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処刑人の本

えーと何から書けばいいものやら…


とりあえず警告から。この作品を読む際は、気をつけてください。気分が悪くなるだけで済めばいいほうです。吐き気を覚えた際には読むのを中止しますことをオススメいたします。書いたのは私ですが、読むことを強制しているわけではありませんので、これを読んで嘔吐したとか感想・メッセで書かれても責任は取れませんのであしからず。


では本編をどうぞ。

 いつの世にも残酷な物語が好きな人はいる。芹沢澪せりさわれいもその一人だった。本屋に通っては原典と呼ばれる残酷な童話を探すのが日課となっていた。


 彼女はあるときいつも言っている本屋とは違う本屋に足を運んだ。そこには洋書が数多く並んでおり、彼女が求める原典というのもいくつか散見できた。彼女は顔を輝かせながら店内を歩き始めた。


 いくつかの本を流し読み、彼女はそろそろ一冊でも買って帰ろうかなと思っていたとき、年季の入った本に囲まれるようにしておいてあった一冊の本を見つけた。その本は、周りの本に比べると比較的新しいように見えた。彼女は惹かれるようにしてその本を手にとり、数ページ斜め読みし…最終的にこの本を購入した。


 彼女は家に帰ると、早速その本を読み始めた。表題は多分英語ではないのだろう読むことはできなかったが、本の中身自体は英語で書かれていた。彼女にとってそれは驚くべきことではなく、むしろ原典を読むためだけに苦手だった英語を勉強した彼女にとっては、英語で書かれているほうが読みやすいとさえ思っていた。その本はこんな内容だった。


 舞台は中世ヨーロッパ、魔女狩りが横行する時代。とある国の小さな町に一人の美しい女性がいた。名前はパトリシアと言った。彼女は町の中で一番美しい女性ということで有名で、町中の女は彼女に憧憬を、男は決して叶う事ない妄想を抱いていた。町の人は例外なく彼女を愛し、また彼女も町の人のことを愛していた。そんな平穏な日々がいつまでも続くと思われていた。


 だが、それは思わぬ形で終わりを迎える事となった。ヨーロッパ中で戦争が始まり、その戦争が終結したとき…とんでもない噂が広がった。


「この戦争はそれぞれの国に横行している魔女が仕組んだものだ。だから魔女を探し出して根絶やしにしなければならない」


 こんな噂がまことしやかに囁かれた。そしてその噂はこの国にも広がり、国中が疑心暗鬼に駆られた。国王は魔女を探し出すための「狩人」と呼ばれる役職を新しく作り、その多くに傭兵を任命した。また、その狩人に魔女の情報をもたらしたものには謝礼金を与えると布告した。そのために国中で讒言と密告、逮捕、そして拷問と公開処刑が瞬く間に広がった。それはこの町も例外ではなかった。


 日に日に少なくなっていく女性。その多くは貧しい家庭の口減らしのために、親や兄弟から密告され逮捕される…このような悲しい事態が起こっていた。


 逮捕される女は独身者ばかりであった。それと言うのも噂で広がった魔女の情報と言うものが、魔女は独身で、年の若く、美しい女の姿で町の中に潜伏しているとものだった。


 パトリシアは自分がいつ狩人に逮捕されるか…逮捕されれば死ぬ以外に逃れる術はない拷問が待っていると聞いている…そう思うと不安と恐怖で夜も眠れないほどであった。そして…ついにパトリシアも彼女の美貌に嫉妬した女の讒言により、狩人に逮捕された。


 彼女は地下牢に-その途中で見た拷問器具と拷問の光景に何度も意識を失いながら-連行された。そして、彼女は独房の中で拷問の順番を待つ間、他の女の悲鳴や人肉の焼ける嫌な臭いに何度も何度も意識を失った。


 この本を読み始めて澪は、不思議な感覚に興奮を覚えていた。原典の中の原典に出会えたと言う悦び、この先に待っている結末への期待感…他にもたくさんあるのだが言葉では表しきれないほどのものであった。彼女がふと時計に目をやると、時計の針は午後十時を指していた。夕食を食べていないにもかかわらず不思議と空腹感は無かったので、シャワーだけ軽く浴び今度はベッドの中に潜り込んでまた読み始めた。


 どのくらい時が経ったのだろう、何度も気絶していたのと窓がない地下牢のため正確な時間を把握するのはひどく難しかった。ただ何者かに頬を叩かれ、その鋭い痛みで意識を取り戻した。そうしてパトリシアは自分が魔女狩りの狩人に逮捕されたこと、そして狩人たちによって地下牢に連れられてきたことを思い出し、改めてこの先に待っている拷問に恐怖した。そんな彼女には頓着する様子もなく、狩人たちは彼女に目隠しをし、両手を縛って独房の中から出した。


 視覚を奪われることによって敏感になった聴覚と嗅覚は、本来なら彼女の身を守るために機能するのだろうが、今は彼女の意識を刈り取る役目を果たしていた。次に彼女が意識を取り戻したときは、目隠しを取られ、木製の椅子に手足を拘束されて座っていた。


 彼女の正面には一人の男が座っていた。男は自分は審問官だと言った。彼女は最初魔女かどうか訊かれるのかと思っていたのだが、審問官の男から一言だけ告げられた。


「お前たちに弁解の余地は無い」


 こうして始まった彼女への拷問は凄惨を極めた。それはどれも筆舌に尽くしがたいほどの苦痛を伴った。そして、あるとき審問官の口からあることを告げられた。


「お前はある女の密告によって逮捕された。だがお前の美貌に免じて最後のチャンスをやろう。…処刑人になれ。そうしたらお前の命を救ってやる」


 彼女には魅力的な提案だった。この苦痛から逃れられる。そしてその女に復讐できる…気付けば彼女は千切れんばかりの勢いで首を縦に振っていた。


 彼女は次の日から魔女という烙印を押されたものたちを処刑していった。あるものは火炙りにし、あるものは目隠しをして、刃物の背を軽く触らせ、その部分に一定の速度で水を垂らす…多種多様な方法で処刑していった。そしてもっとも凄惨な方法で処刑したのは…パトリシアのことを密告した女を処刑するときだった。その女は、パトリシアの親戚。この女をパトリシアは体中の血が出尽くすまで針で刺し続けて処刑した。そして、パトリシアは彼女が病で死ぬまで処刑人を続けたのだった。


 澪は最後まで読んで、吐き気を覚えた。残酷な表現やリアルな描写以上に、沸き立つ何かがその本にはあった。本能的にこの本は持っていてはいけないと思った。そして彼女はこの本を買ってきた本屋に返品し手放した。返品に来た彼女の帰り際、本屋に背を向け去っていく彼女に向かって本屋の店主は無言で手を合わせた。


 その数日後、彼女は…会社からの帰宅途中に変質者に誘拐され、見るも無残に殺害されていた。

最初に…やりすぎましたごめんなさい。


次はもっとマイルドな作品を書きます。


これをお読みになった方は活報のほうに少し質問みたいなものを設けましたので、お答えになっていただきたいです。

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