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それなんて『格ゲー』?

二章それなんて『格ゲー』?です。

一章と同じです。

感想待ってます。

人間は卑怯だ。

そして愚かしい。

人間は食物連鎖に勝利し、脅かされることのない時代を築いた。全ての動植物を管理し、世界は自分達のものだと豪語した。

事実、それは覆すことのできない真実だ。

まるで神が、支配させることを目的に人間を生みだしたように、自然界の頂点に立った。

狡猾で残忍で自己中心的で強欲で、そしてどんな生物よりも獰猛だ。

国が死んでも。

時代が死んでも。

星が死んでも。

人間は生きる。

生物達が極限の進化を遂げ、身に魔力と呼ばれるものを宿し牙をむいても。

文明が死んで、偉大な発明品がなく不自由な暮らしになっても。

理不尽で不自然に、人間も魔力を宿した。

魔力を使い魔法と成し、再び食物連鎖の頂点にたった。

星が生まれ。

時代が生まれ。

国が生まれ。

人間は生きる。

魔法と共に。

時代を経るごとに人々は魔法を研鑽し続けて行った。

そのうちに魔法は、戦いから生活にまで幅広く扱われるようになった。

人々は、生活に魔法をとりいれることによって不自由のない生活を送れるようになったのだ。

そして今や、人々の生活には魔法がなくてはならないものとなった。

違和感を覚えることもなく、不自然に感じることもない。

魔法は生活を円満に送るための物。そう考えている人が大半。

どうして魔力が人の身に宿ったかなど考えはしない。

そんな中で、ただ純粋に魔力をより洗練された物とし、魔道を極めようとする者たちがいた。

魔導師、と誰かが呼んだ。

より魔道の真髄に近づくために。より強くなるために。

個々によって動機は違うが、例外なく魔導師は極める者たちだった。

知を持って、追求し。武を持って、なぎ払う。

それを体現する彼らは、人々にとってはまさしく憧れであったのだろう。

だからこそ、人々は詠った

一つ、魔導師たるもの、己を極めよ。

一つ、魔道を行くもの、己を究めよ。

一つ、魔法を使うもの、己を窮めよ。

それが、それこそが魔導師だと。

魔導師は職ではなく、生き様であると。

まるで英雄譚のように詠ったのだ。

誰もがそんな人になろうと切磋琢磨する。

誰もがそんな生き様を貫こうと努力する。

そんな世界。

良くも悪くも、魔法がものをいう世界だった。

しかし、そんな世界にある一人の少年がいた。

その少年は魔力を宿してはいなかった。

この世界において必ずその身に宿す力が、ただの一欠片も存在しなかった。

しかし、彼に絶望はない。

むしろ、余分な物は必要ないといわんばかりに歓喜した。

魔力がない。

―――だからどうした?

魔法が使えない。

―――だからどうした?

総じて弱くなる。勝てっこない。無駄だ。

誰かが言ったそんな言葉に、彼は反抗した。

―――勝手に決め付けるな。反吐が出る。

生まれながらに絶望を突きつけられた彼は、その絶望すら飲み込んだ。

生まれながらに失望された彼は、その失望すら飲み込んだ。

生まれながらに嘲笑をあびせられる彼は、その嘲笑すら飲み込んだ。

―――信じられないなら、指を咥えて見ているがいいさ。

彼は言う。

高らかに吼える。

―――俺が最強になるその瞬間を……ッッッ!!

少年の名はアレイン。アレイン・シュタード。

己が身一つで最強を目指す男。

これは、そんな少年の最強までの軌跡を追った物語である。


「なにそれ怖い」


と、いうわけで。

最強探求物語。

改め、超本格バトルアクション(ではない)ゆったりまったり道中記の、

―――はじまり、はじまり。


>>


「うあー……つかれたぁぁぁ……」

王が住む首都『バーダイン』。そこを中心にして四方に展開する国『テルンメル』。

その最南方に位置する森の中に作られた、かろうじて道と呼べるところをその男は歩いていた。

年は若く、17か18といったところ。身長はその歳の平均程度。黒髪黒眼という、このへんでは珍しい容姿で、顔もなかなか整っているが、泥やらなんやらがついて台無しだった。

旅行用の汚れにくい素材で作られているローブはぼろぼろで、荷物は肩に下げている荷袋一つだけ。

ふらふらと今にも倒れそうな足取りだ。

「くそぅ……水が欲しぃ……何か食いてぇ……」

切実だった。

何せ三日間何も食べていない。

前立ち寄った村から今まで、少量の食料でなんとか食いつないでいたのだが三日前、ついに底をついてしまった。

いっこうに次の村につく気配がない。

ついに空腹で道にばたりと倒れる。もう一歩も動くことは出来なかった。

だんだんと意識が薄れていく。

(此処で、こんなところで死ぬか……せめてもう一度、妹の料理を食べたかったなぁ……まぁ、妹いないけどね)

などとフラグが立ちそうなことを考えていると、ガサガサと木々を掻き分ける音が聞こえた。

一瞬、熊かとも思ったがそれにしては音が小さい。音はだんだんとこちらに近づいてきていた。身構えようとするが全く動けない。

(こ、こんなところで襲われたら流石に抵抗できねぇぞ……)

体中から冷や汗が吹き出す。

焦る自分を嘲笑うかのように、音はこちらに近づいてきていた。

そして、ついに森から出てきたものを見て、別の意味で体を硬直させた。

森から出てきたのは銀色の妖精だった。

ついに幻覚が見えるようになったかと考えたが、それもいいかと思ってしまった。なにせその妖精はとんでもなく美しかったのだから。

銀の妖精は倒れている自分を見て首をひねった後、こちらに来てぺちぺちと頬を叩いてきた。

幻覚ではないことに驚いた。しかし、よくよく見れば確かに人間だ。ただ、信じられぬほどに美しい。

それは少女だった。

もっといえば、美少女だった。

髪と眼は銀色で、表情が見えない人形のような端整な顔立ち。小柄だが、随所に確かなふくらみのある身体。歳は俺より少し下、教育機関を卒業してまもなくといったところだろう。

相変わらず頬を叩かれているが、おもわず空腹も忘れ魅入ってしまった。

―――彼女のぱんつに。

顔の前でしゃがんで頬を叩いているため、ぱんつが丸見えだったのだ。

どうでもいいが、パンツよりぱんつと表記した方がかわいいと思う。

しばし彼女(のぱんつに魅入っていると、俺の腹がぐぅ~と鳴った。

彼女は不思議そうな顔をした後、はっと気が付いたように、

「……お腹、空いてるの?」

と、可愛らしく聞いてきた。

俺は頷こうとするが、顔は少ししか動かなかった。

しかし彼女はそんな俺から察してくれたらしく、腰のポーチへ手を伸ばす。

「……干し肉、あるから」

ピクリと、体が反応する。

(干し肉……!?見ず知らずの相手にそんなものをくれるなんて!!)

