灰色の世界
声がする。
優しくて、厳しくて、でも暖かい声。
もう永久に聞くことのできない声。
ゆう、ってにこにこして呼んでくれた
空を私が殺してしまった。
ねえ。空。
聞こえないよ。
何を言っているの?
何を私に伝えたいの?
なあんて。
きっと私の都合のいい妄想。
ほら。お母さんの声が聞こえる。
嗚呼。五月蝿いなぁ
私を引き戻さないでよ。
この真っ白な世界にいたいんだ。
もうその世界に私は必要ない。
嗚呼。本当に五月蝿いなぁ。
「ゆう??起きて。
検査があるのよ。」
私を起こすお母さんは
昨日の事なんて忘れてしまったみたいに
振る舞う。なにもなかったように。
そんな母親が酷く憎くてしょうがない。
無駄な気遣いなんて。
馬鹿らしい。
今更心配なんていらないよ。
「………検査なら一人で大丈夫だから。
お母さんは帰っていいよ。
お姉ちゃんだっているし。」
私がそういうと、
お母さんは酷く傷ついた顔をした。
思わず笑ってしまいそう。
あんたに、何がわかるんだよ。
わかって欲しくもない。
もう、悲しみも。喜びも。笑顔も。
感情なんて何処かへ行ってしまった。
わかるのは、心に深く空いた穴だけ。
彩りを見ることもできない。
白も黒も赤も青も緑も。
ぜーんぶが褪せた灰色にしか見えない。
もう大切な物は、空と一緒に
いなくなってしまった。
「ゆう。お母さんは心配して…」
「心配なんていらない。
自分でもわかるよ。大きな怪我がないことなんて。空が命と引き換えに守ってくれたから。でも。私が死にたかったよ。
出来損ないの私が死にたかったよ。」
パシッ!!!!
私の頬で乾いた音が弾けた。
ああ、打たれたのか。
でも全然痛くないよ。
もう痛みも感じれないのか。
「ゆうっ…!!!!!あなた、なんてことっ…!!!!」
なんてこと?
本当に思っているんだから仕方ないよ。
頭がいい空と馬鹿な私。
価値があるのは空の方。
お母さんにはできがいいお姉ちゃんがいる。
価値があるのはお姉ちゃん。
わたしが死にたかった。
死ねるものなら死にたかった。
「お母さん。帰って。」
「ゆうっ…お母さんは!!」
「帰ってよ!!!!!」
早く視界からいなくなって。
もう誰も私の周りには居ないから。
灰色の褪せた世界しかないから。
空のいない世界は
私には必要ないから。
はい。どうも。
野々原です(・ω・)
最近の生息地は布団の中です。
まず。登場人物紹介から。
「ゆう」
黒髪ストレート。
自分の容姿に興味がない。
基本的に人間嫌いで空だけが友達だった。
家族構成は両親と姉の四人家族。
姉は頭が良く姉に対してコンプレックスを
抱いている。空とは友達だが
「大切」という友達とは別の感情を
持っているが本人は気付いていない。
「空」
茶髪のサラサラヘアー
いつも笑顔を絶やさない優男。
だが交友関係が広いわけではない。
家族構成は両親と弟の四人家族。
ゆうのことを何よりも大切にしている。
このくらいですかね(・ω・)
いきなり空は死んでしまいしたが
ここからも色々な場面で登場するので
どうぞきままにお付き合いくださいませ。