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死者と生者の本

前回よりはまだ読みやすいと思います。


と言うより前回は投げっぱなしで物語を終えてしまい申し訳ありませんでした。

 砂漠。そこは草木も生えない灼熱の地獄。だが灼熱のときは昼間だけで、夜になると一転し極寒の土地となる。どちらにせよ先を行くものを拒み、果てに眠る財宝を守護せんがごとく旅人へ牙を向く。これはそんな原典のお話。


 そう遠くない昔、砂漠の中に財宝が眠っているという噂が誰からとも無く立った。その手の噂の広まる速度と言うのは早いもので、瞬く間に世界中に広がった。世界中から財宝を求め、数多の探検家を自称する者たちが砂漠へ挑戦して行った。だが、帰ってくるものは誰一人としていなかった。そこで、近くの国の王様は軍隊を組んで探しに行った。結果は同じで、全員帰ってくることは無く、陣頭指揮を執っていた王子でさえも例外ではなかった。


 だがある夜、一人の男が砂漠のほうから戻ってきた。王様はその男を歓迎し、砂漠の話を詳しく聞いた。すると、その男は奇妙なことを言い出した。


「砂漠で俺より先に行った探険家に襲われた」と。


 王様だけではない。周りにいた大臣なども困惑した表情で目配せしていた。王様は何度も聞いた。だが帰ってくるのは同じ答えのみ。そのやり取りが数十回続いたとき、男が別のことを行った。


「砂漠には何も無い。ただあるのは本だけだ」と。


 やはりこれだけでは意味がわからない。そこで王様は彼に屈強な兵士を選んで監視をつけ、寝所へ案内した。その夜は問題が起きることも無かった。だが異変が起こったのはもう夜が明けようかという頃だった。いきなり部屋の中から断末魔の叫びが聞こえてきた。扉の前にいた兵士はすぐさま扉を開け、中を確認した。するとそこには男の姿は無く、あるのは…何かの燃えカスのような灰だけだった。


 兵士はすぐにこのことを王様に報告した。そして王様は男が消える前に言っていたことを確かめるために砂漠へ行くものを募った。だが、誰も私がというものは出てこなかった。沈黙が屋内を支配した。そして王様が私が行こうと覚悟を決めたときに、私が行くと言ったものがいた。それはこの国の第二王子。-この国の事実上の皇太子-だった。


 無論王様は反対した。それを後押しするかのように周りのものも反対した。彼が砂漠へ行くかどうかは三日三晩議論され、最終的に一ヶ月以内に帰ってくることを条件に許可された。


 第二王子は許可が下りるや否や、すぐさま準備を整えその日の夕方には出発してしまった。


 砂漠の旅は困難を極めた。昼間は気を失いそうになるくらい暑く、夜は凍えてしまいそうなくらい寒かった。だが彼は先を急ぐことも無く、昼間は暑さを耐えながら先へ進み、夜は周りを警戒しながら暖をとり眠るということを繰り返し、ついに奥地までたどり着いた。


 奥地へ着いたときはすでに夜。彼は何があるかわからないことを恐れ、夜が明けるまで焚き火をしながら待った。だが彼がうとうととしている数瞬の間に…周りを人に囲まれていた。彼は驚愕した。さっきまでは何も無かったのにどうしてだと最初に思い、次には俺もここで死ぬのかと覚悟を決めた。だが、周りを囲んでいる人は彼を襲おうとはしなかった…というより、結界に阻まれているかのように近づいて来れなかった。


 そうしている間に夜が明け、彼は再び驚愕した。王子の周りを囲んでいた人は…断末魔の叫びをあげながら灰となっていった。そうしてすべての人が消えたとき、オアシスと一冊の本が現れた。王子はオアシスで水などを補給し、国へ帰っていった。


 国へ帰ってきた王子は国中の英雄となった。そして父である王様に持ち帰ってきた本を渡した。その本は、死者を生き返らせ、生者を死に至らしめると表紙に書かれていた。さらにこう続いていた。この本は読むことで効果を発揮すると。


 そこで、王様は死刑が確定している罪人を使って試してみることにした。一人の男を独房の中にいれ、夜を待ちその本を読ませた。そして朝になるまでに一度槍で心臓を一突きにしてみた。すると、男は生き返り傷跡も何事も無かったかのように塞がっていった。そして朝になってから独房の中を覗いてみると、やはり灰になっていた。だがまた夜になると、灰になったことは覚えていない状態で生き返っていた。


 王様は面白がった。そして、すべての死刑囚にこの方法を実施した。王様は軍隊にも本を読ませた。だが今度は独房の数が足り無くなっていった。そこで、二度と罪を犯さないことを条件に本を読んだものから解放していった。


 それから数ヶ月は何事も無く平穏なときが続いた。だがあるとき、本を読んだ元死刑囚が本の存在をうっかり町の人に言ってしまった。「永遠の命を手に入れられる本がある」と。この話は瞬く間に国中に広がり、王宮に人々が押し寄せてきた。だが、昼間だったため軍隊は灰となっており、人々は王宮へ押し入り本を求めて殺し合いを始めた。真っ先に殺されたのは王族。その後は力の強いものだけが生き残り、力の弱いものは死んでいく無法地帯となった。


 そうして、長い間内乱は続きその国は…昼間は砂漠の中の廃墟、夜は死者が闊歩するゴーストタウンとなった。

今回は上手くまとめられたと思います。


ご質問などありましたらメッセか感想板へお願いいたします。

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