さっきまで妖精だと勘違いしていたが、今はまるで天使に見えた。

彼女はしばらくごそごそとポーチの中を探し、俺の目の前に手を出した。

その手に握られていたのは―――ぱんつだった。

「……」

「……」

両者沈黙。

俺は内心とても焦っていた。

(……いや、どうしろと……?これが干し肉……?く、食えばいいのか……?)

などと変態じみた思考が出てきてしまうぐらいに焦っていた。

焦っていた、というよりも、困惑していた。

彼女は自分の取り出したものに気付いたのか、

「……間違い」

そう言って彼女はぱんつをポーチに戻して、またごそごそと探し始めた。

頬が薄く赤くなっていたから、恥ずかしかったのだろう。正直、とても可愛かった。

しかし、ああいうのはとても心臓に悪い。リアクションが取りずらいし。

そんなことを考えていると、彼女は今度こそ木の葉っぱにくるまれた干し肉を取り出した。

がばっと立ち上がり、半ば奪うようにしてそれを受け取り一心不乱に食べる。さらに水も差し出してくれた。

遠慮などは存在しなかった。するほどの余裕が無かった。

干し肉を僅か数秒でたいらげ水で流し込むと、とりあえずの活力が沸いた。

「……大丈夫?」

「あぶなかった。君がいなかったら俺は死んでたよ。ありがとう」

頭を下げる。人として、これだけは言っておかねばならないだろう。

「……そう」

彼女はそれだけしか言わなかったが、どうやら照れているようだ。

「おっとそうだ、一つ聞きたいんだけどこの辺に村はあるかい?」

これだけは聞いておかないといけない。

干し肉を貰ったといっても最低限体を動かせられる力が戻っただけ。どこかで食料を補給しないと飢えて死んでしまう。

「……ついてきて。私の村があるから」

彼女は短く言って、さっき通ってきたと思われる道を歩き出した。

慌てて後を追う。

「いやーすまないな。俺はアレイン。アレイン・シュタード」

「……セレネ・クラーフ」

「クラーフちゃんか」

「……セリネでいい」

「ん?いいのか?」

「……構わない」

これには少なからず驚いた。そう簡単に気を許すタイプではないと思っていた。まぁ、本人がいいといっているのだから呼ばせてもらうが。

「ところで村の名前はなんていうんだ?」

「……クルハ」

「クルハ?どっかで聞いたことがあるな……」

確かに聞き覚えがある。頭をひねるが、中々出てこない。

「……クーハ酒で有名」

彼女はどこか誇らしげだった。きっと、本当に村が好きなのだろう。

少ししか話をしていないが、性格がつかめた。

無口だが、優しい少女だ。口数は少ないが、顔に薄い表情の変化が良く出る。感情豊かな子なのだろう。

「そっかそっか、クーハ酒か。確かにあれは美味い」

クーハというのは果実だ。瓢箪のような形をした木の実で、色は赤と緑のぶち模様。そのまま食べても甘くて美味い。このクーハをもとに作られるのがクーハ酒だ。クーハの木は暖かい気候を好むので、たしかにこの辺は具合が良いだろう。そもそも果実は光合成によって養分を作り出し、それが甘みになる。このあたりは果実にとって最適の場所だ。

「……そうなの?」

「ん?飲んだことがないのか?歳は?」

「……15」

この国の教育機関は15で卒業だ。それを過ぎれば大人。飲酒だって許される。

「飲めるようになったばかりか。たしかにそれじゃきついかな」

クーハ酒は中々くせが強い。度数も高いし、酒を飲み始めた程度の人には少々キツイ。

ただ、慣れればとてもおいしい酒なのだ。

黄土色をしたクーハ酒の芳醇な香りと爽快なのどごし。どんな料理にも合って、酒好きにはたまらない。価格もリーズナブルな物だし、貴族から一般家庭まで広く愛されている。

しかし、とうのセリネは子ども扱いされたと勘違いしたのか少しむっとした。

「……あなたは?」

「俺は17だ」

「……変わんない」

「はっはっは。たしかにそう変わんねぇな」

「……むぅ」

何が気に入らなかったのか、彼女はまた頬を膨らませた。

その行動は歳相応で中々可愛かった。

しばらく歩いていると、前方にパッと光が射した。

どうやら森をぬけたようだ。

そこは一面がクーハの木で埋め尽くされていた。どうやら今は収穫の時期で、たっぷりと実が詰まった重そうな実が木々の間から射す陽光にきらきらと輝いている。さっと吹く風は木の葉を揺らし、クーハの甘酸っぱい香りがふわふわと流れてくる。

「こいつはすげぇ……」

目の前の光景に圧倒されていると、畑仕事中だった恰幅のいいおばさんがこちらに近づいてきた。

「おや?誰かと思ったらセリネちゃんじゃないか。横の人は?」

と、警戒するように目を細くする。

こんなところで誤解を生じて、村で物資の補給が出来なくなるのは勘弁だ。なるべく丁寧にしなければ。

「どうも。アレインといいます。先程セリネに飢えていたところを助けていただきまして―――」

いきさつをさっと説明する。

話を聞いて、おばさんは酷く驚いていた。

「セリネあんた、名前で呼ばせているのかい?」

「……うん」

「はぁ~……あのセリネがねぇ」

何故か感心したように俺のことをじろじろと見てきた。正直、居心地が悪い。

そんな俺に気が付いたのかオバサンは悪いね、と謝って胸をどんっと叩いた。

「あたしはクラン。うちにおいでよ。泥を落としたいだろ?」

「あ、いいんですか?」

「かまわないさ。村の皆にも話は付けておくよ」

「ありがとうございます」

「いいっていいって。このご時世に一人旅とはなかなか根性がある。気に入った。さぁ、ついてきな」

そういってクランさんはずんずんと歩き出した。

自然に苦笑がもれた。

「豪快な人だ……」

「……でも、いい人」

「まったくだな」

なんだか、とても温かい人だと思った。

「なにしてんだい!おいてくよ!」

「あ、すいません!今行きます!」

気付けばだいぶ先に行ってしまったクランさんが手を振っていたので、急いでかけだす。

熟したクーハを魔法で飛んで収穫している人。夕食の準備をしてる人。元気な子供が道端でちゃんばらをしている。

良い村だと思う。

人もそうだが、とても活気あふれる暖かい村だと思った。


 >>


さっき助けた彼―――アレインは今、水を浴びている。

お茶を飲んで一息つきながら彼を待っているのだが、さっきからクランおばさんがニヤニヤしながらこっちを見てくる。気味が悪い。時折思い出したようにふふっ、なんて笑うものだから、余計に気味が悪い。というより、もう気味が悪いのを通り越して怖かった。

しかし、彼は何者なのだろうか?

成り行きで助けてしまったが、よくよく考えればとても胡散臭い。

魔力も全く感じられない。飢えて消耗しているのもあるのだろうけど、あそこまで魔力を感じないのはおかしい。完全に隠蔽しているというのならたいした手腕だ。隠密を専門にしている魔導師だってあそこまで魔力を感じ取らせない者などそうそういないだろう。

全く正体がつかめない。良い人だとは思うが、分からない。

分からないといえば、自分も良く分からない。

なぜ、初対面の彼に自分の名前を呼ばさせたのだろうか?

