオカシナ台詞が出たような気がしたけど、聞き間違いだよね?
「紅茶でいいですか?」
「はい! おじゃましまーす。……あれ? 先生、思ったよりズボラ?」
先生のマンションに来るのはもちろん初めて。家庭教師の授業を受ける時は当然私の家だったから。
間取りは2LDKっぽくて、通されたリビングは随分と雑然としている。進められたカウンターのイスに座ると、
「少し調べ物をしていまして」
お湯を沸かしながら先生が答えた。
確かに、ソファー前のローテーブルの上には、ノートパソコンの他に何かの資料らしき本や紙が散らばっている。
「……忙しかった? ごめんなさい……」
そう言えば連絡もしないで突然押しかけた。いなかったらどうしようとは思ったけど、忙しいかもなんて考えもしなかった。
先生に嫌われたくなくて謝るけど……自分のお子ちゃま加減に凹む。
「かまいませんよ。……少し、行き詰っていたので、いい気分転換になりました」
先生はそう言って笑いながら私に紅茶を出してくれる。
「…………可愛いカップ」
ピンク色のそれは、いかにも女性が好みそうなもので、胸がドキッと音をたてた。
「そうですか? 正直私には違いがわかりません」
先生は自分の分を用意しながら、カウンターを回って私の隣のイスに腰掛けた。 その手にはシンプルなマグカップ。中身はどう見てもコーヒーのブラック。
「……先生、紅茶飲まないの?」
「基本、私は珈琲派ですね。今はインスタントドリップで済ませましたが」
「…………」
何も言えず、手元のティーカップを凝視していると先生の溜息が聞こえた。
心の中で何を考えているのかばれた気がして、慌てて先生を見ると……その瞳は正面を向いたままコーヒーを飲んでいて、私を見ようとはしない。
「この家はついこの間迄姉と住んでいたのです。今姉は結婚して家を出ましたが、こう言ったカップや消耗品は置いていったので……それらは姉が好んでいたものです」
「……はい」
すっごく恥ずかしくなって、また手元のティーカップへ視線を戻す。
「……先生は……彼女さん、とかいるの?」
ずっと聞きたくて、でも聞けなかった事……。今ならちゃんと答えてくれる様な気がして、勇気を出して聞いてる。
「今はいません」
「今は、いないの? ……好きな人はいる?」
自分が大胆になってる事はわかってたけど、止められない。
「……いません。ずっと、好きな人もいませんね。由加里さん。紅茶を飲んだら帰りなさい」
先生はそう言ってコーヒーを飲み干すと席を立った。
また突き放すみたいに言われて、少し涙が浮かぶ。私の気持ち、絶対に分かってるはずなのに何も言ってくれない先生を恨みたくなる。
「……邪魔? 迷惑?」
「はい。はっきり言って迷惑です」
キッチンカウンターの向かいからはっきりと拒絶の言葉が出てティーカップを持つ手が震えた。
落としそうになって、ガチャン、とソーサーにぶつかる。
「あ! ご、ごめんなさい」
少し紅茶が零れ、慌てて先生の方を見ると、先生は真剣な顔で私を見てた。
「せ、せんせ?」
「迷惑ですよ。餓えた独身男の家へそんな短いスカートで警戒もせずにホイホイ来られては」
「せ、せんせ?」
「ふぅ、まったく。……これで拭いて下さい。そちらへ回ると目のやり場に困ります」
渡された布巾で零した紅茶を拭くと、そっと先生を盗み見る。
「っ!」
まだ私を見ていた先生と目が合ってかぁっと顔が赤くなるのを感じた。やだ、恥ずかしい。慌てて目をそらして両手で頬を押さえる。
熱い……。どうしよう。どうしよう? どうしたらいいんだろう?
「今日は飲み終わったら帰って下さい。また……遊びに来ても構いません。勉強でも見てあげますから」
「本当に?!」
言われた言葉の余りの嬉しさに、さっきまでの羞恥心は消え失せ私は立ち上がって身を乗り出す。
「構いませんよ。ですが……一つ約束して下さい」
「は、はい!」
「その制服は辞めてください。せめて後10cm……スカートの裾を長くして頂けないと、家には入れません」
「は、はい!!」
「今日は仕方ありませんね。本当ならこのままその姿で家まで帰るのも良くないですよ」
そう言って眉間に皺を寄せる先生を見て、また顔が赤くなる。
「あ、あの……実は長くなります」
「はい?」
いまいち言っている意味をわかってなさそうな先生に後ろを向いていてもらい、スカートの長さを変える。
お母さんがこんな短いスカートを許してくれなくて、本当は膝上10cm。でもそれじゃ可愛くないような気がしたから、ウエスト部分を折り込んで短くしてた。
でも先生に不評なんだったらすぐにでも変えるよ。
「はい。これでどうですか?」
綺麗に整えて、カウンターから出て先生の横へ移動する。
「……いいと思います。似合ってますよ」
「ふふ」心からの賞賛で嬉しくなる。
「まったく。その方が素敵なのになぜあんなに短くする必要があるんですか? 君は男と言うものをわかってませんね」
だって、本当は誘惑しようと思ってたんだもん。
制服にムラムラっとか来るかなぁとか思って、ワザと短くしてきたんだもん。それなのに、なんか先生がいつもの先生じゃなくて調子狂っちゃった。
大人の、男の人なんだな、って思ったら急に恥ずかしくなっちゃったんだもん。
「明日は入学式ですね。お友達たくさん出来るといいですね」
そう言いながら頭をクシャクシャっと撫でられ頬を膨らませる。
「もう! なんでまた急に子供扱い~!」
「私から見たら子供ですからね」
ニコニコまたいつもみたいな笑顔の先生を見て、私も笑顔が零れる。
子ども扱いされて、すっごく悔しい気もするけど、でもやっぱり私は先生が大好き!
今度こそ絶対に、先生をその気にさせちゃうから!
今度も膝上20cmにしてまた突撃しに来るからね! 覚悟しといてよ、せんせっ。
王道シュチュですかねw
片想いはいいけど、猛アタックは微妙だったかも。
本当はもっとグイグイ行く女の子を書きたかったのですが、思っていた以上に先生の方が強くなってしまったので、こんな感じになりましたw