彼に対して警戒心を全く持たなかったのはどうしてなのだろう。

ふと、彼の荷袋が視界に入った。

気になったので、失礼とは思いながらも中を見てみる。

そこにあったのは、丸めて小さくしてある衣類、意外と重い財布にマッチとランタン。

そして、篭手だった。

元は綺麗な黄金色だっただろうそれは、ところどころ錆びついている。手の甲にあたる部分はひびが入っており、手首についているリングが唯一の装飾だった。

躊躇ったものの、好奇心を押さえられず手に取った。

(……!!)

重い。

と、一瞬思った。しかし実際はそんな事もなく、むしろセリネの線の細い手でも持ててしまうほどに軽かった。

温かい。

と、一瞬感じた。見たこともない金属が使われている篭手は、しかし温かいはずもなく、手のひらに感じるのは金属特有のひんやりした冷たさだった。

不思議な感覚だった。矛盾しているのに、違和感がない。その矛盾が、さも当然のように宿っていた。

(私はこれを知っている……?)

知っている気がする。軽いが、重い。冷たいのに、温かい。そんな矛盾を知っている。

そうだ、たしかに知っている。唯一の父の形見。偉大な父の仕事道具。

これは父の―――

「はぁ……はぁ……!」

気付けば動悸が激しくなっていた。息が荒い。汗が背中を伝う。

ゆっくりと、そして丁寧に出した物をしまっていく。

クランおばさんは外に出ていた。気付かれていない。そっと息を吐いて、自分を落ち着かせる。こんな気分は久しく味わっていなかった。

そのとき、彼のいる浴室からどかっと鈍い音が聞こえた。

「いってぇ!石鹸踏んで転ぶとか、昭和かよ!」

……彼は何者なのだろう?


>>


泥を落として出てくると、とても驚かれた。

クランさんは、

「いやー、あんた随分かっこいいじゃないか」

などと言って背中をバシバシ叩いてきた。めっちゃ痛い。しかし、正直に痛いと言うわけにもいかないので、気の抜けた返事しか出来なかった。

「あっはっは。いい人を見つけたじゃないか、セリネ!」

「あの、そろそろ……やめ」

ばしばしばしばしっ。

「村のみんなの心配もなくなるってもんだよ!」

「洒落にっ、ならなく!なって……!」

ばしばしばしばしばしばしっ!

「いやー。よかったよかった!」

「いだっ、うが!もうっ、やめっ!てっ……!」

ばばばばばばばばばばばばば!!

いや!?おかしいだろその効果音は!?重なってるよ!はやすぎる!

「ん?あー悪いね」

「……ぐふっ、うぶっ……いえ……もう、いいです」

クランさんが気付いて止めてくれる頃には背中はひどいことになっていた。真っ赤である。セリネが心配してくれたが、男の意地で大丈夫と答えた。

その後、クランさんに連れられて村で一番大きな建物に向かった。どうやら村長の家らしい。村の皆で集まるところ、いわゆる集会所の機能もしているため大きくなったそうだ。

村長は初老の男性で、食料を分けてほしい事、しばらく滞在させてほしいことを伝えると、快く承諾してくれた。

村長曰く、

「困った時はお互い様じゃ。それにセリネもそなたのことを気にかけておるようだしの。ふぉっふぉっふぉ。若いというのは素晴らしいのぉ」

らしい。後半は意味不明だが、気のいい人だった。

そのあと、村総出で歓迎会が行われた。本当に暖かい村である。

名物のクーハ酒も遠慮なく貰った。

「……んっ!ごくっ!……かぁ!うめぇ!やっぱ本場は違うな!」

「だろ?アンちゃんなかなか見る目があるなっ!」

「いやぁ!見てて気持ちよくなる飲みっぷりだねぇ!ほら。じゃんじゃん飲みな!」

「しかし、一人旅とは……ガッツがあるな!!」

などと盛り上がったり、

「これがセリネちゃんのお婿さんか!かっこいいねぇ!あははははは」

とか勘違いされてたり、

「小僧ぉぉぉ!!セリネちゃんは!この村のアイドルなんだ!癒しなんだよぉぉぉ!!うおおおおぉぉぉぉんん!!」

何か筋骨隆々としたおっさんに泣き付かれたりもした。

「おい!もっと食いもんもってこい!!」

「蔵の酒も出しちまえ!!」

「馬鹿いってんじゃないよ!あれは売り物だよ!!」

「ひゃっほー!!いちばぁん、うたいまぁぁぁぁす!!」

「く、静まれ俺の右腕よ……!今はそのときじゃない……!!」

「おい、なんかやべぇ病気を発症してる奴がいるぞ」

「ほっとけ。時が経つのを待つしかない」

「誰だ此処にいかがわしい本置いたやつは!」

「なんだと!?いいぞ!もっとやれ!!」

「あっ、てめぇ!俺の肉とるんじゃねぇ!!」

「ばははははははっ!!此処はぁ戦場ぉぉぉ気ぃをぬぅくなぁぁぁぁぁ!!」

「やべぇこいつ!魔力収束砲撃つぞ!!」

「何でそんなの撃てるの!?魔力収束砲なんてランクA魔法じゃないか!」

「あいつは酒が入ると潜在能力が2,5倍に……」

「なにそれこわい」

「ふぉっふぉっふぉ。盛り上がっておるのぅ。よきかなよきかな。のう?キミ?」

「おい村長。壁に向かってなに言ってやがる」

「これは!なんと綺麗な女子じゃ!」

「村長。それは猫だ」

「おれの歌をきけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」

「おいやめろ」

「旅人君もなんかやれよ!」

「そうだそうだ!あははははははは!!」

飲んで、食べて、歌って、踊って、騒いだ。

それこそ、旅に出てから味わったことのない、いや、17という人生の中でも初めての、とても楽しいひと時だった。

次の日、集会所内で起きた俺が見たのは、大量の二日酔いしただめなおっさんたち。もちろん俺もその1人だった。


「しゃきっとしなさい。しゃきっと!」

気付けの水を持って来たクランさんの怒声は、二日酔いの頭にガンガンと響いた。俺は軽度だったが、あまりにも飲みすぎた人たちは各々の家でダウンしている。

しかし、びびった。起きたら知らないところで知らないおっさん達がいっぱい倒れてるんだもの。そりゃあびびりますよ。

ふらふらと集会所(村長宅)から出て、朝の空気を肺いっぱいに吸い込む。

「うっ!……げほっげほっ」

むせた。

「大丈夫かい?」

振り向くとクランさんがいた。

「大丈夫ですよ。ちょっとむせただけです」

「そうかい。ああ、そうだ。あんたはうちで預かることになったんだ」

「え?そうなんですか?」

「ああ。あっ、でもセリネもいるからね。変なことはしないでよ。村人総出でボコしに行くよ」

「それは怖い。……っていうか、セリネも?」

「ああ。うちで暮らしてるのさ……。あんたも分かるだろ?10年前の世界戦争でね」

心底忌々しそうにクランさんは言った。

「ああ……」

10年前の世界戦争。

文字どうり世界全てを巻き込んだ大戦争だった。

事の起こりは、西の国『トーチェ』。その『トーチェ』が、商業で興った国『サンニドレ』を侵略しようとしたのだ。

それに触発されて各国が進軍。大戦争を生んだ。

その戦争自体は1年で終結した。

15人の魔導師によって、トーチェは完膚なきまでに制圧され、国領は焦土と化し消滅した。対戦の原因が消滅すると共に各国の戦争は自然消滅。そして世界戦争は終わった。

しかし、たった一年で終結したその戦争の爪痕は随所に残っている。沢山の人が死んだのだ。兵も、一般人も、国の重鎮も、多く死んだ。

「セリネは元々母親もいなかったんだけど、あの戦争で父親もなくしたんだ。その頃からかねぇ、あんまり喋らなくなったのは……。本当に忌々しいことだよ。うちの主人も死んじまった」

「そうですか……」

たった一年。されど一年。払った犠牲はもうどうしようもなく、帰ってくることはない。

「ははっ。あんたに話してもどうしようもなかったね。さっ、うちに行こうか。言っとくけど、うちにいる間はこき使うからね。覚悟しな」

クランさんはそう言って、自分の家に歩き出して行った。

クランさんの背中は、とても力強かった。そして同時にどこか悲しかった。


「意味がわからねぇ。どうしてこうなった」

「……自業自得」

なぜ、クランさんがヒロインっぽくなっているのか?

俺にそんな趣味はない!

そこはどうでもいいので置いといて、今俺の前には大量の野菜が詰まれた荷台車がある。

野菜の収穫を手伝うことになり、収穫した野菜をクランさんの家まで運ぶ仕事を引き受けたのだが、少し目を放した隙に山ができてしまっていた。

「仕方ねぇだろ。お茶に誘われちゃったんだから」

「……断ればよかった」

「んなことできるか」

「……事情を説明して後で行くとか」

「ぐっ……」

言葉に詰まる。返す言葉がない。

散々言い訳してもこの野菜の山がなくなるわけでもないし、降参するしかなさそうだ。

「はぁ……ちゃっちゃと運ぶか」

右腕で取っ手を持ち、ぐっと力を入れる。するとからからと台車のタイヤが動き出した。そんな光景を前に、セリネは呆然としていた。

「よっと……意外に軽いな」

そんな彼女はほっといて歩き出す。

しばらく歩くと、ペースがつかめ楽になった。

呆然としていたセリネが我にかえり隣に駆けてくる。

目を向けると、セリネが驚いた顔でこちらを見ていた。

「……軽いの?」

「ああ。ヨユーヨユー。全然いける」

実際まだまだ余裕がある。

からからと台車のタイヤが音を立てる。余裕と言ったが台車のほうは随分と負荷がかかっているはずなのだが、これがどうして頑丈に作られているようだ。

セリネはまだ信じられないといった顔をしている。

「……でも、魔法使ってない」

「ああ。すげぇだろ?」

アレインは胸を張って言った。

魔法にはランクが存在する。

まず魔法とは、体の中で自分の魔力を大気中の魔素と組み合わせて練り上げ、属性やら特性やらを付与してから体外に放出すると、魔力が現象として発動するのだ。

これが魔法。

この基本を元にランク付けされている。

最低がCランク。そのままB、A、A+、Sと上がってきて、最高がS+だ。

ちなみに今の状況でよく使われる身体強化はCランク。その辺の人はらくらくできる。

「……」

セリネは開いた口がふさがらないようだった。

それもそうだろう。なにせ、成人男性10人程度の重さがありそうな台車を魔法なし、さらには片手で動かしておいて、さらにそれを軽いとまで言ったのだ。人間の、ましてや細身のアレインにできることではないだろう。

ククッと笑って、腕に力を入れた。

「そいじゃ。早く終わらせますか」

そう言って、ペースを早める。

セリネはぱたぱたと後を追ってきた。その様子はまるで犬のようだったが、言うときっと怒るので内緒にすることにした。

まだ驚いているようだったが、それを見てまた笑ってしまうとふいっとそっぽを向いてしまった。

クランさんの家に着くまで他愛もない話をずっとしていた。大体は俺が喋って、セリネが頷くだけだったが、彼女はどこか楽しそうで俺も飽きることは無かった。

家に着いたときのクランさんの驚いた顔は、おもわずセリネが吹き出すぐらいに面白くて、一緒になって笑った。

その後、二人仲良く説教されたのだが。


二日目。

今日は村人と共に森にいるプッチを狩りに行くことになった。

プッチとは、テルンメルにしか生息していない固有種で、体長30センチ程度の草食の獣のことで、体の半分ほどもある長い耳と、純白の毛が特徴。その純白の毛が高く売れるのだが、弱肉強食の生物界では下位の方に入るので、天敵に襲われやすくその個体数は多くない。故に見つけづらい。しかも警戒心が強く、足が速いので、見つけても取り逃がすことが多いのだが、ここの森ではこれといった天敵がいないため、警戒心がなく、近づいても逃げることはない。絶好の狩場なのだ。

集合場所の広場にはすでに狩りのメンバーがそろっていた。

「まったく。遅いぞ旅人君!」

と、叫んだのはメンバーの中で一番背が高い壮年の男性。

「すいません!」

「うむ。まぁ、いいだろう。……さて、私はリーダーを務めるカテンだ。よろしく」

「ワシはバーグ。よろ!」

こちらは恰幅の良い男性で、ヒャヒャヒャと笑っていた。

「相変わらず奇怪な笑いですね……僕はトンテン。よろしく」

隣のバーグに若干引きながら自己紹介してきたのは、まだ若く20前後の青年だった。

「俺はアレイン。よろしく」

最後に自分。狩りはこの4人で行われる。

「今日は7,8匹程度がいいだろう。旅人君もいるし、罠でも張ろうか」

「そうっすね。旅人君は慣れてないでしょうから。ヒャヒャヒャ」

「いつまで笑ってるつもりですかバーグさん?すいませんね旅人君」

「いや……どうでもいいけど、ずっと旅人君なのか?俺は」

「「「ああ」」」

「『ああ』じゃねぇ!」

「罠をどこに張ろうか」

「プッチの巣から西に行った所に10メートル程度の穴があったはずです」

「スルーかよ!?おーい!」

「ヒャヒャヒャ。……そのポイントじゃダメだ。回り込むように移動したほうがいい」

「いきなり真面目になった!?」

「「「うるさいぞ!旅人君」」」

「俺が悪いのか……?」

そのあと作戦が決まり森に入るまで、アレインは隅で膝を抱えていた。


森の中。周囲には見上げるような大きさの木が生えており、多種多様な草や生物が生きていた。中にはアレインがこれまでに見たこともないような動物もいる。

「すげぇ……」

もはやこの村に来て何度も言っている言葉が自然に出てくる。

そんな様子を見たカテンさんはどこか誇らしげだった。

「この木はチルツゥラ。この辺りは昔から山神ツゥラを崇め、そして仕えてきた。そのおかげか大地が肥え、山神様の子なんて言われているこの神木チルツゥラが生えてる」

「神木チルツゥラか」

この国には昔から森羅万象全てに神様が宿っていると伝えられていた。それこそ魔法にもだ。

自然の守り手たる守護神。

海の守り手たる海神シバ。

生物の守り手たる生神アニン。

山の守り手たる山神ツゥラ。

天の守り手たる天神オーザ。

「知ってますか?チルツゥラには鎮静作用があるんですよ。微弱な物ですがね。人間にはあまり効果がありませんが、動物には効くようです。これのおかげでこの森には気性の激しい肉食動物があまり棲んでいないんです」

そう言うとトンテンは近くの木をすんすんと嗅いだ。

「人間にはあまり効果が見込めませんが、嗅ぐと心がすっとします。落ち着きますよ」

「へぇ。どれ……」

トンテンの真似をして木を嗅ぐ。瑞々しいさわやかな香りが鼻を撫でる。心が安らぐような感じがした。

「おい。そろそろ予定の場所に着くぞ」

カテンさんに言われて、気を引き締める。

辺りになんともいえぬ緊張感が漂う。

「……」

「……」

「ヒャヒャヒャ。そう構えることじゃねえよ」

バーグさんは相変わらずだった。

「さ、いくぞ」

カテンさんが先頭で次にアレイン。三番目にトンテン、最後にバーグさん。

一列になって歩く。

今回は7,8匹でいいのでそんなに大掛かりではない。

2人が追い込み、あとの2人が確実にしとめる。

追い込むのがアレインとトンテン。しとめるのがカテンさんとバーグさん。

これが今回の作戦だ。

正直、作戦なんてたいそうなもんじゃないな。

「おい。旅人君聞いてるか?」

「あっ、はい」

あわてて返事を返す。

「あれがプッチの巣だ」

カテンさんが指差したところは木と木が入り組んだ場所で、幾つもの岩が転がっていた。時折、岩から白い生物が出たり入ったりしている。あれがプッチの巣なのだろう。

ふと、視界の端に何か映った。

気になって、注意して見てみると、

「……プッチ?」

そこにいたのは黒いプッチだった。

体長は普通のプッチの3倍以上。獰猛そうな赤い目に、口にずらりと並んだ鋭利な牙。四肢の先端についている凶暴な爪。そして何より目を引くのがその黒い体毛だった。

それこそ、あの長い耳がなければ同じ生物とは考えられなかっただろう。

「うわ……タイミングが悪いね」

トンテンは黒いプッチ(?)を見ると表情を変え、俺の手を引くとすこし離れた所にいた、カテンさんとバーグさんのところにいく。

「どうしたトンテン?」

「何かあったすか?ヒャヒャヒャ」

いつまで笑ってるんだろう。バーグさん……。

「それが……クロマサが巣に」

トンテンがそういった瞬間2人の表情が変わる。

「なに!?クロマサが……」

「笑えんわ、それは……」

あの黒いプッチはクロマサというのだろう。しかし3人ともものすごい狼狽ぶりだった。

状況が良く分からないのでポカーンとしているとトンテンが説明してくれた。

「あの黒いのはクロマサっていってね、プッチのボス的存在だと思えばいいよ」

「ボス……プッチにはあんなのがいるのか」

「いや、此処だけだよ。どうやら突然変異という奴らしくてね、チルツゥラの鎮静効果も効かないようなんだ」

此処のプッチが襲われにくいのはクロマサがいるからなんだよ、と苦笑混じりにいったトンテンさんの顔には冷や汗が流れていた。

「本来ならこの時間はクロマサがいないはずなんだけど……」

「いるのなら、仕方あるまい」

「カテンさん。でもどうしろと?」

「誰かが囮になるしかない」

「囮ですか……」

カテンさんの顔色が悪い。どうやらクロマサというのは相当にやっかいな奴らしい。

「そんなに強いんですかクロマサは?」

「うーん。前、不用意に近づいた村の若い奴が何人かボコボコにされたぐらい。それほど強い相手ではないはずなんだけど……」

「やっかいなのがその習性でな……奴は」

カテンさんは苦虫をかんだような顔でそこで言いよどんでしまった。

ごくりと誰かがつばを飲んだ。

「奴は……?」

意を決して聞く。

カテンさんは恐る恐るといった感じで口を開いた。

「奴は……相手の衣服を取るんだ」

「……は?」

呆気に取られる。

カテンさんの後ろでバーグさんが爆笑していた。

「いやいや。なんですかそれ?」

「分からんが何故か奴は負かした奴の衣服を全部とって持ち帰るんだ」

「そのあと、全裸で村に放置されるんです」

「……」

なんだそれは?と言いたかった。

「ヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャヒャ!!」

バーグさんは爆笑してるし、トンテンも顔が赤い。カテンさんは相変わらずの苦い顔。

「というわけでクロマサの囮は君が勤めてくれ」

そういって肩にぽんと手を乗せられる。

「えぇー……」

「頑張ってください。旅人君」

「がんばれな!旅人君!ヒャヒャヒャ」

「はぁ……」

いや、もう何かどうでもよかった。


などと思っていた自分を殴ってやりたい。

「うおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

只今全力疾走中。

「キュオオオオオオオォォォォォォォォ!!」

後ろに目を向けると、黒い物体が木々を薙ぎ倒して追ってくる。

「ひいいいぃぃぃぃぃ!」

(何で……!何でアイツは……!)

走る。

少しでも足を止めればすぐに追いつかれてしまう。

(そんな発情したような顔で追ってくるんだよおおおおぉぉぉぉ!)

「ピュイイイイイィィィ!」

黒いプッチは追いかけながらもはぁはぁとあらい息をついている。

つかまったら最後、どんなことになるか分かったもんじゃない。

走る。いやそれはもう走るではなく跳ぶ。

木々の間を跳ぶように移動する。

気を抜いてはいけない。奴は俺の後を一直線に追ってくる。

谷があろうと跳ぶ。そしたら奴も跳んでくる。

川があろうと走る。そしたら奴も泳いでくる。

「ぎゃああああぁぁぁぁ!!来ないでええええぇぇぇぇ!!」

「ピュオオオオオオオォォォォォォォォ!!」

森にはいつまでも恐怖と歓喜の声が響いていたという。


>>


ビュオッと拳が空を切る。

脇に構えた左手を突き出す。またビュオッと拳が空を切る。

次は右。その次は左。交互に拳を突き出す。そのたびに拳が空を切る。

体が温まってきたところで一度息をつく。

左の突き。音はしない。

突きのインパクトの瞬間に左足を軸に回転。右回し蹴りだ。やはり音はしない。

勢いと共に体を伏せ、突き上げるように右手で掌庭を放つ。

ドゴゥッと音がした。

しかし、その音は人が放った掌庭からでたとは到底考えられないような音。

攻撃はそこで止まらない。

後ろに引いた左手で放つ貫手。ヒュッと鋭く突かれる音。

上方、おそらくは喉を狙った攻撃。突いた左手をさらに伸ばして何かを掴む。

それは空気。それは風。それは空間。

形を持たないそれらを掴み、背負い投げる。

パァンッと弾ける音。

それはまぎれようもない空気の弾ける音。

背負い投げた勢いで自らも空を回る。

踵落としだ。音はしない。

そこから左の正拳突き。続けて右の正拳突き。音は一切しない。

蹴る。左足で低く蹴り、すばやく右足で連撃。

ヒュボボボボッと空が穿たれる。

一瞬の溜め。力を集中させる。

左で突き、浮かせる。引いた右手は上から。雷のように落とす。

クオン戦手・撃槌げきつい

拳を槌に見立てた一撃。拳ツイと違うのは、最後にインパクトを生み出すために手首が固定されていないという点。

ドゴォッと地面が砕ける音がした。

腰の辺りで止まった拳は地面と1メートル以上も離れている。だというのに地面を砕き、小さなクレーターを生み出した。

「ふぅ……」

息をつく。体を伝う汗が風に吹かれて心地よい。

ガサッと後ろで音がした。振り向くとセリネが尻餅をついていた。

そっと近づき、倒れているセリネに手を差し出す。

「立てる?」

「……」

反応がない。アレインはそれを見て苦笑する。

どう説明しようか。それを考えていた。


5分ほど経ってセリネはようやく落ち着いた。

それを見て話し始める。

「俺には魔力がないんだ」

隣でセリネが息を呑むのが分かる。

信じられないのだろう。当たり前だ。それが今の時代に生きる人の反応。

構わずに続ける。

「生まれた時から小指ほどの魔力が無かった。正真正銘、全くない」

家はそれなりの名家だった。

代々高い魔力を持ち、優秀な魔導師を生み出してきた家だった。

故に俺の存在は邪魔だった。必死にこれまで保ってきた家の品格が失われる。そう危惧された。

実際、それは当っているのだろう。

生まれた時から、敗北が決定されていた。人としての格が劣っていた。

出来損ないといわれ、恥さらしといわれ、疫病神といわれ、どうしてこんなこんなものが生まれたのかと嘆かれた。

だからこそ母が子を身籠った時、俺の存在はないものとして扱われることとなった。

我が家が生んだのは今から生まれてくるこの子1人、と。

捨てられたのである。

「それが5歳の時」

「……そんな」

「10年前の戦争で王が変わってから、国の膿が取れたからな。今はそんな事はないけど、昔は普通だった」

普通だったのである。位の高い家に生まれた子は魔力が高くなければならない。そんなしきたりがあった。魔力が少ない子が捨てられることはざらだった。

「捨てられたとき、幸運にもある人に拾われてな。こうして生きてるのはその人のおかげだよ」

本当に幸運だった。冬の寒さに凍え、餓死しそうなところを拾ってくれた。

今でも憶えている熱いスープとパンの味。ごつごつとした手で撫でてくれたあのときの温もり。

「一緒に過ごしたのは2年だけだったけどな。さっきのはその人に教えてもらったんだ。クオンっていうエンシェントアーツなんだとさ」

エンシェントアーツ。

文字通り太古の武術。まだ人に魔力がなかった頃に作られた武術。もう見ることなどほとんどないが使い手が皆無というわけでもない。

「クオンはその中でも最強。魔力を与えられなかった大罪人が神を倒すために作り上げた武術らしいぜ」

「……その人は今どうしてるの?」

そんな俺の様子を見て興味がわいたのだろう。それは自然な質問だった。

「死んだよ」

「……え?」

「10年前の戦争でな……。ついでに言うと俺を生んだ一族も全滅した」

「……」

「穏やかなもんだったよ。自分が死ぬっていうのに、後悔なんてなさそうに。かっこつけて死んでった」

「……つらくないの?」

「つらいさ。だけど俺はあの人の意志を継いだから。だからこうして旅をしてる」

「……意志」

何かを確かめるようにセリネはつぶやいた。

「意志って言うか願いだな。神をぶん殴って文句を言う。何で魔力がないんだってな。それが俺らの願い」

今は神を捜して旅をしているんだ、と冗談めかして言った。

そのとき、

「……ふふ」

とセリネが笑った。

呆気に取られる。世界が止まった。

あのセリネが笑った。一週間いてはじめて見る彼女の笑い。

まるで天使のように柔らかい笑みだった。


>>


彼は魔力がないらしい。

たしかにこれなら魔力が感じられないことに説明が付けられるが、だからといって納得できるものでもなかった。

今の時代、魔力がなければ生活が出来ないといっても過言ではないのだ。

例えば火。

たしかに、マッチは作られているが、所詮それは魔力の枯渇時の緊急用でしかない。お金も掛かるし手間だろう。

それに最近は魔力で動く物が多い。

例えば魔伝機と呼ばれる交信装置。魔力を飛ばして他の魔伝機とリンクさせることで、遠くの人とも会話が可能。前は上流貴族ぐらいしか買えなかったこれも、最近やっと一般の人々にも普及してきた。

他にも魔力で動く装置や道具が多い。

魔力がないということは、これらが全く使えないということだ。

自分には考えられない。

魔力無し、魔法が使えない生活などできるとは思えなかった。

最近は治安が良くなっているが、それでも野党が出たりするのだ。自分の身も守れないではないか。

そう思ってきた。

だが、彼は旅をしている。

魔力を持たず、魔法が使えないのにもかかわらず、だ。

興味がある。

だから彼の話を聞いた。

捨てられたこと。

拾われたこと。

そして継いだ意志のこと。

「……意志」

思い出すのは父のこと。

娘に託した意志とはなんだろう。

彼が笑った。彼の言った願いは綺麗だった。

私も笑った。彼に聞いてもらおうと思った。

「私の父さんは結構有名な魔導師だったの」

「へぇ」

「鉄拳制裁って知ってる?」

そういうと驚いたようだ。

「10年前の戦争を終結させた英雄の1人じゃないか」

英雄。

父のことをそう言われるのはなんだかこそばゆくて、しかしとても嬉しかった。

「そう。私の父さん。鬼のダルトなんて呼ばれてたけど、私にとっては優しい父だった」

ダルト・クラーフ。

強化魔法に特化した魔導師。Cランクだった強化魔法を一途に極め、Sランクの魔法にさえ劣らない魔法として完成させた。

戦場を拳一つで圧倒していく様はまさに鬼。

正義に満ち溢れ、曲がったことが嫌いで、その攻撃方法からついた渾名が鉄拳制裁。

戦争を終結に導いた英雄の1人で、公式には戦争後の行方は知れない、ということになっていた。

「戦争が終わってから、父さんは寝てることが多くなった」

そして戦争が終わって一年もしないうちに、必死の看病も虚しく死んだ。

原因は魔力酷使。

戦争で限界を超えた魔力を使い続けた結果だった。

「父さんは最後まで私を思ってくれた」

本当に最後の最後まで、自分のことを考えてくれた。

娘の幸せを願っていた。

「でも、どうしたらいいんだろう?」

幸せになる方法なんて知らない。

父さんが傍にいれば幸せだった。いつも私の作った料理を食べて喜んでいた。ほんの少しの些細なことを話すのも楽しかった。いたずらをして怒られるのも嫌では無かった。大きな手のひらで撫でてもらうのは大好きだった。父さんの仕事先でのトラブルを聞くのも好きだった。

父さんと居る時間が幸せだった。それ以外は知らない。

だから、

「ねぇ、教えてよ。どうしたら幸せになれるの?」

父さんのいない世界で私はどうしたらいいの?

と、彼に聞いた。

きっとそれは嫉妬だった。大切な人の後を継げて、そのために旅をしている彼のあてつけ。醜い嫉妬。

彼はそれを分かっているだろう。

だけど彼はそんな自分を見て笑った。

嘲笑ではない。見下しているわけでもない。

ただ一言、

「んなもん、知るか」

と笑って言った。

「俺だってしらねぇよ。あの人の後をついだって言っても、あの人がそう望んだわけじゃないしな。本当にそれが叶った時、幸せかなんてこともわかるわけない。ただ俺がそうしたい、って思っただけだ。それでも、今の俺は幸せだ。旅してきたことに後悔はない。これからも後悔だけはしない」

彼の言葉を聞いているとき、実際私は別のことを考えていた。

私が彼に警戒心を抱かなかった理由。

やっと分かった。

父さんに似ているからだ。具体的な何かと言われると困るけれど、だけど確信を持って言える。

彼の荷物を見たときに出てきた篭手の矛盾。知っている気がする矛盾。

以前一度だけ父さんの篭手を触った時に感じたことと一緒。

彼の笑いも、大きな手の温もりも一緒だ。

ただ、父さんと決定的に違うのは、彼を見ているとなんだか体の奥底から温かいものが感じられること。

一緒にいたいと思う。理由もない身勝手な思いだが、そう思った。

「自分のやりたいようにやる。最後、人生に後悔を抱かない。胸を張って自分は生きていた、って言えるなら幸せなんだろうよ」

もう一度笑って、彼は立ち上がって歩き出した。

ふと、思い出したように振り返って彼は私に言った。

自分の感情に嘘はつかない。つきたくない。

彼がそう言ったとき、私の心は決まったのだ。


>>


村の中央にある広場に俺とセリネはいた。いつもは村の子供達が元気に遊びまわっている此処には、木の柵で50メートル程の円が作られていた。

村人達は心配そうに俺らを見ている。

「本当にやるのか?」

そうセリネに聞くと、黙って頷いた。

「いいんだな?」

これで最後だ。最後の質問。

「……くどい」

「……わかったよ」

「2人とも準備はいいかい?」

クランさんの言葉に黙って頷く。

少し離れたところに歩いていき、対峙する。

セリネの手にはめられている、赤い篭手が陽光を浴びてきらりと光る。

「それじゃあ……セリネ・クラーフ対アレイン・シュタード!!」

明日村を出る。

また旅をする。どこかに留まるつもりは無かった。

(しかし……驚いたもんだよなぁ)

セリネがその前に自分と勝負しろ、と言い出したのだ。

おもわず固まってしまった。

結局断れずに戦うことになったのだが。

セリネの付けている赤い篭手は彼の鉄拳制裁のもの。それをつけているということは、継いだということなのか。

左足を引き、右手で相手を制すように構える。

俺の両手を覆っているのは罅割れて錆び付いている黄金色の篭手。

はぁっと息を吐き出し、大きく空気を吸う。

「―――始めっ!!」

先に動いたのはセリネのほう。

間合いを読むこともなく、大きく湾曲を描く形で突っ込んでくる。

踏み込んでくる直前、セリネの存在感が跳ね上がる。強化魔法を使用したようだ。

一気に加速を付けられ、殴りかかってくる。

それを下に受け流す形で防御し、背に掌庭を当てて飛ばす。

転がるように受身を取ったセリネはすぐに構える。

今度はこちらの番。

「―――ハッ!!」

その場から放つ直突き。10メートルも離れているセリネに向かっての攻撃。

クオン戦手・芥砲かいほう

セリネは横に飛ぶ。

直後、パァンッ!とセリネがいた場所が弾けた。

休ませることなく連続で放つ。

パァンッ!パァンッ!パァンッ!

と弾ける。

その全てをセリネはかわす。

いくら手加減しているとはいえ、彼女の動きは常人のそれではなく、同年代の中ならトップクラスだろう。

「凍れっ!デュセン!」

空気が変わる。

先程よりもひんやりとした何かが混じった。風は渦巻き、何かは異様な圧力でもって個体となる。

それは氷だった。ただし、3メートルほどもある巨大な氷。それが高速でこちらに向かってくる。

セリネから放たれた3メートル程もある氷弾は、地面を削りながら、アレインを押しつぶさんとする。

それに対して構える。腰を落として左手でぎゅっと握られた右手の人差し指と中指を押さえる。

氷弾は目前に迫っていた。

クオン戦手・片片かたひら

右手の小指と薬指のみで放たれる突き。

本来なら急所をピンポイントで狙う技なのだが、氷は跡形もなく吹き飛ぶ。

しかし目の前にはすでに2発目が迫っていた。

それを砕こうとした瞬間、

「クラック!」

弾ける。

氷が弾け、無数の小さな氷弾となって襲い掛かってくる。

それと同時にセリネも仕掛けてきた。

氷弾の雨とセリネの攻撃。

普通ならば避けられない。この攻撃を甘んじて受けるしかないだろう。だが、そんな程度で窮地に立たされるクオンではない。

試合が開始したときから温めておいたとっておきを吐き出す。

クオン戦手・武叫むきょう

「カッッッッッッッッッッ!!」

ゴォッ!!

と、ただの叫びで地面が割れた。

横隔膜で発生させた振動を口から出すときに空中に伝播させ、破壊力を生み出す技。

破壊力を持った叫びは氷弾を破壊し、セリネを吹き飛ばす。

「はぁ……」

息をつく。口から熱が吐き出される。

武叫は対不意打ち用。破壊力があるが、所詮ただの叫び。今は先程の攻撃で砂埃が舞って見えないが、セリネは起き上がってくるだろう。

クオンには四種の手がある。

戦手。

極み手。

狂い手。

禁じ手。

普段使う手が戦手。その戦手のもう一歩先、奥義と呼ばれる部類に入るのが極み手。狂い手は文字通りに狂った手。凶悪な技、相手を苦しませる為の技を使う。禁じ手は狂い手の先、最凶で最狂で最恐な手。

後半二つは絶対に使う気はないが、この試合をどうしたらよいかを考える。

足技は手加減、もとい足加減ができないので控えるべき。

クオンは超実戦派なのだ。稽古のような技はないこともないが限られる。

考えがまとまらないうちに土煙が晴れた。

セリネは―――いない。

首をずらして後ろからのパンチをかわし、そのまま腕の関節部分で挟んで腕を折らないように気をつけて投げる。

クオン戦手・地離足ちりあし

ヒュッと投げられたセリネは空中で一回転し着地、セリネが向き直り三度目の対峙。

「……ねぇ」

突然セリネが口を開いた。

「……ふざけないで」

その声には怒りが含まれていた。

「……本気で来て。そうじゃないと意味がない」

怒っている。村人が唖然とするほどに。

理解は、できた。

「……すまなかった」

セリネの声から感じられるのは覚悟。それも生半可な覚悟ではない。何か途轍もなく重いもの、そう例えば人生を賭けてこの戦いに望んでいる。

セリネは本気できているのだ。本気で俺を倒そうとしている。それに応えないのは失礼というものだろう。それに、応えられないと思われるのも癪だ。

ガチンッと篭手を叩き付け合う。

装甲が割れた。ぼろぼろと崩れ落ち、破壊されていく。

黄金だった。

崩れ落ちた後から顔を出した装甲は、先程までの罅割れ錆びついていたくすんだ黄金色ではなかった。

もはや神々しいまでの威圧をまとった黄金の篭手に、誰もが魅入った。

右足を下げ踵を上げ、左足は前に置き強く地面を踏む。腰を深く落とし、脇をしっかりと締めて握った両の拳を脇腹にもってくる。

それはどう見ても仕掛ける構え。攻撃に移る動の構え。

「本気で行くぞ」

その言葉で我を取り戻したセリネが構える。

その姿は昔戦場で見た彼の英雄、鉄拳制裁に良く似ていた。

「クオン継承者、アレイン・シュタード」

「2代目鉄拳制裁、セリネ・クラーフ」

名乗る。誇りを胸に、名を名乗る。

「―――!」

「―――制裁を執行する!」

やはりセリネから。

先程よりも格段に強く、重い一撃。

「はぁっっっ!!」

その一撃を、真正面から掴む。

セリネの一撃の勢いを利用して投げ飛ばす。

なんとか受身を取ろうとするが、もう遅い。

地面を削りながら超速で突っ込む。傍目には、いきなり地面が抉れアレインがセリネの前に来たようにしか見えなかっただろう。

落ちてくるセリネの体に手を当て、押すように吹き飛ばす。

「―――ぁん」

右手を顔の横に持ってきて引き締める。

そして放つ。目標は地面。

限界まで引き絞った一撃はまるで隕石の如く。

クオン極み手・薙兵天星ちへいてんせい

地面に当る瞬間にふっと力を抜き拳を緩める。

ドガガガァァァァァァァァァァッ!!!

と、力を抜いたにもかかわらず地面は隆起し、木の柵で囲まれた50メートル程の円は無残にも砕け散った。

コキッコキッと首を鳴らして立ち上がる。

右腕はぼろぼろ。本来ならばこんなことはないのだが、極み手の莫大な威力を力の抜いた手で受け止めたのだ。インパクトの瞬間に力を抜くなど本来なら大怪我必至の愚行。それゆえの怪我であった。

セリネの方を見ればどうやら気絶しているようで、起き上がってくる様子はない。

ちりっと頬に痛みを感じた。

(……おいおい。あの一瞬で反応してみせたっていうのかよ)

最初に踏み込んだ時、吹き飛ばす直前の僅かなラグ。それを利用してカウンターを行ったのだろう。あの一瞬にも満たない刹那の間に、だ。

掠っただけだったが、確かにセリネの拳は届いたのだ。

きっと自分は今、笑っている。

「……フッ」

きびすを返す。明日この村を出る予定なのだ。荷造りをしなければならない。


ガシッと掴まれた。

「おいおい。なにいい感じで終わらせようとしてるのさ。この広場はどうするんだい?」

掴んだのはクランさんだった。

「いやーそこはほっといてくださいよ。いい感じだったんですから」

離れない。何故か離せない。

ピクリとも動かない。広場を完膚なきまでにぶち壊した男が、ただの村人であるオバサンの手を振りほどけない。

ガシッと足を掴まれた。やはり離せない。

冷や汗が瀬を伝う。

「直せ……な?」

「いや、俺ほら右腕が……」

「直せ……な?」

「肩がバキッていったんですけど!?」

「直せ……な?」

「はい!誠心誠意やらせていただきます!」


>>


決闘の次の日に村を出ることはできなかったので、かっこ悪いとは思いながらも、もう2日ほど滞在した。

俺自身も名残惜しかったのだろうが、これ以上いては本当に村に住んでしまいそうなので村を発つことにした。

のだが、

「何でセリネがそんなかっこしてるんだ……?」

今俺の横にはセリネがいた。

決して多くはない荷物と旅服でもってだ。

「……連れて行って」

「なに……?」

理解が追いつかない。今なんと言った?連れて行って、だと?

「なにいってるんだ……」

頭を抱える。こころなしか腹痛もしてきた。

いや別に邪魔ではないが、酷く危険なのだ。金があるわけでもないから馬も買えない。つまり旅をするということは、必然的に野宿もしなければならない。このご時世、野党も少なからずいるだろう。襲われでもしたら目も当てられない。

セリネの後方、クランさんに助けを求める。

クランさんは一つため息をつくと、

「連れて行ってもらえないかい?」

とのたまってくれやがった。

「クランさん!?」

「もちろん止めたよ?だけどセリネが行きたいってきかないんだよ。セリネがわがまま言ったのなんて初めてだし、応援してあげたいなって」

そういってクランさんはセリネの背中を押す。

「……つれてって」

「危険なんだぞ!野党に襲われるかもしれないし!」

「……野党程度に遅れは取らない」

たしかに先日の戦いを見れば相当な実力を持っていることはわかる。それこそ落ちぶれて野党にまで落ちた人間など相手にもならないだろう。

しかしだからといって連れて行くわけには行かない。

危険なのだ。

主に俺の理性が。

「俺が襲うかもしれないぜ!?」

アレイン は こんらん している !

少なくとも思っていることを口走ってしまう程度には。

だから、

「……問題ない」

とセリネが言った時には、完全に思考がフリーズした。

「……………………………………………………………は?」

たっぷり30秒は間をおいて返事をした。したというより、絞り出した。

「……それにあの時、胸触ったでしょ」

「はぁ!?」

あの時とはつまり、二日前の決闘だろう。よくよく思い返す。セリネの体に触れる機会は………………あった。そしてたしかに、むにゅっとした感触を憶えている。

何で憶えているんだろう?

セリネは首をひねる俺の服の端を引いてきた。

振り向けばセリネがいて、

「―――ちゅ」

と触れる程度のキス。

呆然とする俺にセリネは追い討ちをかける。

真っ赤にした顔と。

若干の涙目。

そして上目ずかい。

「……責任とってね」

そんな三種の神器を使われた挙句の言葉であった。

呆然としている俺の脳内では、今感情やら理性やらの整理が急ピッチで行われていた。

襲っちゃうぜ!+問題ない+キス+責任とって=???

この方程式が出た瞬間、顔が燃えるように熱くなった。

セリネも顔を真っ赤にしてもじもじしている。

顔を真っ赤にした俺たち二人を、村人は皆ニヤニヤしてみていた。


結局。

セリネがついてくることが決まり。

村人達の祝福を受けながら。

アレインの旅に一人の少女がついてくることとなった。

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